従士との対面
20150614/誤字、文面修正
アルヴ暦213年3月6日
フィンシオン城〜軍議の間
今日は俺の従士が決まる日だ。あんまり気乗りはしないが、旅する為だ。我慢しよう。
「なぁ、ルーシア。旅に出たらまずレティシア行くとしてさ。その後はどうしたい?」
「私には本来この世界で、シン様を御守りするのが目的なので、半分目的は達成しています。しいて言うならば、まだ私もシン様も普通の人より多少強い程度です。この世界には、かなり強い魔物もいますから、まずは強くなる事を目的としてはどうでしょう?」
「うーん。言わんとしてる事は理解できるんだけどさ。ところで、魔物と戦った事ないんだけど、ルーシアはあるの?」
「いえ、私もありません。ただ知識としてですが、このフィンシオン領の平原にはあまり強い魔物はいませんが、東のグランクール王国との間にある山岳地帯や南一帯のエルヴァニア公国のある大樹海は、かなり高ランクの魔物がいるようです。騎士団が纏まっても勝てない魔物もいるとか。あとは、レティシアの西にあるダンジョンがかなり古くからあり、未だ誰も攻略出来ていないとか」
ダンジョンか⁉︎テンション上がるな。あ、そう言えば創造神の時に無駄に使った装備品は何処のダンジョンにあるんだろう?
「ダンジョンか。俺の創ったアイテムを取った奴とかいるのかな?」
「恐らくまだでしょう。シン様が創られた装備品は2種類ありましたが、1つはこの大陸の何処かのダンジョンに、もう1つは遥か北西の大陸のダンジョンにあります。私も具体的な場所はわかりません。ただ、入手されていれば、ドロシーから何かしら連絡があるはずです」
「そっか、まだこの大陸自体が食糧不足だったから、ダンジョン攻略も儘ならなかったんだろうな。俺たちもいつか行ってみような」
「はい。勿論お伴します」
「何れにしろ、レティシア迄は2週間以上掛かるし、今後の事も考えながら行こう」
「はい!」
そうだ。まずは、レティシアを目指してその後は、従士を鍛えないとな。まぁ俺も剣術の経験は乏しいが、スキルだけは高いからな。自然と身体が動けるんだ。だからそれなりに強いはず……。魔物とか俺普通に戦えるのかな?ゲームではガシガシ殺しまくってたが、この世界はゲームっぽいがゲームではないんだ。少し心配だ。
「シン様、軍議の間に着きましたよ。大丈夫ですか?何処か体調悪いのですか?」
「いや、大丈夫だよ、サーシャ。さあ、入ろう」
シンが色々と考えながら軍議の間に入ると既にみんな揃っているようだった。
「おぉ、シン。来たか。では此方へ来い」
「レグス父様、お待たせしました」
内務担当クラウス、財務担当シュトラウスが父さんの横にいる。左側に騎士団と魔法師団、右側に近衛隊と兵士団が数名ずついる。
「では、本日はシンが旅に出る時の従士を決めたいと思う。それぞれ決めてきた者を紹介して欲しい。まずは、魔法師団長ロザリンド頼む」
「はい。私共魔法師団は、ロゼッタ・ボールドウィンを従士とさせていただきますわ」
「ろ、ロゼッタ・ボールドウィンです。よ、よろしくお願いします」
昨日会ったが、ロゼッタが改めて挨拶をする。昨日よりも緊張しているようだな。
「ほぅ、まさかロザリンドの妹御を紹介されるとはな。ロゼッタ、シンをよろしく頼む」
「は、はい!私の命に代えましても御守りいたします」
ロゼッタがそうレグス父さんに伝える。ルーシアの眉がピクリと動く。まるで御守りするのは私だけで十分よ。とでも言いたそうな目をしている。気のせいと思おう。
「では、続いて兵士団頼む」
「はっ。某共の紹介いたしまするは、ここにおりますヨシュア・レーニックでございまする。レーニック男爵家の三男ですな」
