05 王太子のアヒル 2
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【魔物】 主に野生生物(一部例外もある)が魔力をため込み人類にとって非常に暴力的かつ危険な異常な変異を起こし討伐対象とされる。
【幻獣】【神獣】【精霊】【妖精】なども魔力を力とするが人類が危機に陥ることはめったにない。
それらは高い知能を有し好まれればそれらの強力な能力で助けてもらえるが、但し怒りを買った場合は非常に危険な存在である。
もっとも【魔物】と違い滅多に遭遇する存在ではない。
先日の毒殺未遂事件後に届いた、魔術団所属のヒューバート・タウンゼントからの報告。
『殿下のアヒル様ですが魔力持ちです。いかがいたしましょう』
私としては実際のところあのアヒルは放置してもいいのだが頭の片隅に【利用】が浮かぶ。
推察だがアヒルは人語を解していると思う。
意識的に【魔力】を使えれば私たちにとって大いに戦力となるだろう。
そう、敵に気づかれず・・・
彼と話す必要ができた。
父である陛下とも打ち合わせ、執務室で彼を待つ。
侍従が待ち人の到来を告げ、お茶を置いたのち人払いを頼む。
「待っていたぞ」
「お待たせして申し訳ございません」
「いや、それよりも早速話しがある」
そう、厄介なことに数十年来王家の頭痛の種がここ近年物騒な様子を見せ始めている。
穏便な解決策の着地点は見いだせずもはや限界だ。
こちらとしてもこれまで散々我慢してきたが国内が不安定になりそこを他国に付け入られる前に完膚なきまで叩く事を王と決定した。
そこでアヒルの出番だ。
敵に目を付けられていない【魔力持ち】のあれを訓練すれば場合によっては切り札となるかもしれない。
少々?アヒルには気の毒だが解決後は今よりももっと優遇してあげよう。
「それでだ、ヒューバートお前の家でアヒルを預かってくれ」
「アヒル様をですか」
「お前の弟、アヒルを見たがってる言ってたよな」
「ええ言いましたが、【魔力持ち】ですよ。どうするおつもりですか?」
「陛下よりお前の父親にも話は行く。アヒルをお前たち二人で鍛えてくれ。期限は短い。頼む」
「計画内容は父の方に詳しく行っているんですね」
「内容はこれに」
彼に詳細な計画書を手渡す。
「確認したら廃棄処理してくれ」
「解りましたが、殿下は本当は手前勝手に利用する気ではないんでしょうけれど・・・」
「ああ、確かにな。しかしその様な事を言っている場合ではなくなってきたからな」
「そうですね。あちらはなりふり構わず事を起こし始めましたね」
「じゃ、アヒルを呼ぶから。早速だが今日からよろしく」
呼ばれたアヒルに笑顔で話しかける。
「アヒルちゃん、実は君に大事な話があってね。ズバリ言っちゃうけど君、人の言葉を理解してるよね。
ヒューバートからも君に魔力があると報告が上がっていて、アヒルちゃんに【魔物】疑惑が持たれているんだ。今のところ被害は出ていないが心配されてね。それで検査させて欲しいんだ。拒否権は無いよ。
嫌ならお肉だし。」
「ちなみに検査を公にするつもりはなくて、ヒューバートの弟に合わせるという名目で彼の家に行ってもらうよ。よろしく」
そしてアヒルを送り出した。