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1話


「異世界転生、しねぇかなー」


咲也は自室の天井を仰ぎながら、今週既に8回目となるボヤきを呟いた。

窓の外からはミーンミンミンミンミーと夏を知らせるミンミンゼミの鳴き声が鬱陶しい程聞こえている。


本日、7月中旬、平日、昼間也。


何故17歳、青春時代真っ最中バリバリ高校生の咲也がこんな平日の昼間から学校にも行かず自室でエロゲの開かれたパソコンに向かっているのかと言えば、それは咲也が引きこもりだからである。

ニートと言ってもいいが、まだ高校に籍はあるので一応高校生という職業はあるのだ。


しかし、咲也にも引きこもりになった原因、理由というものが存在する。

第一には、入った高校が咲也の想像以上に柄が悪かったことだ。咲也としては自宅からなるべく遠く、尚且つ入学できる学力、という条件で探した結果だったのだが、自宅から遠いからとろくに学校見学も行かず、パンフレットだけを鵜呑みにし、結果的に不良の溜まり場的学校に入学してしまった。

第二に、自宅から遠いという理由である。

咲也自身が選んだのだが、これには深い訳がある。簡潔に言えば、ある人物と同じ学校に入りたくなかったのだ。だが、結局その人物は咲也と同じ学校に進学し、咲也にとってはただただ学校が遠く通いづらいだけになってしまった。そして頑張って通った先の学校が上記では行きたくない思うのも分からないことは無い。


色々理由はあるが、結局実際のところは不良のせいでも通学時間のせいでもないのだ。

ある1人の人物のせいで、咲也は学校に行かなくなったのである。


それはーーー ピンポーン


「ん?はーい、今出まーす」


咲也はインターホンのモニターも確認せず玄関へと向かう。

不用心と言うなかれ、田舎なんてこんなもんだ。

ガチャリとドアを開けた先にいた人物を見て、咲也は隠すことなく嫌な顔をした。

これが漫画であったなら、「げっ」と咲也は言っていたことだろう。


「律…、何しに来たんだよ?」

「今日、修学旅行についての重要なプリント配られたから届けに来たんだ」

「修学旅行なんか行かねーよ」

「そんな事言うなよ、案外行ってみたら楽しいかもしれないだろ?」


律はキラッキラな笑顔を陽一に向ける。

咲也はその出来〇くんみたいな笑顔だけで、今日一日の体力半分が削り取られたのを感じていた。

そう、この少年、律こそが咲也が学校に通わなくなった原因であり、同じ学校に行きたくなかったある人物なのである。


律と咲也は家がお隣同士の生まれた頃からの幼なじみで、何かにつけて一緒の事が多かった。

咲也も律のことが初めから嫌いだったわけじゃない。勿論今も本当に死ぬほど嫌いという訳でもないが。

ただ、『一緒』が多すぎるのだ。

幼稚園小学校中学校の全てのクラス。

全ての委員会、習い事、部活。

登下校、放課後、休憩時間、移動教室。

小学校を卒業するまでは夕飯、風呂、それこそ寝るまで一緒。

夜は隣に律が寝ていて、朝は律に起こされる。


咲也は小学校の時からずっと気づいていた「これはなんかおかしい」と。

そしてどうにか、中学からは自宅でのプライベートタイムを勝ち取ったのである。

なので咲也は律と同じ高校に何としてでも通いたくなかった。

だからこそ、咲也は律に受験する高校を教えなかったし、親経由で伝わることを懸念し親にもギリギリまで場所を言わず、先生に口止めまでした。


そして高校入学初日。

律が玄関で待っているということは無く、咲也は「うぉっしゃぁあ」とガッツポーズをしながら高校にたどり着いた訳だが、入学式の新入生代表挨拶で壇上に上がったのは、律だった。

式の帰り、速攻で帰ろうとした咲也を捕まえ「今日挨拶の練習があって朝一緒に行けなかったんだ、ごめん。これからは登下校は一緒に行こうな」と溌剌笑顔でそう言われ、咲也は表情という表情をなくしたのだった。


「旅行なら学校じゃなくて個人で行くからいい」

「…あ、それはいいな。今度俺とサクのふたりでーー」

バタンッガチャ


扉を乱雑に閉め鍵をかける。

扉の向こうから焦ったような律の声が聞こえた。


「ちょ、おいサク!?」

「グッバイ」


咲也はそれだけ言うと、1階のリビングでお茶を1杯のみフーっと息を吐いた。


「よし、部屋戻って、エロゲの続きでもやろ」


名案を思いついたと、ルンルン気分で咲也は階段を昇った。そしてドアを開ける。


「ぬぁぁぁぁぁぁぁあ!?!?」


悲鳴をあげた咲也の前に、パソコンをカチャカチャと弄りながら椅子に座る律がいた。


「驚かさないでくれよ。……それよりサク。ダメとは言わないけど、こういうゲームはパソコンがウイルスに感染するから気をつけた方がいいよ。ウイルス対策のソフト入れといたから」

