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魔術法陣の使い手 square art sorcerer  作者: 兎月 花
第一魔術法陣 私たちの役割
14/21

12. 対戦ペア、交代

「もー、何のための練習だと思ってるのよ」



 杖を持ったままフレナは腰に手を当て少し怒った顔をしてみせている。瑢はズボンの汚れを落としながら立ち上がり「おっかしいな……」と呟いた。



「ヨウ、術文ラフセン言うとき少し迷っただろ?」


「あーそれか……」



 なるほどね、そういうことか。


 これを始める前に天斗が推測した内容、それは正しかったのだろう。



 基本魔術シクラフはスタンプのように頭の中にすぐ出てくるぐらい訓練していなければならない。今のように迷ったり浮かばなかったりすると正確に力を発揮することができず、たとえできたとしてもその威力は大きく下がってしまう。


 瑢は少し言いよどんでいた。つまり頭の中にしっかり基本魔術シクラフが出てきていなかったのだろう。故にフレナのちゃんとした魔法に対抗することができず受けてしまったわけだ。



「ほら、もう一回いくよ!」


「……分かった、次こそ!」



 こういう時の二人の関係は良い。互いに互いを高め合っていこうとするその姿勢。それはいつか大きな実になるだろう。



「〝アクトレクト〟!」



 再び魔術法陣が描かれ今度は正確に発動される。


 それをフレナは「〝ライフウォール〟!」とさっきとは別の魔法で答えた。火と水の複合技だ。



 フレナの得意効果は『精神作用』、つまりは光を主に扱う魔法を得意としているのだが今の魔術法陣はそれが入っていない。自分が得意とする効果以外の力はそれなりに練習が必要でしかも複合技となるとまた少し高度になる。


 一年時の四つある目標の中の一つに「基本魔術シクラフの二つまでの組み合わせ」があるが、それは自分の得意効果を含めても良いもので一つでもできれば良かった。


 だからフレナのように得意効果以外の基本魔術シクラフを組み合わせて使うには個人の練習が必要となる。



「あ、やば」



 今度はフレナが焦った声をあげた。



「やったな……」



 天斗が少し感心したような、それでもって安堵したように片足を抱えて顎に手をやった。


 うーん……やっぱり慣れない魔法は安定感がないんだな……。



「あたたっ」



 ピリピリと空気中に電気が走ったような気がした。体を硬直させたフレナは少し呆然とし、軽く頭を振ると瑢の方を見る。



「あー……わ、悪い、その……」



 瑢はフレナの様子に申し訳なさを感じたがどうしても笑いが込み上げてきてまともに謝れなかった。ムスッとした本人には今の自分の状態がよく分かっているのだろう。



「ピリピリして痛い……」


「あ、いや、それは本当に悪かったって」


「それは?」



 不機嫌そうに問い返すフレナはそれ以外にも悪かった点があるだろう、と言いたげだ。いや実際そうなんだけど。


 フレナの髪が少しの電気の影響とはいえ広がって膨らんでいたのだ。



「もーうっ! この髪どうしてくれんのよぉ! ケアするこっちの身にもなってよ」


「ちょ、待っ……その状態で怒んなっ……」



 そのままこらえきれなくなった瑢はついに笑い始める。


 横に広がった髪のフレナは傍から見るとひまわりか太陽の真似事みたいではっきり言うと面白い。



「対戦はやめ! 後で基本魔術シクラフ見てあげるからそこで練習ね。次、ソラとテン」



 髪を撫でつけながらフレナがこちらへやってくる。瑢もその方向性で異論がないのか後ろをついてきている。


 フレナは魔法の影響を受けやすい体質でよくこうして何かしら……特に髪には攻撃を受けると何らかのアクションがある。だからこういうことは実はよくあることで、今では起こるもののそこまで気にしていないのだ。

 初めてこういうことが起こったのは瑢が放った魔法で、熱により毛先がおかしな方向にカールしていた。



「あ、やるのね……」



 あまりにも二人が集中しているようだったから自分がやる番が来るとは思っていなかった。


 天斗はそれを受けて気遣うようにこちらの顔を覗き見る。



「嫌だったら無理にとは言わないけど」


「えっ⁉ あ、ううん、大丈夫」



 少しだけドギマギしながらも想良は杖を握りなおす。


 魔法は練習あるのみ。二年生でも四つの目標が設定されておりそれをクリアしなければ進級はできない。そのためにも貴重な対戦はなくしたくない。


 ただ、まぁ……ずっと一緒にいるけどテンと、男子と対戦となると何だか緊張する……。


 でも魔法を使うのは好きだ。いろいろな魔術法陣を描けるようになればその分多くのことができるようになる。発動時の魔方陣を描くときも正直楽しさを感じる。


 要はその楽しみが緊張を超えていればいい話だ。



「あんま無理すんなよ」


「大丈夫だって」



 立ち上がりさっきまでフレナと瑢がいた場所に立つ。


 天斗は頭も良ければ魔術法陣の扱いもうまい。気を緩めるわけにはいかなかった。


 だがそれは実は想良にも言えることだった。学力に関しては天斗に劣るところがあるけれど魔術法陣に関しては同等ぐらいの実力を想良は持っている。それは以前から興味があり自ら勉強をしていたところにあるのかもしれない。



「ソラ頑張ってー」


「天斗も負けんなよー」



 フレナと瑢が二人並んで近くのベンチに座り声援を送ってくる。その声を耳にしながら想良は杖を構えた。


 天斗も真剣な表情で同じく杖を構える。



「いくよ?」


「こっちこそ」


「じゃあ……始め!」



 フレナの開始の合図と同時に二人は二重の円を描く。

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