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アルヴァース・クリエイト 〜異世界適当創世記〜  作者: 神在月
2章 冒険者ギルドと商業ギルド
20/43

フィンシオン領改革

20150612/誤字修正

アルヴ暦213年2月3日

フィンシオン城内


 5年祭から戻ってきた俺たちは、フィンシオン城内にある、食堂に集まっていた。


 一緒に行っていた近衛の従士達だけでなく、フィンシオン軍の騎士団団長ロイド、騎士団副団長エリアス、兵士団団長グリーグ、兵士団副団長マルクーゼ、魔法師団団長ロザリンド、魔法師団副団長ゼウォル、近衛隊隊長アルベルト、近衛隊副隊長バルフォア等フィンシオン軍の中枢メンバーが一堂に会していた。

 軍のメンバーだけでなく、内政担当クラウス、財務担当シュトラウスもいた。


 因みにみんなそれなりの貴族家出身らしいが、特に興味がなかったので詳しく知らない。まぁ神眼使えば賞罰欄に出るんだが。


 何故この錚々たる面子が集まっているのかと言うと他でもない。俺の事でみんなに話があると、レグス父さんが呼び出したからだ。


「すまぬな、皆良く集まってくれた。」


 レグス父さんが話し始める。


「まず、今日集まってもらったのは、息子のシンのことだ。無事5年祭を終えて戻ってきた。ギフトスキルも賜り、しかもアイテムボックスらしい。」


「「おおっ!」」「な、なんと!」「素晴らしい。」


 驚きと称賛の声が上がる。


「そして、シンには少し早いもしれないが、旅に出そうと思う。」


「「「えっ⁉︎」」」


 また一斉に驚きの声が上がる。俺の声も含む。レグス父さん何言っちゃってんのさ?俺まだ5歳ですよ?


「お館様、それは早過ぎるのでは、ありますまいか?」


 えーっと。誰だ?あぁ、兵士団長グリーグか、よく言ってくれた。その通りだ!周りの他の面子も頷いてるし。しかし、お館様か……戦国武将みたいだな。


「俺も早いとは思うが、シンの能力を考えれば、十分やっていけるだろう。」


「……。」


 まあね。伊達に前世も併せて40年も生きてませんよ。寧ろ余裕です。あ、でもこの世界は魔物もいたな。レティシアまでの道のりは全く魔物でないから、忘れてたよ。戦闘経験は模擬戦のみです。


「それに、シン1人で行かせる訳ではないしな。」


「そういえばお館様、こちらの天人族のお子様は?」


「そういえば紹介してなかったな。この子はルーシアと言って、モーリス・ファラント枢機卿の御息女だ。シンと同じく神の加護を得ていることもあり、枢機卿が俺に預けたのだ。」


 神の加護という言葉に騒つく。


「ルーシア・ファラントです。よろしくお願い申し上げます。」


 ルーシアが丁寧に笑顔で挨拶する。みんなこの可愛さに破顔している。


「ぅおっほんっ……。それでは、ルーシア様もシン様と共に旅に?」


「いや、そういえば枢機卿から預かった手前いきなり一緒に旅にというのは過酷だろうか?」


「いえ。私はシン様と共に行きたいと考えております。父上様のことは、どうかお気になさらず。」


「そうか。了解した。ではシンと一緒にいてもらえるか?」


「はい!承りました。」


「あら?お館様。この2人だけではないですよね。どうされるのかしら?私達は城からそんなに離れることは出来ませんわよ?」


 ロザリンドが質問する。


「そうだ、それでお願いなんだか、騎士団、兵士団、魔法師団から1人ずつシンの従士とする者を選んで欲しいのだ。選ばれた者は将来シンの近衛従士としたい。」


「まあ、それは素敵ですね。私が立候補したいわ。」


「あぁ。すまんが選ぶのは、役職に就いてなくて、なるべく個の力が強い者で頼む。」


「あら嫌だ。冗談ですわ。わかりました、直ぐに選んだ方がいいですの?」


「いや、直ぐに出発させる訳ではないので、そこまで急がん。まぁ冬を越して4月頃に出ることを想定して3月頭には顔合わせしたいと思う。それまでに決めてもらえるか?」


「わかりましたわ。」「御意。」「了解しました。」


 ロザリンド、グリーグ、ロイドが肯定する。


「して、お館様。シン様の旅の目的はなんですかな?」


 グリーグが聞く。うんいいぞグリーグ。何か俺の言葉を代弁してくれるのは何時もグリーグだな。君の名前は忘れないよ。


「皆も既に噂で知っているかもしれないが、レティシアから帰る途中に色々あってな、食料不足問題をシンに解決させたいと思う。」


「お館様、質問よろしいでしょうか?」


 畏まって内政担当のクラウスが発言する。


「クラウス、どうした?」


「はい、私も噂では聞きましたが、その……本当なのでしょうか?」


「クラウスの疑問は当然だと思う。実際に見てきた俺でさえ、まだ半信半疑だ。そこで皆にも見て貰おうと思ってな。シン、頼めるか?」


 レグス父さんが俺に委ねる。


「わかりました。では、今から僕の魔法で食べ物を出します。とはいえ、皆さんお食事はされた後かと思いますので、茶菓子にしましょう。サーシャ、みんなにカップを。」


「かしこまりました……。カップだけでよろしいのですか?」


「うん、飲み物も出すから。」


 そう説明して、カップを持ってきてもらう。


 俺は前世のお菓子を大量にイメージする。

 食堂のテーブル一杯にクッキー、ケーキ、羊羹、ポテトチップス、スナック菓子、チョコレートなど、前世で食べた思い出せる全てのお菓子を出してみた。さらに、飲み物もイメージして出した。酒は流石に時間的に早いので、コーヒー、紅茶、ジュースを出す。炭酸飲料もある。


