無限迷宮とエルフの町 その1
無限迷宮第39エリア。
一人で歩く若者がいた。
ケイン・マッカツィオ。最近、無限迷宮を管理する無限迷宮管理局に局長として入局した。元は魔法騎士として北面騎士団団長を勤めていた。それが故あって現在、無限迷宮管理局局長となっている。
今日何故一人で局長が無限迷宮内を歩いているのか。それはただのサボりである。部下の目を盗んで抜けてきたのである。こうしたことは入局してから度々あった。最初は注意していた部下も今では溜め息だけである。
第39エリアは周囲のエリアと合わせて巨大な森を形成している。虫系のモンスターが多く生息している。今でも新種が発見されている。
森の木々の香りは心地好い。どっか適当な場所で昼寝しようかと思っていた時、オオアントの群れを見つけた。確かオオアントは餌を見つけて襲う時以外は単独行動のはず。ということは何か獲物を見つけたのか。どんな風に捕食するのか興味が湧き、ケインは近寄った。そこには8匹のオオアントとそれらに囲まれている少女がいた。ただ、耳が尖っていた。ケインはすぐわかった。あの少女はエルフの娘だと。
確かエルフは保護対象だったはず。それに耳の形以外は人間と変わらないので見捨てるのは寝覚めが悪い。
仕方ないので助けることにした。幸いオオアントは獲物のエルフの少女に夢中だ。少女もこちらに気付いてない。
ここは光の矢の魔法で狙い撃ちした方が楽だろうとケインは考えた。
ケインは魔法を詠唱し始めた。ケインの足下には魔法陣が浮かび上がる。魔法騎士だった頃はよく使ったなぁと思った。
「光の矢!」
まず、オオアントの3匹に刺さり、その3匹は絶命した。残りのオオアントとエルフの少女が気付いた。オオアントはこちらに向かった来た。
「シャインセイバー!」
残りの5匹のオオアントを切り殺した。まだ、ぴくぴく動いているのもいたが、時期に死ぬだろう。オオアントたちの屍を避けてエルフの少女の前に行き、しゃがんだ。安心させようと思ったのである。
「大丈夫か?」
「うん。」
まだ、不安そうであった。
「まぁ、あれだ。安心しろ。町まで連れてってやるよ。」
「ありがとう。」
やっと、笑ってくれた。
ケインとエルフの少女はエルフの町まで歩いていった。エルフの町はケインたちのいる第39エリアの隣の第38エリアの森の中にある。一度行ったことがあるので、道は大丈夫である。
歩きながら二人は雑談した。最初は口数が少なかったエルフの少女も次第にしゃべるようになり、名前がエリスであることがわかった。
話してみれば明るい強い意思のようなものを持っているなという印象である。多分、譲りたくないことは絶対に譲らないだろう。
話しているうちにエルフの町に到着した。町の住人に引き渡して、ケインは帰ることにした。ここまで連れてきたしもういいだろうと考えたのである。
立ち去るケインに向かってエリスは大声で言った。
「大きくなったらお嫁さんにしてね。」
可愛いこと言うなとケインは思った。