「勝手に入れんな!!てかどっから入った!?」

「おばさん達の寝室の窓から。いっつもおばさん達の寝室の窓開けっ放しで危ないから、言っといてくれ」

「なんでいっつもって知ってんだよ!この……ストーカー!!」

「ストーカーって…俺とサクの仲だろ」

「親しき仲にも礼儀ありって言うだろが!!今すぐ出てーー」

「サクっ!!!」


ガシッと咲也の腕が掴まれる。


「は」


次の瞬間、2人はどこからともなく出現した真っ黒な穴へと落ちていった。


「うぁぁぁぁぁぁあ」と、お決まり悲鳴をあげる間もなく、穴に落ちた次の瞬間には、魔法陣らしきものが書いてある床の上に2人は座っていた。


「サク!大丈夫か!?怪我は!?」

「あ、いや、俺は、大丈夫だけど…」

「良かった!」


ガバッと律は咲也に抱きつこうとする、のを咲也はサラリとかわして立ち上がった。

すると目の前に、いや咲也と律の周りを囲むように人が立っているのが見えた。


「「「成功だーーー!」」」


歓声とどよめきが一気に上がる。

一体なんだなんだと、咲也が訝しげな顔をしていると、律が1番偉そうなお爺さんの肩を掴んだ。


「これは一体どういうことでしょうか?一から、説明、して頂けますよね?」


ギュムムムムと強い力で肩を掴んでいる律はとても素敵な笑顔を浮かべている。


(あいつ、握力軽く50超えてたよな……)


咲也は血の気が引いているお爺さんに同情しつつ、回答を待った。

結局ここでは落ち着けないだろうと言うことで、2人は豪勢な一室に案内された。

ソファに腰かけてからも咲也としては複雑極まりない気持ちだった。


(これは100%、いや500%異世界転移じゃなかろうか?願いが叶ったってことだよな?でも待て律がセットなんだが?)


「サク、大丈夫か?」

「ん?あぁうん」

「俺が必ず守るから」

「え、いや、結構です」


色々とスルースキルの強い咲也は、それでと目の前に座るご老人に向き直った。


「この状況の説明お願いできますか?」

「えぇ、勿論です。我々は異世界より勇者様をご召喚する儀を行いました。そして何度も失敗を繰り返し、本日!勇者様方をご召喚できたのです!」


息荒く、キラッキラした子供のような目でそう語るご老人。

あまり可愛くはない。むしろちょっと不快。

知らん爺さんに嬉嬉として語られるのって…ゴホン。

律はその説明に怪訝な顔をし、咲也はなるほどねと頷いた。


(勇者か、まああるあるだよな。…でも2人いるけど?)


「あのどっちが勇者ですか?」


率直な疑問を咲也は述べる。

まさかこれで2人とも勇者。2人はプリ〇ュアでは咲也は困るのだ。


「それを確かめる為にも、お2人に鑑定スキルを使用してもよろしいでしょうか?」

「鑑定スキル?」


鑑定スキルという言葉にいち早く反応したのは律だった。

割と厳しい目でご老人を睨んでいる。


「それって何をするんですか?」

「いえ!本当に簡単なことです!額に手をかざさせて頂いて、スキルを使って終わりでございます」

「まあ、律。そんな訝しむ必要もねぇだろちゃっちゃと終わらせようぜ」

「サクがそう言うなら…」


そこでようやく律はご老人を睨むことをやめた。

睨まれ終わった、ご老人はほっと胸をなで下ろした。

折角召喚した勇者?に、会って数秒で睨まれては、可哀想なことこの上ない。


「リツ様とサク様とおっしゃるのですね!私はベルトボイドと申します」


名乗ったベルトボイドはそれは嬉しそうに笑顔をうかべーーバンッ


唐突にお互いを挟むように置いてあるテーブルが叩かれる。

ベルトボイドはビクリと体を震わした。


「サクって呼んでいいのは俺だけなので。そこはちゃんと弁えてくださいね」

「俺、咲也って言います。すみませんこの馬鹿がテーブル叩いたりして。なんかこいつ昔から呼び方のこだわりが強くて、俺としてはちょっと意味わかんないんですけどね。本当申し訳ないです。」


咲也は律の頭を無理やり下げさせる。


「サ、サクヤ様と仰るのですね。承知しました。それでは早速鑑定を致しましょう」


(まあ、この世界に来る時を客観視すると、落ちていく俺を助けようとした律が巻き込まれた形だからな。10割10分俺が勇者だろ)


ベルトボイドは2人の額近くに手をかざし、何言か呟く。何事も無かったかのように思えたが、少しするとベルトボイドはすっと手を下ろした。


「そうですね。…リツ様が勇者様であられるようです」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」



もう1つの方がシリアスチックなのでギャグっぽいの描きたくなりました。

緩く投稿していきます。

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