03 お肉は嫌です
本日もよろしくお願いします。
あの決死の逃避行よりひと月も過ぎた今日この頃、私は王宮の庭園の噴水で水遊びを楽しんでいる。
この国の王太子様を助けた事によりアヒルとして最高の待遇を得た。
美味しいご飯に新鮮果物のおやつ、何よりお肉にされる心配がないなんて、震えるくらい嬉しい。
今後一生こんな贅沢な生活ができるなんて鳥生に悔いなし。
これで転生アヒルの脱走物語はめでたしめでたしで終わる。
と、思っていましたが、鳥生そんなに甘くなかった。
これから王太子様側近のなんと魔術師様宅へ連行・・・いえいえご招待されるところです。
どうしてこうなった?
思い返せばアヒル牧場から買い取られ王宮に連れられたあの日、う~ん?日本じゃないわよね。
というかヨーロッパ?アメリカ?それもアーミッシュ的などこか?本格的コスプレ?
それが第一印象でした。
だって!ビルも車も無く皆の服装が洋装かつ古臭かったから・・・そう思っても不思議じゃないでしょ。
異世界転生なんて思いつかなかったわよ。
あれっ?と思ったのは王太子様のペットとして認定されるために。
「アヒルちゃんが知らない人に捕まえられてお肉にされないように私の印を付けておくよ」
金糸で刺繡された深緑のリボンを首に巻かれ。おしゃれっすね。
その後
「解けたとき大変だから魔術刻印もするよ」
ポンと白アヒルである私の美しい手羽先に印されたのは王太子様の御印である【ユルシの葉】という植物の印でした。
その時微妙な顔をした王太子の表情が多少気になりましたけど。
それより、なんですって?魔術刻印って何ですか?
そこで初めて異世界転生かな?って。
しかし異世界でもアヒルの生活には関係ない。
前述のように美味しいご飯、おやつを食べ水遊び、日光浴を楽しむお気楽ペットライフを送っていたつもりでしたが。
ある日、王太子様と側近の三人?きりになったおり。
実にいい笑顔をした王太子様から。
「アヒルちゃん、実は君に大事な話があってね。ズバリ言っちゃうけど君、人の言葉を理解してるよね。
ヒューバートからも君に魔力があると報告が上がっていて、アヒルちゃんに【魔物】疑惑が持たれているんだ。今のところ被害は出ていないが心配されてね。それで検査させて欲しいんだ。拒否権は無いよ。
嫌ならお肉だし。」
へっ?【魔物】?この世界に【魔物】っているんですか。
いやいやそれよりもお肉ってあんた鬼ですか。
「ちなみに検査を公にするつもりはなくて、ヒューバートの弟に合わせるという名目で彼の家に行ってもらうよ。よろしく」
そうして魔術師様宅へ連行・・・いえいえご招待されるところです。