終焉
「はぁ……明日も朝から仕事か。」
帰宅し、しばらくテレビを見ていたりスマホをいじっていたりしたらもう寝る時間になっていた。勿論、祖母の病院になど行っていない。
「寝よう。」
既にベットでくつろいでいたが、掛け布団を身体に掛けて深く潜り眠る体勢に入った。
「……」
俺は眠りに入るまでの間、習慣としてこれまでの人生を思い起こすという行為をする。別にしたくてするわけじゃなく、嫌でもそれは行ってしまう。
俺の両親はガソリンスタンドのアルバイトで出会い、そのまま結婚した。俺が生まれ中学高校と成長していく間、母は専業主婦として、父はスタンドの店員として奮闘した。決して恵まれた環境では無かったが、両親には感謝している。
俺は応えたかった。中高と成績はそれなりに上位をキープし、目標の大学へ推薦入学する事も出来た。父のようなアルバイトからエスカレーターして社員になり、いつまでも3Kの仕事をしている様は、俺には到底マネできないと思った。そして大学に進学し真っ当な企業に入社する事は両親への恩返しとなると思っていた。
だがそう簡単にはいかなかった。
大学の学科選択の際、俺は周囲や両親の意見を尊重し法学部への道を選択した。目標は『大学卒業資格』であり、そこで何を学ぶのかはさほど重要視していなかったのだ。
その結果がこれだ。元々薬学についての興味は薄い事による勉学への意欲の低下、同級生や教授達との温度差、学費を稼ぐためのアルバイトとの両立。そういった要因が重なりあい、退学という結果を招くこととなった。そして今に至る。
どうしようもない。
残ったのは奨学金という名の借金と高校卒業の最終学歴と数年のブランク。
「世界が滅びないかな」
眠気で意識が朦朧としてくる中、心の底からそんな風に思う。ネガティブな記憶と感情は微睡みと混ざり合い、蕩け、暗闇に落ちた。