転生開始
俺の目の前に天使がいた。
見た目20歳になるかどうかくらい。
10人男がいたら9人は振り向くだろう美形。
体型はスレンダーだが痩せすぎでもない。
バストは俺の理想型のCとDの中間くらい。
膝元まである白いワンピースを着ているため、くびれまではわからないが、理想通りのはずだ。脹脛も素晴らしい。
そして、天使と一目でわかる、背中から優雅に覗かせる3対6枚の翼。完璧です。
自分が消されるかもという重大事件を完全に振り払うインパクトが彼女にはあったのだ。
「は、ははっ初めまして。私水無瀬 進と申しましゅ」
噛んだ。そしてさっきまでのキグルミを着ていた時のぞんざいな扱いをさもなかったことにする様な挨拶をする俺。最低だ。
「いえ、シン様。初めましてではありませんよ。先ほどからお話させていただいていましたルーシアですよ」
なかったことに出来ません。
シン様って呼ばれちゃった!照れる。
「あ、あぁ。そうだったな、ルーシア。うん、ルーシアか、いい名前だな。君にぴったりだ」
「ありがとうございます。いきなり優しくなりましたね。そんな事よりも転生のお話をさせていただきたいのですがよろしいですか?」
転生?もうこのまま消されるまでここに居たら駄目かな?二人きりで。
「な、何言ってるんですか⁉︎ダメです。シン様を消される訳にはいきません。例え間違えてシン様はこちらの世界に送られて来ていても、私がシン様の秘書である事には変わりありませんから」
あれ?声に出てた?
涙出そう。美人秘書しかも天使が俺の事を大事に思ってくれるなんて!前世ではありえないことが既に何度も起きている。本望だ。
「これからシン様には創造神様の転生体作成能力を使って転生していただきます。ただ本来の創造神様の能力は、転生後もこちらの創造神界と行き来ができるのですが、恐らくシン様は、創造神様の能力を十全には利用できません。転生したらそのままその転生体でアルヴァースの世界を過ごしていただくことになります」
「そうしたら、消されないってこと?」
「そうです。言い方は悪いですが一般人になるということです。もちろん元々アルヴァースで暮らしている人達よりは能力は高いとおもいます」
おぉチート人生がまだ送れるかも。
創造神より楽しいかもな。
「わかった。じゃあ転生させてくれ。あ、因みにルーシアはどうなるんだ?」
少し複雑さ表情をしながらルーシアは口を開いた。
「正直申し上げますと、私にもわかりません。本来は創造神様が転生される際に私も一緒転生します。ただ今回の様なイレギュラーケースでは、ご一緒できるか不明です。勿論私もシン様に転生していただいた後、転生を試みます。ですが、失敗した場合は私は消えてしまうでしょう」
そんな⁉︎折角理想の女性に会えたのに!
会って数分でサヨナラなんてあんまりだ!
「ルーシアが助かる方法は無いのか?」
「いえ、あくまで可能性なだけで確実に消えるとは言えませんよ。多分大丈夫ですよ」
嘘だ。恐らく彼女は嘘を付いてる。
鈍感な俺でもそれくらいはわかる。
無理して作っている笑顔だもの。
でも、だからと言って留まることも出来ないのだろうな。少しの希望に賭けるしかない。
俺は最後まで諦めるつもりはないが。
「すまん。このまま話してても不安にさせてしまうな。転生の準備をしよう。どうすればいい?」
「はい。ありがとうございます。では転生体を作成しますね。と言っても難しいことはありません。アルヴァースにいる人の中からもうすぐ産まれる妊婦で、未だ魂が器に入る前の子供に入っていただくだけです」
「誰に入るとか選べるのか?」
「いえ、性別は選べますが、それ以外はランダムです。シン様は男性に転生でよろしいですか?」
「あぁ。男性で頼む」
女性にしようかと一瞬迷ったが、男性の記憶を持って女性になるとか、毎日が大変だよ。
ん?記憶持ち越せるよな?
「ルーシア。記憶はどうなる?やっぱ無くなるか?」
「いえ、記憶をお持ちのまま転生できますよ。ただし、3歳くらいまでは、思い出せないと思います」
「ん。わかった。じゃあ転生してもらえるか?」
「了解です。では、転生を始めますね。あ、シン様の残りのポイントですが、転生後に使える様にしておきますね。では、アルヴァースで再び会えることを祈っております。シン様、本当に申し訳ございませんでした」
ルーシアはお辞儀をした後、俺を見つめていた。
「ルーシアは悪くない。それより絶対にまた会おうな。先に行って待ってるから」
少しずつ俺の身体が薄くなってる気がする。
俺もルーシアを見つめる。くそっ!別れたくねぇ。絶対にアルヴァースで彼女を見つけてやる!絶対だ!
そう決意したところで俺の身体は完全に消え去った。
序章が思ったより長くなりすみません。
次回から転生生活が始まります。




