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緑目の少女  作者: 咲良
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国外追放

小さいとも大きいとも言えない東の国、キキョウ。

そこは他の国とは違う文化がある。

まずみんな着物というものを着ており、みんな黒髪や茶色の髪である。

そして異国の者と思われる者を国外追放する。

だがやはり異国の者は入ってきてしまうし、一部の貴族は異国の文化に興味を持ち、異国のものを手にいれたい貴族もいるのだ。

その一部の者の貴族の中に相宮家と言う家も入っていた。

そのため見た目は木造の大きな普通の屋敷だが、中には異国のものばかりだ。

しかし、やはり異国のものを好きなのは少数派で、嫌うものもいる。

こんな状況の中、事件が起こってしまった。

異国の者による王子の暗殺事件だ。

これにより、政府には「異国の者を殺せ!」という声が届き、時には抗議活動も行われた。

そして政府はこんな通知を出した。

「異国の者は国外追放する。抵抗する者は殺す。」と。

それからはどんなに功績を残した者でも追放され、それを拒んだ者は殺された。

そんな時、相宮家では子供が生まれた。

元気に泣いて、子供を抱く女性と側にいる男性は幸せそうに微笑んでいたが、二人の笑顔はあるものを見た時に歪んだ。 

その赤ん坊の目は緑の目だった。

この国では焦げ茶色の目が一般的だ。

もしもこの目の色がバレたらこの子は殺されるかもしれない。

そう考えた両親は娘を外に出さず、目隠しのような布を手渡し、こう言った。

「決して自分の部屋以外の所で、屋敷の中でも布を外すな」と。

そして魔法が使えるとわかった子供は、目隠しの布をしていても見えるように、魔眼と言う能力を覚えさせられた。

義眼は売っていたが、値段が高くて普通の貴族が買えるものではなかった。

なので目を失った者は目隠しのように布をつけるのがこの世界では当たり前のようなものだった。

そして自分で身を守るために両親は子供に幼少の頃から短剣を握らせた。

一部の信頼できる従者には真白のことを話し、身のまわりの世話を任せた。

母は真白が物心つく頃にはなくなり、世話をする者がいなかったのだ。

成長すると、娘も異国のもの、特に洋服が好きになり、屋敷の中では異国の服を着るほどだ。

家から出してもらえず、異国の洋服を集める趣味をしかなく、時間をもて余す毎日だったが、ある日家に一人の少年が真白の従者についた。

二人はすぐに仲良くなった。

こんな平和な日がずっと続くのかと思っていたが、平和な日々は終わりを告げた




「お前を反逆者として、国外追放する!」

家の玄関で、藍色の着物を着たとてもきれいな顔の男に突然そう宣言された。まわりにはその男には劣らないほどの美しい顔の男がいた。

その男の横にはぶるぶる震えて泣いているふりをしている少女がわたしを見てにやりと笑っている。

「わたしは大丈夫だから、真白さんを許してあげて?」

「ああ、君は優しいな…こんな女に気を使うなんて…」

まわりの男たちもそれに同調している。

なんの茶番だ、しかもなぜわたしの名前を知っているの?

「なんの話ですか!?わたしは何もしていません!それになぜわたしの名前を知っているのですか!」

そう言うとまわりに殺気が放たれる。

「お前はまだしらばっくれるのか!?

咲良を影でいじめていたのはお前だろう!

しかもその布はなんだ!」

そう言って目隠しのようにしていた布を取ろうとする。

いや、やめて。

そう言って手をつかんで抵抗したが、振りほどかれてしまった。

そしてその衝撃で布が外れる。

みんなわたしの目を見て驚いていた。

藍色の着物の男はにやりと笑い、「反逆罪の証拠だな」と呟いた。

「この女は予定通り国外追放だ。馬車に乗せろ。」

そう言うとまわりの男たちがわたしを取り囲む。

そして乱暴に手を掴んだ。

「嫌!離してください!」

抵抗すればするほど力は強くなる。

そして簡素な馬車の荷台に放り込まれるように入れられる。

その様子を見た少女はくすりと笑う。

一枚の布だけを残して、馬車は屋敷を発った。




わたしは馬車にがたごとと揺られていた。 

膝が痛い。どうやら馬車に乗せられた時に擦りむいたようだ。

なぜわたしはこうなったんだろう。

緑の目なのはバレていないはずだったのに。

そしてあの少女は何だったのだろう。

あの少女の最後に浮かべた笑顔が頭の中に張り付いたように消えない。

わたしは何もしていない。屋敷からほとんど出たことのないわたしがましてやいじめなんてできるわけがない。

怒りがふつふつと湧いてくる。

なんとか怒りを抑えると、父や一人の従者の少年の姿がうかんだ。

「父様、レオン、大丈夫かな」

月のような銀色の髪に琥珀色の目。少し少女っぽい容姿の少年、というのが最初の印象だった。

どこか不思議な魅力を感じ、泣いているわたしをいつも慰めてくれる少年で、いつも暇な生活を変えてくれた。とても努力家で、たくさん努力をしていたのを覚えている。

彼はその容姿から分かるように異国の者だ。

だからあの屋敷に押し掛けた者に殺されてしまうかもしれない。

父様も異国の者を匿った者として殺されてしまうかもしれない。

そう考えていると不安になり、冷や汗が出てきた。

その考え事をしているうちに馬車は目的地に着いたようだ。

がちゃり、と荷台の扉を開ける音が聞こえる。

荷台の扉の隙間から差し込んでくる光は、いつも目隠しのような布をしていたわたしには眩しかった。

眩しさに驚いているわたしを、荷台の扉を開けた男は無理矢理腕を掴み、荷台から追い出した。

投げるように追い出され、転んでしまった。

たぶん足全体を擦りむいたのか、あしがとてもヒリヒリする。

「痛い…!」

そう呻くように言ったが、男はやはりそれを無視して馬車の御者台に戻り、馬を走らせてしまった。

光に目が慣れ、辺りを見回す。

そこは深い鬱蒼とした森だった。

「ここ、どこの森?」

耳を澄ますと、どこからか「ぐるる…」と獣の唸り声が聞こえる。

地理を思い出すと、とんでもない所を思いつく。

そこは東の国キキョウと西の国レージュの国境に広がる森林、ケルル。

凶暴な獣が多く、帰ってきた者はあまりいないらしく、よっぽどの手練れでないと行かない森だ。

もしもそこだとしたら、確実にわたしを生かすつもりはないらしい。

「そ、んな…ここで…死ぬなんて」

そう言った瞬間。

がさり。そう草むらから音がした。

そして出てきたのは、茶色の薄汚れた毛並みの狼だった。

ぐるる…と唸り声をあげて、目をぎらぎらと光らせている。

一匹しかいない。今ならまだ…!

そう思い、ワンピースの腰に巻いてある広いリボンに隠して持っていたナイフを取り出す。

だが戦おうとしているのに、足が動かない。

初めて戦うからなのか、足がすくんでいるのだ。

そうして動かないうちに狼は飛びかかってきた。

大きな影が、わたしを覆う。

やっぱりわたし、死ぬんだ。

そう絶望的に思った時だ。

ひゅん、と風を切る音がした。

そしてどす、と刺さる音がした。

わたしの前に狼はどさりと落ちる。

わたし、助かったのかな…?

そう思うと、安心したからか意識が遠くなった。

わたしはそのまま意識に身をゆだねた。

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