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魔術法陣の使い手 square art sorcerer  作者: 兎月 花
第一魔術法陣 私たちの役割
20/21

18. 二度目の対戦前

 それなりの設備を整えているこの学園ではもちろん屋内でも屋外でも魔法の練習はできるようになっており、街灯がある広場も存在している。

 そこへ移動して続きを行うのも良かったが「そんなに急ぐことでもないし、今日はここまでにしようか」という優貴の言葉でその場はお開きとなった。どのみち寮は同じだが大学生は大学生で別に用があるらしく、想良たちは挨拶もそこそこにその場を去ったのだった。


 今はその帰り道だ。



「それにしても残念だなぁ、ソラの魔法見るの楽しみにしていたのに」



 先に対戦を終わらせたフレナと天斗は肩の荷が下りたといわんばかりにこちらを見てはにやにやと笑みを浮かべている。残されたこちらとしてはどうなるかヒヤヒヤしているというのに。



「先にやらせてもらえば良かったな」


「ほんと……緊張する」



 明日やる組の瑢と想良は困ったように顔を見合わせ、それぞれ明日を思って顔を曇らせる。二人ともどちらかといえば「やってやるー!」よりは「なんとかやれたらいいな……」のタイプだ。

 明日も学校があるため顔を合わせるのはまた放課後になるだろう。それまでずっとドキドキしているのかと思うと気もなんとなく重くなる。


 そんな二人を見てフレナと天斗は「大丈夫だって」「俺たちとやったようにやれば良いんだからさ」と声を掛けては励ます。



「そういえば、先輩方のすごかったよね」



 気遣いに答えようと無理やり思考の方向を変えた想良はふと、先ほどまでの対戦を思い出して誰にともなくそう言う。思い浮かぶのは大きな波や浮かんでいる姿、そして急に現れた魔術法陣。


 もちろん魔法の威力に気圧されたのもあるが、それでも実際に対戦していたフレナと天斗までもが動揺させられるまでに衝撃だった出来事。魔術法陣は描いて発動させるもの、そう捉えて疑わなかっただけに驚きは大きい。描かずに魔術法陣が表れて発動するのは論外ともいえる。



「あれはさすがに驚いたな、できればそれも教えてもらいたかったんだけど……」



 テンが残念そうに呟くのは訳がある。

 というのも、帰り際に四人は優貴から「対戦は明日やるけど教えるのは合宿の時だけだからね」と言われていたからだ。要するに後々教えてもらえるのは確実であるものの合宿まではお預けになる。ついでに深読みすれば合宿後に何かあっても教えを乞うのはできないようだ。


 つまり今回の合宿で聞きたいことは全て聞き出さなくてはいけない。合宿そのものにも限りはある。

 今後のためにも有効に使うためには何かしらの準備が必要となるだろう。



「合宿前にまた集まって何を教えてもらいたいか考えておいたほうが良いんじゃね?」


「私もそう思う」



 瑢の考えに同意し、二人を見ればこちらも頷いている。皆考えていることは同じらしい。

 とりあえず今日は挨拶もできたし目的は達成できた。先に女子寮に到着し、男子二人と別れた女子組は部屋へと戻る。


 日はもう沈んでおり、名残惜しげに空にはオレンジ色が残っていた。四人はそれぞれ空を見上げ、今後のことに不安や希望を胸に抱いてまた背を向けた。




 授業も滞りなく終わり、四人は放課後の掃除を終えてそのまま集まり大学へと向かった。優貴さんとの連絡は天斗に一任している。集合場所を聞くと昨日対戦した場所を指定されたようだった。


 着いて早々に対戦になるのかな。何の魔法からやろう……。


 早くも対戦のことを考え始め、想良は三人の話を全く聞いていなかった。



「ソラってば!」


「へ⁉」



 急に背中を軽く叩かれ驚く。見れば不満げなフレナが頬を膨らませていた。その後ろの瑢と天斗を見れば微笑ましそうに見ているが助けてくれる気は微塵もないよう。



「ご、ごめん、何か言った?」


「言ったのに聞いてないから怒ってんでしょ! もう!」


「ごめんってー!」


「ま、別に大した話じゃないんだけどさ」



 やれやれ、と両手を振りフレナはこちらを向く。大した話ではない、と言う割には真剣な表情だ。実は大した話なのではないか。


 無言で先を促してみれば周りを軽く見渡し声を潜めるフレナ。思わず何事かと身構えると耳打ちしてきたのは……



「ねぇ、やっぱり優貴さんってモテるらしいよ」


「………………ん?」



 モテる? 優貴さんが? え、それで?


