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魔術法陣の使い手 square art sorcerer  作者: 兎月 花
第一魔術法陣 私たちの役割
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07. 昼休みの報告




 昼休みになると瑢はもともと用事があったのかすぐに教室を出ていった。


 今日は『実践』を行った訳でもないので〝振り返り〟ももちろんない。そういう時は女子と男子は分かれて二人で食べるのがほとんどだった。もちろんクラスの女子同士で食べたり一人でどこかに行ったりすることもあるけれど。



「ソラー、食べよ」


「うん」



 フレが授業道具を片付けて弁当袋を手に席までやってくる。相変わらず猫が好きなのか弁当袋は猫の刺繍がされておりかわいい。


 どこで食べようか、と教室を軽く見まわして二人席が空いている窓際の席に目を付けたところで後ろから「あのさ」と声がかかった。

 振り返れば天斗が携帯を軽く掲げながらこちらを見下ろしていた。身長差があるから仕方ないけれど最初の頃はクールなところもあり少し恐怖を感じていたことを覚えている。



「どうしたの?」


「ごめん、ちょっといいかな。今日いつもの場所で」


「「?」」



 疑問符を浮かべフレナと想良は顔を見合わせるが二人とも天斗が何を言いたいのかさっぱり分からなかった。


 そのまま弁当を持っていつも〝振り返り〟を行っているテラスへ行けば「ヨウもいた方が良かったんだけど……どこ行ったんだろう」と天斗が呟きを漏らす。いつも座っているそれぞれの定位置に腰を下ろしながら想良は首を軽く傾げた。



「うーん、授業終わってすぐに教室出て行ってたよね、慌ただしく」


「テスト今日と勘違いしているんじゃない?」


「さすがにそれはないと思うけどな……とりあえず携帯に連絡入れとくか」



 言いつつ片手でスマホを操り天斗は瑢にLINEを入れた。それを見届けると弁当箱を膝に広げながら想良とフレナは天斗に何の用か視線で尋ねる。

 のんびりぼんやりしてそうな天斗だが、こう見えて察しはいい方ですぐに二人が言わんとしていることが何か分かった。



「ただの報告だしヨウが来る前でも良いけど……先に聞きたい?」



 頭のいい天斗のことだから何か企んでそうな気もするがこれまでの付き合いからその確率は低い。


 想良は正直どっちでも良かったし、どうせ全員知ることになるなら一緒に聞いた方がいいのかな、と思ったので少し悩んだけれど「私はヨウが来てからでもいいかな」と口を開いたがその直前にフレナが「後でヨウも聞くなら先聞いといても良いんじゃない?」と想良とは正反対の意見を提示した。


 だが天斗は想良の意見も尊重するつもりのようで「ソラは先に聞く?」と改めて意見を求めてくる。

 ちゃんと一人ひとりの意見を聞いてそれをまとめる、そこが天斗のいいところでありリーダーに推薦された理由だ。この上スポーツも勉強もそれなりにできる美形ときたらクラスの人気になるのも必然である。


 しかし想良とフレナはどちらかと言えばそのようなイケメン男子に出会ってもキャーキャー言うタイプではないため一緒にいて目をハートにすることはない。

 付き合いやすくて仲の良い男友達、といったところだ。



「私は……どっちでもいい、けど……待っていてもいいかな、と思ったり」


「そう? でもヨウ、いつ来るか分からないんだし……っていうか単純にその内容が気になる」



 何の気なしにズバリとものを言えるタイプのフレナはこのメンバーでいるときはほとんどズバズバ言ってくる。その分慣れたというか自分をさらけ出せるようになったとも言える。



「じゃあ、先に二人には伝えとくかい?」


「うん、いいよ」



 想良がこくりと頷くと天斗も軽く頷き返しフレナには言うまでもなく話す承諾をアイコンタクトでとった。

 食事の手を止めて二人は次なる言葉を待つ。何やら携帯を操作し何かを探しているらしい天斗は目的のものを見つけたのか画面を見つめて報告する。



「合宿の先輩、決まった」


「え、ほんと⁉」


「思ったより早かったね……私、もっと先になると思ってたんだけど」



 天斗の報告に想良は驚き、フレナは唖然とした。合宿の説明会は昨日だったはず、一日で決まるとは参加者があまりいなかったのだろうか。


 どちらにせよ早く決まったのは嬉しい話で、一体どんな先輩が付いてくれるのかドキドキものだ。もしこれがあまりよくない先輩だったらそれはそれで残念だが、何かしら学ぶことはできるはず。

 そう考える想良は頭の中で勝手な想像を膨らましてみる。


 それなりに魔法もできて成績もいい先輩……優しくて面白く、教えてくれるときはちょっと厳しいけどそれ以外はとっても気遣ってくれるような女の先輩。学年は大学生からだから三年生か二年生ぐらいがいいかな。



「で、名前は? 男子? 女子?」



 いやにキラキラした目でフレナが尋ねる。どんな人があたるのか興味津々、といった感じだ。

 それに対して天斗は「男の先輩」と一言。瞬間想良の中の先輩イメージ像はガラガラと音を立てて崩れ去った。


 そもそも性別が予想と違ったパターン、ね……。



「名前は……」



 天斗が携帯の画面から目を離し、こちらを見てその名を口にした。



「 〝朝川 優貴<アサカワ ユウキ>〟 先輩」

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