表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

底辺


 底辺だ。


「いらっしゃいませー」


 スーパーマーケットの一店員である俺は業務をこなしつつ、そう思う。


「いらっしゃいませー」


 大学中退。その後アルバイトとして勤務していたこのスーパーの契約社員となり早数年。俺は週5で働いている。所謂バイトあがりというヤツだ。底辺と定義するにはまだまだしたがいるだろうという風に言われかねないが、どこにでもいる、どこかのだれかでしかないこの状態の人間にどの程度の価値があるというのか。


「……そろそろ定時か。」


 そして今日も午前の勤務を終え、帰宅の途につく。


「あー糸宇いとうくん、糸宇くん。」


 店長が俺を呼んでいる。わかっている。在庫のダンボールを開ききっていない事は承知している。故にこの後のこの中年男性の発言を予測するのは容易い。


「ちょっとさ、タイムカード押した後手伝ってくんない?」


 下回った。しれっと労働基準法を破ろうとするのはこのご時世良くないぞ店長。そういうのは叩かれるんだから。だから俺は


「すみません。祖母の病院に向かわなきゃならないので。」


 勿論嘘だ。祖母が通院しているのは本当だがそこに向かう予定は無い。俺はこうやって店長が法を侵すのを防止しているのだ。実に親切だ。


「はぁ……キミさ、チーフなのわかってるよね?バイトの子達にあの山積みのダンボール押し付ける気?」


 バイトがどうなろうと知ったことでは無いし、それはアナタのシフト作成ミスではと言いかけたが余計な事は言わないのが吉。チーフなのも成り行きだし。


「すみません。」


 時計をチラッと見つつ素直に謝る。タイムカードの打刻を示唆しつつ謝ってる体を見せつけよう。


「はぁ……もういいよ帰れば?帰ればいいじゃん。」


 きっと良心に訴えてるつもりなのだろうな。


「わかりました。おつかれさまです。」


 ミッションクリア。エンドロールだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