Usurper's Clutches
──君たちはこの地を不法に占拠している。今すぐ立ち退きなさい。
唐突に告げられた立ち退き命令。
曰くこの地は元国有地であり、先日わが社が買い取った、と。
──プレシャス・エンタープライズ。
最近になって第一線級のレベルにまで株価を上げてきた、新進気鋭の建築企業。
その目覚ましい発展を支えているのは、高い建築技術と、過激とも言える土地確保だった。
次々に、巻き上げるように土地を買い上げ、あっという間に新たな建物を建てていく。
立ち退き命令はCEO自らが行う。
その苛烈さは業界では有名で、しかしその有能さ故に大株主も彼をトップから引きずり降ろそうとは思わない。
食い下がる愚か者には鉄槌を。
泣きわめく未熟者には制裁を。
立てこもる痴れ者には滅亡を。
身の程を弁えろ。
現実を思い知れ。
──その絶望に染まった顔を、もっと俺に見せてくれ!
強引にして暴虐、その在り方はただただ強欲。
通す筋は信念のみ。後腐れなど欠片も残さず、希望も根こそぎ奪っていく。
──法は私の行為を肯定している。ゆえに正義だ。
私こそが正義だ、私だけが正義だ。
欲に歪んだ簒奪者が、新たな獲物にその牙を突き立てようとしていた。
ダブルクロス The 3rd Edition
「Usurper's Clutches」
ダブルクロス。
──それは、裏切りを意味する言葉。
ユニークアクセスが70を超えました。小さな1歩だけど嬉しいです。
読んでくださった方の中から、僕のトレーラーを使ってくれた人が出たらいいなと思いつつ。
これは「シフト」の3つ目のシナリオになる予定だったトレーラーです。
PCの1人がレネゲイドビーイングで「昔信仰されていたお稲荷様が人の体を持ち、既に神社としての信仰を失った社で温泉旅館を運営している」という設定だったため、そこをいじるシナリオになる予定でした。
悪質な地上げ屋が襲ってきてミドル戦闘が発生したり、
法廷で所有権を争うPCとエネミーということでFS判定で争ったり、
勝利したらボスがブチ切れて野生の力と灼熱の炎で法廷ごと焼き付くそうとしてきたり……等々、それなりに細かいところまで設定は練ってました。
ただあまりにもイメージしたボスがクズ野郎過ぎて、当時の自分はロールプレイでもこんなキャラ演じたくないと思ってしまいました。しかもシナリオが完成に近付くほどにボスのクズさが浮き彫りになっていくというループに陥り、指数関数的にやる気を削がれて没になったシナリオです。
自由に使用して頂いて構いません。このトレーラーを使ってやってみたセッションの感想等、いただけましたら幸いです。