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アルヴァース・クリエイト 〜異世界適当創世記〜  作者: 神在月
3章 旅立ちの時
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レティシアのダンジョン

アルヴ歴213年4月20日

フィンシオン領~レティシア付近


 テポート村を出て約1週間がたった。俺達はもうすぐレティシアというところまで来ている。ゴブリン達を退治した後村長へ報告し、ゴブリンの魔石に関してはテポート村に譲渡した。貰ってもあまり活用手段がないからだ。魔石を売却したお金は、亡くなった村人の家族に分配されることとなった。ただゴブリンの耳だけは村長から渡された。冒険者ギルドの討伐証明になるらしい。常時依頼らしいから、いつでも依頼達成報告ができるらしい。


ゴブリンリーダーの耳×1

ゴブリンアーチャーの耳×1

ゴブリンヒーラーの耳×1

ゴブリンマジシャンの耳×1

ゴブリンの耳×104


 き、気持ち悪い。でも仕方ないか。ありがたくいただこう。袋に入れたまま鞄に入れるふりをして、アイテムボックスへ格納した。アイテムボックス内なら耳も腐らない。この旅で実験したんだが、空間魔法で作った倉庫と同じ仕様だった。


 それにしても……ゴブリンヒーラーとゴブリンアーチャーなんていたっけ?そういえばゴブリンリーダーの横にいた2体が少し他のゴブリンと違ってたがそいつらか?流星群シューティングスターで1発だったから強さもよくわからなかったな。結局俺は近接戦闘は出来なかったな。遠距離から一方的に殺しただけだ。やっぱり恐怖心からなんだろうな。初戦だったし数が数だったから仕方ないとして、次は近接戦闘も経験できるようにしなきゃな。




「シン様、もうすぐレティシアですよ!」

 ルーシアが嬉しそうに言ってくる。久々の故郷に胸が躍っているんだな。パタパタと羽をはばたかせてる。ちょっと浮いてるぞ……。飛翔スキルが無意識に働いているのか?


