遠い夢
靄がかった青白い森。
草を踏みしめる音がこの空虚な世界に消えていく。
変わらない景色の中一人の少女が迷いこんだ。
そして彼女はこの世界へと惹き込まれる。
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山の中の小さなお家に住む少女は、近所の神社に小さな時からよく通っていた。
ある時、鳥居の脇で着物を着た同世代くらいの女の子がこちらを見ていることに気付いた。
軽く会釈してみるが、反応がない。
そうして、その子は何も言わず神社の中に入っていってしまった。
少女も後をついていくと、祠の脇に子供一人分が入れるサイズの穴が空いていた。
少女は不思議に思いながらもその穴をくぐった。
ちらちらと見える着物を追いかけていると、いつのまにか少女は華やかな祠の前に行き着いた。
すると、後ろから美しい声で来てくれてありがとうと声をかけられた。
少女ははっと後ろを振り返ると、着物姿の女の子が笑顔で立っていた。
その子とは会って間もなかったが、少女らは気の合う関係からかすぐに仲良くなった。
その子と遊ぶ夢のような時間が少女は好きだった。経験したことのない神秘な出来事の数々に少女は胸が高鳴るばかりだった。
背中に翼の生えた白馬、虹色の羽を広げた美しい鳥、本でしか見たことのないような生き物を見た。
緑の豊かな大地が鮮やかに煌めく。澄んだ空気が全身を行き渡るのがとても気持ちいい。
ずっと続くこの美しい夢のような時間。自分の名前まで忘れてしまいそうだった。
「私もう帰らないと」
「え?どこへ帰るの?」
少女は言われてはっとなった。
帰るってどこに?なんで帰る必要があるの?
今の少女には家という存在すら分からなくなっていた。
そして、夢のような時間に全てを飲み込まれてしまった少女はその異変に気付くことはなかった。




