初対面
「なるほど。神様は人の姿にもなれるんだもんな。美島さんもその神の一人なのか。」
ここまでの話を聞いているともう、自分の近くの人が神様だなんてもうあまり驚かなくなってしまった。
「そうです。とりあえず、私たちはあの人に合わなければなりません。私の知らないこともあの人なら知っているかもしれません。私が目覚めたのはここ数年の話なのでそれまでの期間のことは一切わからないのです。」
確かに。もう少し詳しいことが分からないといけない。それに他の狩人にもこの事を知らせなくては、対策を建てれない。その内、世界各地でこんなことが起こり得るかもしれない。そうなれば、手が付けられなくなる。新はそんな最悪な場合を想像していた。
「とりあえず、美島さんは東京の本部にいる。まずはそこに行こう。」
「そうですね。では、それまで私は少し眠ります。先程の戦闘で久しぶりに力を使ってしまい、疲れてしまいました。もし、緊急事態が起きれば、私の名を呼んでください。力をお貸しします。それでは。」
緑輪はそう言ってピクリとも動かなくなった。
本当に眠ったみたいだ。刀も疲れんだな。
それからの道はスムーズに進み、その次の日の昼には本部に到着した。それと同じ時間に緑輪も目を覚ましたらしく、話しかけてきた。
「あぁ、新。お疲れ様でした。私もようやく力が戻ってきました。やはり眠っていただけあって、以前より力は格段に落ちていますね。これは、ちょっと危ういかもしれませんね。」
新はそれを聞き、不と疑問が浮かんだ。
「なぁ、緑輪。あなたは昔は強かったのか。話を聞いている限りだと、昔から神々と親交があった様に見えるんだけど。」
「そうですね。まぁ、強いかどうかはさておき、神様とは親交がありました。ですが、その親交が崩れ去る事があったのです。私からすれば、神を怨むことになる理由になったものですね。」
「それって...」
新は緑輪に語りかけようとしたところで美島のいる部屋の前まで着いた。
「新。ここからの話はこの部屋に入ってからにしましょう。」
「そうだな。分かった。」
新は部屋の扉をノックした。
中から低く力強い威圧のある声で「入れ」と返事が返ってきた。
いつもの美島さんの声じゃない。新はそう思いながらも部屋に入り、
「失礼します。怪異対策部妖狩り関東支部の新道新です。」
「うん。久しぶりだね。新。1年ぶりかな。」
顔は知っている美島さんだが声が明らかに違う。それに戸惑いを覚えながらも新は会話を続ける。
「は...はい。美島さん。今日はお聞きしたいこととお伝えしたい事があり、時間を作ってもらいました。」
美島さんは全ても見透かしているかのように優しく、険しい顔をしていた。
「あぁ。知っている。全てね。新。今回はお疲れだったね。私もここまで早く妖神が現れるなんて考えれなかった。すまないね。それに緑輪殿にも会えるなんて。神の私でさえ読めない、運命の風というものがあるのかもしれないね。さて、お久しぶりですね。緑輪殿。」
美島さんは新の腰に据えてある刀を見て、緑輪だとすぐに分かったかのようだった。
「えぇ、お久しぶりですね。亜夜ノ神様。いえ。今は美島さんと呼んだ方がいいでしょうか。」
美島さんは滅多に見せない笑顔を見せた。
「出来れば、この姿では美島で通してもらいたい。私も力を極端に失ってしまって、この姿からは今のままでは、戻れないのでしてね。緑輪殿は刀の姿のままですか?人化出来るんでしょう?そうした方が私も新も話しやすいのですよ。」
え!緑輪って人の姿になれるの!?新はその事実に驚いた。確かに刀のままで話していて、ここまで来るのに結構人に見られたもんな。
「はぁ。そうですね。ここまで力が戻って来たので人化くらいなら出来ます。その方がいいですね。」
そう言うと緑輪は綺麗な緑色に光り輝き出した。すると光の中からとてつもなく奇麗な容姿の女の人が現れた。
腰まで伸びた長い黒髪に綺麗な橙色や赤色の十二単衣を身につけている緑輪を見て思わず、新は顔を夕日の如く赤くしていた。
新?緑輪は新の近くに顔を寄せ、放心状態の新に話しかけた。
目を覚ました新。至近距離の緑輪の顔を見て新は次は失神してしまった。
「あらら。新。ここまで綺麗な女性を見て、失神なんて幸せ物だね。」美島さんは笑っていた。
「さて。新はその内起きるとして、緑輪殿。新が起きる前に貴方は話しておかなければならない事があります。あの日、緑輪殿があの洞窟で亡くなった、いえ、魂を移した日。それからの高天ヶ原とこの世界の話を。」
「はい。お願いします。」
そこからの話は、緑輪が予想にもしていなかった事だった。そして、緑輪の考えは悪神の滅神から変わることになる。