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ちょっとモンスター倒してきて


 副長官室。桜の帝国建国演説後、すぐに東副長官に掛け合った。


「今すぐに真野桜を殺しましょう!」


「こ、殺すってそんな物騒な……」


「なにを言ってるんですか! あいつは生かしておいてはいけないやつです。やばい奴なんです」


 あいつの言動見てたらわかるでしょう。


「ま、まあホラ。柴田君にも国くれるって言うし……ほらっ、これ見て。いい場所だよ。えっと、あーー」


「あ、阿呆ですか! そんな実現性のない話」


 そんなことは言ったが、ふとどんな国か気になった。桜の演説にはアメリカが誰か統治するか言及されていなかった。てっきり、アメリカの場所は桜のもんだと思っていたが。


「いい所なんだけどなぁ」


「……ちなみに、最初の文字は『あ』ですか?」


「えっ? うんまあそうだね」


 やっぱりアメリカだ……桜は俺にアメリカをくれようとしている。

 アメリカ合衆国……まあ、厳密に言えばアメリカ合衆国に酷似した土地。その、支配者か……ハーレム……

いや、いやいやいや。なにを雑念を。


「そんな、俺は国なんてーー」


「私もよく行くんだよ、熱海」


 ……ん?


「なんで今、熱海の話に?」


「え、だってホラ。君には熱海。熱海くれるって」


 く……国じゃねぇ。


「なんで俺だけ熱海なんですか!? みんな国もらってるのに!」


「そ、そんなの僕に言われても……」


 確かにそうだが、むしゃくしゃし過ぎて腹の虫が治まらない。それでよく東副長官に愚痴るのは俺のストレス解消法でもある。

 この人は素晴らしい人格者で、桜は人格破綻者だ。例え正常が異常に喰われると言う世知辛い現実が存在していたとしても、一生ついて行こうと決心している。

 そんな中、ノックなしで扉が開いた。


「東ちゃーん……あれ、柴田もいたんだ」


 桜が入ってきた。


「何の用だよ?」


「トップの会談だから。最下級の兵隊であるあんたには関係ない話」


 ……心の底から嫌な奴だな貴様は。


「ま、まあまあ。柴田君も貴重な護衛隊員なのは間違いないんだから」


 そう言って桜をとりなす。

 先ほど、異世界に飛ばされたメンバーと範囲が判明した。

 総勢294人の内、氷室さんを初めとした戦闘員は俺を含めて6名。明らかに少ない。

 吹き飛ばされた範囲は桜が予想した結果と同様で、大和軍事基地をすっぽりと覆う程度。民間人も含め志願者以外(俺を除く)を転移させてしまう事態にはならなかったようだ。


「しかし……大和軍事基地の施設が丸ごと使えるのは大いなる幸運でしたね」


 東副長官はそうつぶやく。

 大和軍事基地は、この施設単体で小国となら互角に渡り合えるほどの戦力を保有している。そして、まず第一に確保すべき武器のエネルギー(電気)に関しても、この施設の屋根全てに太陽光発電パネルを設置しているため日常生活や、小戦に困ることはないはずだ。


「まあね……核がないのは、この際しょうがないし」


 当たり前だ!


「大まかな状況把握としてはいくつか報告があがってきてます。まず、人類。言語は不明ですが、翻訳ソフトを応用すれば短期間で意思疎通は可能になるかと。問題は敵対している魔族、モンスターですな。昔から天敵同士であり、出会うや否や襲ってきます。交渉の余地はおそらくありません。中でも、絶対王と呼ばれている魔王は強大な力を持っているとか」


 魔王……いるんだ。

 なんだろう……すっごく、ドキドキする。

 こういう剣と魔法の世界はプレステ世代の俺にとってたまらなく楽しい。


「桜、あの……もしかしたら俺たちも魔法を使えるようになるのか?」


「んー、どーだろーねー。一回、解剖してみないとなんともーー」


 どええええええっ!


「嘘嘘嘘! 使えなくていい! 使えなくていいから解剖なんて絶対にするなよ」


「……人体解剖なんてするはずないでしょう。MRIとかCTスキャンとかに決まってるでしょう」


 桜……お前、全然やってても不思議じゃないぞ。


「とにかく、目下の課題は基地の防衛ね。いかんせん戦闘員が少なすぎる。攻めに出るには駒が足りんわ」


 そう言って両手を後頭部に当てスラリと細い足を伸ばす桜。

 確かに戦闘職種でも得意分野は異なる。隊長の氷室さんはオールマイティーだが、戦闘機のパイロットは渋谷さん、ミサイル関係は最加さん、潜水艦の艦長は市川さん、狙撃主は孫岷岷。そして、俺は……まあ……そんな感じだ。


「いかんせん、モンスターや魔族なんかの戦力も未知数ですしね」


 東谷副長官も腕組みをする。


「……柴田、ちょっとウロついてきて、モンスター倒してきて」


 桜は『ちょっとコンビニでアイス買ってきて』と言わんばかりの軽い口調でそう言い放った。


「ふざけんな嫌に決まってんだろう!」


「柴田君、そう言わないで。氷室さんも他の4人も大和軍事基地の防衛がメインになってくる。そうなってくると、必然的に自由に動き回れるのは君しかいないんだ。我々には、それぞれ役割があるし」

 東副長官……それって……


「わかる? 役立たず宣言よ。あんたくらいしか役立たずはいないってわけ」


 ……ほんっと嫌な女だ。


「わかりました。じゃあ、準備してきます」


 そう言って、うなだれながら武器庫に向かう。




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