兵士団長のグリーグが紹介する。紹介された男が前に出る。兵士団の剣と鎧のセットだ。
「ヨシュア・レーニックです。よろしくお願いします」
「よろしく頼む」「お願いします」
レグス父さんと俺の声がかぶる。俺は神眼でヨシュアを見る。
■名前:ヨシュア・レーニック(14)
■性別:男 ■種族:普人族
■ジョブ:剣士5/村人9
■状態:正常
■ステータス
体力50/50 魔力43/43 筋力26 耐久力25
敏捷25 器用23 知力21 精神力22 運106
■スキル
パッシブ
〔火魔法耐性1〕
アクティブ
〔剣術3〕〔槍術1〕〔斧術1〕〔盾術2〕〔気配察知1〕
■賞罰
なし
ふむ。まぁ、ロゼッタとそんな大差はないか。前衛型か後衛型かの違いだけだな。剣術3か、将来は結構な剣士になれそうだ。
「最後に騎士団紹介を」
「はい。騎士団からは、ウォレス・ハモンドを推挙いたします。ハモンド男爵家の四男でございます」
ロイド騎士団長が紹介する。ん?ハモンド……?聞いたことあるような……。思い出せん。
「私は、ウォレス・ハモンドと申します。先日はシン様の商会に対して兄がご無礼をいたしましたこと、お詫び申し上げます」
「ん?商会?何のことだ」
レグス父さんが尋ねる。やべ、ハモンド!思い出した。商店開いた時に突っかかってきた兵士だ!ま、まずい。
「はい、先日シン様のフィンシオン商会で、食料を街民に販売されていたのですが、兄は暴動と勘違いして、軍の出動を依頼したとか。次の日もシン様に対して暴言を吐いたと伺っております。本来なら重罰を受けるところをシン様の寛大な御心でお許し頂いたのです」
な⁉︎こいつ、何こんなところでそんな事言っちゃてくれてんの?折角父さんとかにばれずに何とかなったと思ってたのに!
「ほほぅ。という事はこの前の暴言騒ぎはシンが引き起こしたとも言えるのか?どうなんだ、シン」
「え?いや……確かに食料は販売してましたが、軍が出たのがそのせいだったとは気づきませんでした。暴動なんて起こってなかったですし」
「ふむ、では次の日のウォレスの兄の暴言とは何だ?」
「えーと、確か食料を買いたい街民を引き連れて商店に向かって歩いていたら、彼の兄上に引き止められただけですよ」
「色々と隠し事がありそうだな?まぁそれは今夜食事の時に詳しく聞こうかな?フィンシオン商会の事も聞きたいからな」
なんて日だ!畜生。ハモンド家め……。しかし、ウォレスは兄と違って真面目な感じだな。神眼で見る。
■名前:ウォレス・ハモンド(15)
■性別:男 ■種族:普人族
■ジョブ:槍士6/村人10
■状態:正常
■ステータス
体力66/66 魔力39/39 筋力32 耐久力33
敏捷19 器用20 知力18 精神力21 運110
■スキル
パッシブ
〔土魔法耐性1〕
アクティブ
〔剣術1〕〔槍術4〕〔斧術1〕〔盾術1〕
■賞罰
なし
やっぱり、脳筋か。もうちょっと知力上げてくれ……。そしたら空気読めるようになるよ……。俺の従士になるなら、まずはそこから教え込もう。
旅立つメンバーは集まった。だが、こんなにも心が沈む顔合わせになろうとは誰が予想できただろうか。
その晩、俺とルーシアとついでにサーシャも、レグス父さんからの質問攻めにあい、フィンシオン商会の事は全てばれてしまった。
だが、父さんはフィンシオン商会はそのままにしていいと許可してくれた。器の大きい人だ。尊敬に値する。ただ、最後に売上を暴露した時にフリーズしたのは言うまでもない。
結果としてフィンシオン家にも、今後はお金を分配対象にすることになった。まぁ父さんの力になれるなら構わないけどね……。
隠し事がなくなってよかった。これで安心して眠れそうだ。




