大量のゴブリンVS拳銃
アリーンに手を引っ張られながら家に案内され、盛大な歓迎を受けた。その間、翻訳ソフト用にレコーダーで記憶させながらも身振り手振りを駆使し必死に情報収集した結果、断片的ではあるが色々な情報を入手できた。
どうやらこの町はカントという名のようだ。ここら辺ではよくゴブリンが出没し、最近度重なる襲撃に悩まされているらしい。久美さんが撮った携帯の画像。血塗れで呻いているゴブリンを背景にピースサイン。その写メを見せると、明らかに嫌悪の表情を浮かべていた。
ってか、あんたなにを撮ってんだ、なにを。
アリーンはお転婆な子で、知らない間に町を抜け出して遊んでいたところに襲われたと言う。
「ゴブリンか……氷室さん、大丈夫かな」
久美さんが呟いた。
「それこそ余計な心配ですよ。あちらには俺なんかよりよっぽど優秀な人たちばかりだから」
と言うより、鬼のような教官ばかりだった。
ランニング10㎞、腹筋腕立て背筋を各300回、100メートル全力ダッシュを50往復を毎日3セット。強豪陸上部並のメニューに加えて、実践では近代格闘から、古武術まであらゆる格闘技を仕込まれた。
泣けば殴られ、逃亡を試みれば磔、拷問の刑だった。むしろ、奴らを思い浮かべた心配と言えば本気でゴブリンを食料として考えていないかどうかだ。
その時、にわかに外が騒がしくなった。
急いでアリーンの家を出て悲鳴の上がった方に走ると、町の外で門番が複数のゴブリンと格闘していた。門番も奮闘していたが所詮は多勢に無勢、対するゴブリンは10匹以上いた。小柄なゴブリンが門番の身体に巻きついて動きを止められ、いかついゴブリンが石斧で襲い掛かる。
――魔法使いは? 騎士は? どこかに行ってるのだろうか。
「シバータ……シバータ……」
アリーンが俺の袖を引っ張って、大きく蒼い瞳を潤ませる。
助けを求めてる事は十分にわかっていたが、極力、銃撃は避けるように氷室さんに言われていた。当然、銃機器はこの文明の物では無く人々への警戒を産む。町の人を助けたからと言って、必ずしもそれが好転する状況では無い。それに弾も無限にある訳じゃない。いざと言う時のために、弾を取っておいた方がいいと言う頭もあった。
「柴田君、助けてあげてよ」
久美さんが迷わず指示した。
「し、しかしいざという時に久美さんに何かあった時の為に――」
「そんなのいいから。困ってる人がいたら、助けるもんよ」
そう諭されて、ハッとする。
久美さんはシンプルだ。それ、即ち正直ということなんだろう。だから、こんなにも俺の心に響く……すいません、少しあなたのこと誤解していました。
そんな会話をしている間、門番は4体のゴブリンに手足を掴まれて、もう1匹のいかついゴブリンに石斧に嬉々として殴られていた。5匹のゴブリンを倒した門番の意識はすでに無く、瀕死寸前の状態だった。
コバルトパイソンをゴブリンを目がけて、撃った。
「うぎゃああああ!」
不気味な悲鳴をあげるゴブリンに気を取られたのか、門番にしがみついていたゴブリンが散らばり始める。
一発――二発――三発――四発――それぞれ、ゴブリンの手足に銃弾をぶち込む。
ゴブリンたちは奇声を発しながら逃げて行った。
「シバータ! シバータ!」
そう言いながらアリーンが抱きついてきた。可愛かったので取りあえずその頭を撫でる。辛うじて、ゴブリンの大群を撃破することが出来た。
ゴブリンの襲撃後に町の中へ帰ると、銃などの現世機器に関して割合疑われることは無く町の人々に感謝された。幸運にも、アリーンの家族が顔が広いようで好意的に話してくれたらしい。
普段町を守っている防衛団は他に異変があったみたいで、そこに全軍向っており、門番が倒されたら戦える人がいなくて大ピンチの状況だったらしい。そんな危機的状況もこちらを受け入れてくれるいい材料になった。町の人々が盛大にご飯をご馳走してくれ、また当面の食料などもわけてくれた。
「よかったねー、町の人たちとも仲良くなれてー」
そう久美さんがにこやかに笑う。
「はい、非常に有意義でした。翻訳ソフト用に言語のストックもしたし。みんなにも、いい報告ができそうだ」
これだけの結果を出したんだ。あの桜もきっと唸らせることができるだろう。
その日は、『ぜひ泊まっていってくれ』と促されアリーンの家に泊まることになった。
……近いな。
「ん? どしたの」
お風呂上がりの久美さんが髪をとかしながら、無邪気そうに尋ねてくる。
「……いえ」
とてもじゃないが、言えない。2人の寝るスペースの距離が近すぎるなんて。何気ないフリをして彼女を見ると、シースルーで明らかに白の下着が透けている。豊満な谷間、そして、健康的な太ももがあらわに露出されている。
「あの……いつもその格好で寝てるんですか?」
「うん。これじゃないと、寝れないのよねぇ」
……多分、俺の方が眠れなくなりそうなんですが。
「じゃあ、明かり消しますよ」
これ以上その格好を見続けていると本気で変な気を起こしそうだ。
「ん! じゃあ、おやすみ」
そう言って、毛布に転がり込む久美さん。
明かりを消して、毛布をかけて目を瞑る。
……眠れん!
久美さんの方で凄くいい匂いがする……ラベンダーだろうか。なんか、心なしか体温まで伝わってくるような。
思わず、目を開けると夜目でうっすらと久美さんのシルエットを感じる。
やがて、月夜が雲から出てきたのか照らし出される胸の谷間。
もう……我慢できない。
立ち上がって、外へ出た。
今日は……徹夜で身体を動かす。




