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アルヴァース・クリエイト 〜異世界適当創世記〜  作者: 神在月
2章 冒険者ギルドと商業ギルド
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幕間 他商会の動き〈前編〉

 ーレイダーsideー


「何だこの騒ぎは?」


 俺はシン・フィンシオン様という辺境伯のご子息目当てにシアルグラスまでやって来た。そしたら街中の人達が慌しく一つの場所に向かって走っているようだ。


「ち、ちょっとすみません!この騒ぎは何かあったんですか?」


 俺は近くを走り抜けようとした男性を引き止めて聞いてみた。


「あぁ⁉︎何って知らねぇのか?フィンシオン商会で珍しい食べ物売ってる上に安いと来たもんだから、全員そこに向かってんのさ!売り切れることは殆どないんだか、順番待ちがすげぇいるからさ。なるべく早く行って手に入れたいんだよ」


 今なんて言った?食べ物売ってる?売り切れることがない?そんなバカな⁉︎世界中で食糧が不足しているのにか?フィンシオン商会?まさか⁉︎


「それってポテトって食べ物ですか?」


「いや?ポップコーンとホットドッグだ。ポップコーンはあんまり腹の足しにはならねぇが、塩が効いてて食べたら後を引くってぇのか?手が止まらねぇのよ。ホットドッグは先週からなんだが、うめぇパンにこれまたうめぇ肉みたいなもんが挟まってんだ。これは腹持ちもいいからオススメだぜ!じゃあ、俺は行くぜっ!」


 違った。ポテトじゃないのか。いやしかし、フィンシオン商会ということは、やはりシン・フィンシオン様が関わっていそうだな。益々興味が湧いてきた。とりあえず俺も向かおう。





 ……どの位並んで待ったのだろう。刻の鐘ー2時間に1回なる鐘ーが2回は鳴ったから4時間は待ったのだろう。漸く俺の出番が来た。しかし店に入る人数を制限するとは考えられてるな。確かに中がギュウギュウだと、買う気にもならないし、買っても出れなくなる可能性もある。入る前から制御すれば、大丈夫ってことか。関心しながら、店の中に入る。何だこの匂いは?今迄に嗅いだ事のない匂いだ。どちらの匂い何だろう?


「いらっしゃいませ。何にいたしますか?」


 この店員奴隷だ……⁉︎そんな……ありえない。店員全員が奴隷だと?


「す、すみませんが店主はいらっしゃいますか?」


「申し訳ありません。店主は不在にしております。私が店主代理のマチスと申しますが、何か店主に御用でしょうか?」


 おいおい、奴隷が店主代理ってなんだよ。どうなってんだ、俺は夢でも見てるのだろうか。


「い、いや特に用という事はないのですが、店主はシン様でいいのですか?」


「はい、左様でございます。お知り合いの方ですか?」


「いや、一方的に知っているだけです。ところで私は商人なんですが、ここで大量に商品を買う事は出来るのですか?」


「ええ、もちろんです。ただ、ホットドッグはあまり日持ちしませんので、遠くに売りに行かれるのでしたらポップコーンがお勧めです。どうぞ、それぞれ試食してみてください」


 するとマチス店主代理がパンのような物と、形の歪な食べ物を差し出してくる。

 パンのような物がホットドッグという事は、こちらがポップコーンか……。試食って何だろう?食べていいのだろうか?


「食べてもいいんですか?」


「構いませんよ、店主の指示で商人の方が来たら、味見の為に試食といって少し食べさせてあげれば商品の価値を理解してもらえると言ってましたので」


 本当に5歳なのかシン様は?いくら貴族の教育と言ってもそんなレベルのしかも商人が理解出来るかどうかのことを実践しているのか?


「では、いただきます」


 う、美味い。これはパンなのか?柔らかすぎる!それにパン自体がほんのり甘く感じる。それにこの挟まっている肉も信じられない旨さだ。そしてこのソースがピリ辛く、今迄に味わった事のない味を出している。しかもそのピリ辛さが絶妙にパンと肉にマッチしている。


 このホットドッグが大銅貨1枚?他の商店潰すつもりか?そのくらいのインパクトだぞ。この食べ物は!