「「「!!!!!?」」」


 その場にいる全員の目が見開く。光の後に大量の、しかも見たこともないであろう食べ物があるのだから当然だが。何故かルーシアまで驚いている。あ、そっか。ルーシアは地球の記憶がある訳じゃないもんな。


「どうぞ皆さん、食べてみてください。」


 見たことのない食べ物に皆警戒しているが、ルーシアは率先して食べ始めた。そして、大きな目を更に大きくし、天使の笑顔を惜しげも無く晒していた。続いてやはり魔法で出したというところに興味があるのか、魔法師団の2人が食べる。


「お、美味しい⁉︎とても甘いですわ。」


「本当ですじゃ、こんな甘い食べ物初めて食べますじゃ。」


 ロザリンドはケーキを気に入ったようだ。大量にあるのにホールを数個抱え始めた。


 周りで見ていた面子も食べ始める。其々好みのものを探しながら色んな菓子を食べている。流石に甘いものどころか食料自体が少ないからかみんなここぞとばかりに食べている。メイドのサーシャもハシャギながら食べていた。メイド長のベリーズに超怒られてる。頬が膨れているのは、お菓子を詰め込んでいるからだろうか。殴られてはないはず……。


 執事長のサントンとベリーズに、他の使用人も呼んで、配膳室パントリーで食べるよう、一部のお菓子を渡して指示する。ベリーズもサーシャも喜んでいた。サントンには羊羹を勧めておいた。好きかは兎も角似合うから。


 配膳室から歓喜の声が聞こえてきた。やっぱりみんな甘いものは好きなんだな。

 因みにまだ食堂の面子も食べている。無くなるはずない量を出した筈なのに、無くなった。恐ろしい、甘いものは別腹は異世界でも通じるのだ。


 という事で、もう一発創造魔法でお菓子を出した。流石に食えまい。というよりこれは、お土産用に出しただけだ。


「どうだ?シンの魔法は?勿論菓子ではなく、食料であれば何でも出せるらしいぞ。」


「お父様、少し訂正させてください。実は食料に限らず、基本的にはイメージできる物は何でも出せます。但し1日3回までですが。」


「あぁ、そうなのか。食料ばかりだったから勘違いしていた……!何⁉︎何でもと言ったか?」


「えぇ。何でも出せますよ。イメージさえできれば。どうかしましたか?」


「それって、魔法使いや錬金術士達が一生を掛けてでも到達したいと言われる究極の最終地点ですわ。まさかその様な方が現実にいらっしゃるとは……。しかも5歳……。」


 ロザリンドが呟く。そうか、確かに何でも出せたらイメージ次第で何でもありだもんな。ロボットとか出すか?いや、流石にまずいわな。


「……シンよ、この魔法なるべく人には見せない方がいいだろう。食料不足解消には、野菜の種や苗を準備しておいてもらえるか?種類は任せる。」


「わかりました、お父様。出発までに準備します。」


「頼むぞ。皆、改めてシンの能力は皆の目で見て納得してもらえたと思う。このシンの能力を借りてフィンシオン領を改革するぞ!」


「「「おおっ‼︎」」」


 いい返事をしつつも、まだ皆食べ続けてるぞ。配膳室からもシレッとサーシャが調達しに来てるし。おかわりまで無くなるのか……。3発目いっとくか。


「皆さん、好評なのでもう一度出しますね。ただ、これから出すのは、お土産に持って帰ってください。ご家族にもお分けください。」


「「ありがとうございます、シン様。」」


 感謝の言葉を貰えるのは嬉しいもんだな。と思いながら本日最後の創造魔法でお菓子を出して、みんなには持って帰ってもらい解散となった。




「ルーシア、美味しかった?」


「ええ、シン様。とても美味しかったです。ありがとうございました。」


 うん、やっぱりルーシアに喜んで貰えるのが一番だな。


「あ、そうだ、シン、ルーシア。明日冒険者ギルドへ行くぞ。」


 父さんが唐突に言ってきた?


「構いませんが、何をしにですか?」


「お前達の冒険者登録だ。旅には欠かせないぞ。旅の資金もそれで稼いでもらうからな。」


 おっと。普通旅の資金とか辺境伯ともなれば大金くれるとばかり……。


「俺も親父が死ぬまでは冒険者してたしな。金なんか自分で稼ぐもんだ。」


 はーい。まあどうとでもなるか。


「冒険者ギルドには依頼書とかもあるから、採取くらいの簡単な依頼は、この期間にこなしておけ。」


「わかりました。」


 5歳にして、旅に出ることが決まった。まぁ家でのんびりも捨てがたいが、世の為人の為にいっちょ頑張りますか!


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