「そうだなルーシア。あ、そういえばレティシアに剣術道場とかってあるのか」


「はい。ありますが、道場がどうかしましたか?」


「いや、この前のゴブリンとの戦いで近接戦闘経験が明らかに不足していると感じたから、剣術を習えないかなと思ったんだ」


「可能かとは思いますが、レティシアにそんなに長く留まるのですか?」


「あぁ。はっきり言って今の戦闘経験だと、ステータスが高くてもそれを十全に発揮できない。少しでも実践経験を積みたいんだ」


「私はレティシアにいれるのは嬉しいので構いませんが……。それならレティシアについたら父さんに相談してみましょう」


「あぁ。ありがとう、ルーシア」


 ルーシアと話をしているとレティシアに到着した。門番が迎えてくれる。


「ルーシア様?どうされたのですか?確かシアルグラスに行かれたのでは?」


「そうですが、久しぶりに戻ってきたの、シン様と一緒に」


「シン様?フィンシオン辺境伯様のご子息ですか?大変失礼いたしました」


「あ、お構いなく。今は冒険者ですから。とりあえず通ってもいいかな?ファラント枢機卿に挨拶がしたいので」


「は、はい。どうぞお通りくださいませ。」


 門番と別れて聖堂へ向かう。相変わらず聖堂は大きかった。馬車を聖堂横の厩舎に停めると、ルーシアは走り出して聖堂に入って行ってしまった。


「お父様!ただいま帰りました」


「ル、ルーシア?なぜここに?シアルグラスに行ったのでは?」

ファラント枢機卿は驚いているようだ。まぁ当然だろうな。


「ファラント枢機卿、お久しぶりです」

遅れて俺達も聖堂に入り、ファラント枢機卿へ挨拶する。


「シン様?なぜレティシアへ?」


「突然の訪問申し訳ございません。実は父より冒険者として旅に出るように言われまして、まず最初にレティシアへ来てから本格的に旅に出ようと思いまして」


「え?シン様だけでですか?」


「あ、この後ろにいるのが私の従士達です。彼らと一緒に旅をしています」


「みなさん、まだお若いですね。しかし、フィンシオン辺境伯様がご子息を旅に出させるとは思えないのですが、何か理由があるのでしょうか?」


「それは私にもわかりません。何かしら理由はあると思うのですが」


「とりあえず、皆さんお疲れでしょう。宿泊施設を用意しますので、お休みください」


「お父さん、ありがとう。そういえばお願いがあるんだけどいい?」


「どうした、ルーシア?」


「シン様が剣術の修行をされたいらしいの。どこかの道場で習えないかな?」


「剣術の?どうかされたのですか?」


「いえ、レティシアに向かっている途中のテポート村でゴブリンの集団に襲われまして、その際に近接戦闘が全く経験がなく役に立てなかったので、覚えたいと思ったのです」


「ゴブリンの集団?大丈夫だったのですか?怪我はないですか?」


「えぇ、見ての通りですよ。100体位でしたが従士やルーシア達で力を合わせて退治しました」


「ひゃ、100体!?それをたった6人で退治したのですか?」


「ほとんど魔法で倒したようなものですが……」


「いえ、それにしても100体もいれば、上位種もいたでしょうに……」

 簡単に潰しちゃいましたとは言わない。


「……。ちなみにシン様は剣術スキルはお持ちですか?」


「はい、スキルは取得しています。スキルレベルは5です」


「え?剣術レベル5で、戦闘経験なしですか?」

 あれ?なんかまずかったかな?


「えぇ、一応剣の素振りや簡単な稽古はやってましたので」


「いや、普通はその程度でスキルレベルは上がりませんよ。スキル取得すら難しいはずなんですが……。まぁシン様ですしね、納得しましょう」

 納得してくれた……のかな?


「しかし、それでしたらはっきり言いますが、すでに道場に通う必要はありませんね」


「え?」


「シン様の剣術レベルと同等の人はレティシアにはほとんどいませんよ。師範たちでもほぼ同じかそれよりレベルが低いです」


「そうなんですか……」


「実践経験が積みたいと仰いましたね?それではダンジョンに潜ってはどうですか?」


「ダンジョンですか?かなりランクが高くないと挑めないのでは?」


「そういったダンジョンの方が多いですが、このレティシアには丁度駆け出し冒険者用のダンジョンがあるのです。全部で10階層程のものです。5階層くらいまではゴブリン、コボルト、オーク、スライムくらいしか出現しませんし、群れで出現することはほとんどありません。多くても3体程度です。剣術の熟練度を上げるにはうってつけですよ」


 な、なんということでしょう。そんな素晴らしい物件があるとは!


「そのダンジョンはどこにあるのですか?」


「まぁ焦らずに、明日ご案内しますよ。今日はお休みください」


「わかりました。ありがとうございます」


「では宿泊施設に案内させます。ルーシアは家で寝なさい」


「はい、父さん。シン様よろしいですか?」


「もちろんだよ。久しぶりに親子水入らずで話し合うといいよ」


「ありがとうございます」


 ルーシア以外のメンバーで宿屋へ向かいそれぞれの部屋で休むことにした。そういえばレティシアでは、食糧を提供してなかったから、夕食は黒パンと豆のスープが別料金で食べれるとのことだった。俺たちは遠慮して自分たちで用意したものを食べた。明日ダンジョンに行く前に畑が先だな。


 よし、ダンジョンで修行と行きますか!




-------

-ファラントside-


 ルーシアが帰ってきた。とても嬉しい!辺境伯様に預かって欲しいと頼んだのは私だが、何度後悔したことか……。シン様がダンジョンで修行されるならしばらくはレティシアにいてくれるのだろう。


 しかし、フィンシオン辺境伯様の真の意図はなんだろう。まさか5歳のご子息を本当に旅立たせることが目的だとはとても思えない。これは手紙を出して真意を確認した方が良さそうですね……。


 何か嫌な予感がする。何事も起こらねば良いが……。



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