 次にポップコーンを食べる。これも美味い。だかホットドッグ程の驚きはなかった。そういえばフライドポテトを食べてたからだろうか?塩味に慣れてしまったようだ。だが手が止まらないというのは理解できる。フライドポテトもそうだったからだ。


 これも銅貨5枚だと?商業ギルドから警告は来ないのか?


「これを商人達には幾らくらいで降ろしてくれるんです。?」


「売値の半額でどうですか?」


 はっ⁉︎半値だって?馬鹿か、こいつ。儲けが殆ど無くなるじゃないのか?


「そんなに安くて大丈夫なのですか?」


「ええ、店主の意向です。商人によって、周りの村も食糧不足から救っていただくのが目的ですから」


 神様にでもなったつもりか?いくら人が良いっつっても、何か下心とかが逆にありそうで怖いな。チョット驚かせてみるか。


「そうですか、なら遠慮なく買わして貰います。ホットドッグを1,000個、ポップコーンを5,000個お願いできますか?」


「そんなにですか?」


 流石に在庫が足りないだろう。試すようで悪いが、どの程度今の商品があるかの探りは入れておかないとな。


「ありがとうございます。しかしご準備させていただくのに少しばかりお時間いただきますがよろしいでしょうか?」


 え?在庫あるの?どんだけ食糧抱えてるんだ?もしかして王都に納める徴税分を誤魔化して民に還元してるのか?ばれれば反逆罪だぞ?


 気が付いたら店主代理の横に小さな子がいて、大量のポップコーンを台車のような物でせっせと運んできている。こんな小さな子まで奴隷として使っているのか?だが何故だ?この子には全然絶望感と言った感じがない。寧ろ笑いながら楽しそうに仕事をしている。


「お父さん、これどこに運ぶの?」


「あぁそうだった。マリアチョット待っててくれ。お客様、こちら馬車に積み込みますか?もしそうであれば、店の裏手の方に馬車を停車する場所がありますのでそちらまで馬車を回していただけますか?」


 ……え?父さん?奴隷の家族の子が一緒にいるのか?珍しい偶然もあるもんだな。だからこの子は楽しそうなんだな。


「あ、あぁでは馬車を回してくる。金は後で良いのか?」


「はい、数をご確認いただいてからで結構です」


 そういって俺は一緒に来た、御者の所へ行き馬車を回すよう指示する。


 戻ってきたら既に大量の食糧が停車場に準備されていた。その横に先程の子供と女性がいた。


「あ、お母さん来たよ〜」


「はいはい、ありがとうマリア。この度は大量にお買い上げいただきありがとうございます。数をご確認いただき問題なければお支払いをお願いします。ホットドッグ1,000個で金貨5枚、ポップコーン5,000個で金貨12枚と銀貨5枚、銀貨の方はおまけさせていただきますので併せて金貨17枚になります」


 母親も一緒だって?家族纏めて買ったのか?シン様は一体何を考えて……。そうか!この働き具合が既に答えか。命令できる奴隷でもやる気がなければスピードも品質もあったものじゃない。だから単純な力作業のみが奴隷の主な仕事になっていたのだ。たが、ここの奴隷はまるで違う。自分達の意思で判断で仕事をしている。これは、普通に雇われている者でも難しいことなのに。シン様か・・・本気で興味が出て来た。出来るならお仕えしたいくらいだ。


 数を確認し、金貨17枚を払い商店を後にした。しかし、馬車が食糧で一杯なんて初めてだ。隣で御者がポップコーンを貪り食っている。給金から引いておこう。


 しかし、他の商店は大丈夫なのだろうか?チョット気になったので、商業ギルド経由で話を聞きつつ、シアルグラスの食糧品店を回ってみることにした。


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