 急な恋バナに思わずポカンとしてしまう。それでもどう返答すべきか思案し、少し迷ってから出した答えを口にしてみる。



「優貴さん、モテそうだもんね」


「いや、まぁそうなんだけどさ」



 どうやら期待していた答えではなかったらしい。何せ彼氏いない歴…………うんぬんの話は置いといて、こういう恋バナ系はこの四人の中では意外と天斗が適当だ。なぜか、見た目はクールで人とあまり関わらなそうに見えて一番誰とでも話せるタイプ。要するに話し慣れているのだ。


 案の定天斗は想良の答えがある意味予想通りだったのかクスクスと笑いを隠さずに漏らしている。軽く後ろを向けば咄嗟に顔が逸らされる。



「もう、テン!」


「ハハハッ、いやごめん、ソラらしいね」


「ほんと! 当たり障りのない返事をしてくるところ、ソラらしいんだから」



 それけなしてるの? 褒めてるの?


 自分で遊ばれている感覚を感じながらも一緒になって愛想笑いを浮かべて耳を傾ける。


 多分この二人のことだから悪い捉え方はしていないのだろう。聞いている分にフレナは「やっぱり⁉ フレも好きなの⁉ 実は私も気になって……」みたいな返答をしてほしかったんだと思う。ごめん、カッコいいとは思ったけど恋愛対象にはさすがに見れてないんだよね。



「そういえばフレはミーハーだったっけ」



 ポツリとそんなことを呟けばちゃんと聞いていたのか「しょーがないじゃん~」と返された。うん、フレナらしい。


 フレナも彼氏いない歴…………は、いいとして、私より男子と話せて時には友達以上に仲が良い様子も見られるがなかなかそれ以上になることがない。

 これは本人も自覚しているらしいが、カッコいい男子は特に目移りしやすいらしく、時折こうして話を持ち出してくることがあった。


 正直天斗や瑢もそこまで容姿が悪い訳ではないのでどうなのか不思議だが、さすがに二年も一緒にいるとそういう思いも鎮まるらしかった。



「やっぱり優貴さんぐらいになると彼女とかいるだろうし、期待してもなぁ」



 フォローのつもりなのか瑢がふいに口を挟めてくる。フレナは少しだけムッとしたように唇を尖らせ、「分かってるってそんなこと」と返事する。怒らせるつもりはなかったようで、瑢は慌てて片手で拝むしぐさ。この二人のやり取りはいつものこたなので放っておいても問題はない。


 でも確かに、優貴さんなら彼女さんとかいるんだろうな。


 フレナにつられてそんな考えをしてみる。


 優貴、倖貴、夢芽の三人とは昨日初めて顔を合わせたけれど、見た感じ倖貴と夢芽は付き合っていると言ってもおかしくない程度には仲が良いように見えた。

 そう考えると必然的に優貴は夢芽と付き合うことはない。正直倖貴に彼女がいて優貴にいないのは考えにくかった。



「それよりもヨウとソラは対戦だろ」


「「う」」



 痛いところ突くなぁ、テンは。


 思わず瑢と顔を見合わせ顔をしかめる。正直どこまで見せることができるか、ちゃんと成功するのか心配で仕方ない。もんもんとした思いを抱えたまま約束の場所へ到着するがまだ誰の姿も見えない。先輩方はまだ来ていないようだった。



「まだ来てないみたいだな」


「ちょうどいいじゃない、二人とも今のうちに少し練習しておいたら?」



 フレナの案はナイスだ。少し体力面が心配だが多少肩慣らしする分には問題ないだろう。瑢と顔を見合わせて互いに杖を取り出し構える。

 自然と対戦の形に入っていた。


 杖の先に幻力イルシオンをためる。それに呼応して想良は緑に、瑢は橙に光らせる。


 とりあえず初歩の初歩、基本魔術シクラフのみの第二段階。円を描いて中に星を描く。



「ハーモウィンド!」


「アクトヒート!」


「……っだめ!」



 そこに切羽詰まった声と共に水が横入りし、二人の魔法はぶつかる前にかき消される。

 ただの水ではない、清浄の効果がある『浄化』だ。でも一体誰がなぜ?


 声の方を振り向いて四人は目を丸くした。

末筆にて失礼します。

一日遅れましたが、あけましておめでとうございます。どこまで定期的に更新できるか分かりませんが、頑張っていこうと思いますので何卒よろしくお願い申し上げます。どうか良い一年になりますように。

(意見、感想等はいつでも受け付けておりますので、何かあればお気軽にどうぞ)

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