選択
目覚めた所はふかふかとした布団だった。
「ここ、どこ？」
辺りを見渡すと、ここはベットの上だと分かる。
白い壁に白い床、広い部屋なのに茶色の机と椅子しか置かれていない様子は整頓されている、というよりも殺風景だった。
わたしの服も着替えさせられていた。
先程は膝丈の深い赤のワンピースを着ていたが、今の服装は上質な布でできた踝より少し短いくらいのワンピースだ。
本当にここ、どこ？
そう考えていると、かちゃりと音をたてて扉が開いた。
扉を開けたのはきれいな少女だった。
ストロベリーブロンドの一見桃色に見える髪は二つに高い位置に結われ、大きな目は淡い金色。
ふんわりとしたとても短い太股ぐらいの丈のパンツに白いフリルのついたブラウスを着ている。
彼女は「あっ」と声をあげ、驚いている。
「目覚めたんだ！今人を呼んでくる！」
そう言うと扉を勢いよく開けてどこかへ走っていった。
ここはほとんど、いや絶対にキキョウではないことがわかった。
彼女の着ていた服はおそらく異国の服だ。
でもここは東ではないにしても、西なのか北なのか南なのかは分からない。
そしてたぶん殺されることはないことも分かる。
殺される立場ならば、こんな布団には寝かされない
で、牢獄に入れられているはずだ。
相手は何をしたいのだ？
そう考えていると、またもかちゃりと音をたてて扉が開く。
そこにいたのは、とてもきれいで、いたら見とれてしまう美しさを持つ男の人だった。
濃い金色の髪は無造作に後ろで結われている。
切れ長の目は海のような青い目、鼻筋は通っていて形のいい口元。
長袖の黒い服の上には銀の鎧を着て、白いパンツを履いている。
そんな男の人は驚いた表情を浮かべ、そしてにやりと笑った。
「やあ、ようやく目覚めたか」
そう言ってベットに近づいてきた。
「目覚めたばかりで悪いが、少し話がある。話をしてもいいか？」
「はい、わたしも今の状況が知りたいので」
そう答えると男の人は話し始めた。
「まず、ここは西の国だ。
俺らがある活動をするときの拠点としている家、つまり隠れ家だ。」
「とある活動とはなんですか？」
「それは言えない、とりあえず言うと確実に危ない活動だからな
そしてある男が足が傷だらけで気を失っていた君をこの拠点に連れてきた。」
そう言えば、傷が痛くない？
そう不思議に思い、足を見ると傷がなかった。
「君の足なら、治してもらったよ」
そうだったんだ、と思い、「ありがとうございました。」とお礼を言った。
彼は笑って、「礼なら治したものに言え」と言う。
そして彼は真剣な顔つきになる。
「さて、ここからが本題だ。
君はこの活動をするかい？それだととてもつらく厳しいものになるが、歓迎しよう。
それとも西の国で平和に暮らすかい？」
その選択は、わたしの今後を、人生を決めることになるのは確実だ。
でもわたしは迷わずに選択した。
「わたしは、この活動をしたいです。」
彼は驚いている。おそらく平和に暮らす方を選ぶと思ったのだろう。
「一応、理由を聞いてもいいかな？」
「わたしは、東の国からこの緑目のせいもあるけれど、無実の罪で国外追放されました。
けれどなぜそうなったのか知りたい、とかそんな生易しい理由ではございません。
わたしは無実の罪を擦り付けた少女に、生きていつか復讐したいのです。」
そう答えると、彼はまたにやりと笑い、「その理由なら歓迎するよ」と答えた。
そんな時。ドアががちゃりと音をたてて開いた。
そこにいたのは、見慣れた従者の姿だった。
「真白様、目覚めたのですね…？」
驚いているが、どこかほっとした様子の従者、レオンがいた。
「レオン、あなた生きていてくれたのね。」
そう言うと、涙が出てきた。
レオンは驚いた表情を浮かべ、そして
「はい、僕は生きております」
と言って微笑んだ。
男の人はその様子ににやりと笑って「そう言うことか」と納得していた。
「だからお前、助けてくださいって必死だったのだな。」
「…はい。この人は僕の大切な家族のような人です。ってなんですかそのニヤニヤした笑顔は」
「いや？別に？」
そう言うとにやりとした笑顔を真剣な顔に戻した。
「さて、レオ。この子もこの活動に入るようだ」
「…いいのですか？真白様」
そう心配したように言うが、わたしは大丈夫と答える。
そして説明が始まった。
「まず、この活動はとても危険なものだと言った。この俺らが入っている班は東の国や南の国、北の国の情勢を調査する班だ。戦闘はほとんどないが、殺される危険もある。そしてこの活動の目的は、東の国を潰すことだ。」
そう、冷たく呟くように男の人は言った。
