身分証明とステータス
アルヴ暦211年1月
フィンシオン辺境伯領、レティシア。
シンは誕生から3歳と4ヶ月になった。
現在、父レグス、母ソナと共に、馬車に揺られている。フィンシオン辺境伯領では子供が3歳になると、レティシアにある聖堂にて、身分証明となる魔石で精製されたカードを発行してもらうのだ。レティシアでは年に1回1月に、カード発行の儀式が行われる。
そのカードは、名前、性別、生年月日、ジョブ、ジョブレベル、各種ステータス、スキル、称号、賞罰が表示できる。ギルドに登録していれば、ギルドランクもだ。各種ステータス以下は非表示にもできる。
このカード一つにもこの世界の魔法技術の高さが伺える。これは、シンが世界設定した際に、魔学を高いに選択していたことが大きく影響していたりする。
「シン、ここがレティシアの街だぞ!」
「はい、とうたま。うわぁおはねのひとがたくさんでしゅ」
「あぁ、あの人達は天人族って言うんだ」
「てんじんじょく?おはねがきれいでしゅ」
未だ記憶は戻っていないシンは、普通の3歳児として何不自由なく暮らしていた。
ここレティシアは天人族が多く住む街である。これは、昔辺境伯が魔物が大量発生した際に、天人族を助けたことから種族間交流が始まった。領内に天人族の街を創る偉業を成し遂げ、レティシア住民の辺境伯に対する評価は非常に高い。
元々天人族は寿命が長いこともあり、子供が産まれ難く、種族人口はユーミル大陸で5000人もいないとされているが、4000人弱の天人族がこのレティシアに住んでいる。それだけレティシアが天人族にとって暮らしやすい場所であると認知されているのだ。
フィンシオン辺境伯の紋章が付与された馬車が通ると、周りの天人族が手を振って笑顔で挨拶してくれる。
レグス、ソナとシンも一緒に手を振り返してその場を通り抜け、聖堂にたどり着いた。
「うわぁ。おっきいねぇ。かあたま」
「ふふ。そうね、シン。大きいね」
一般的に街にある教会と異なり聖堂は非常に大きい。神が降臨される際に小さいと失礼という理由から大きく造られている。
その神殿に入るフィンシオン辺境伯一家。
先に連絡が行っていたのか、すぐに迎えの方が出てきた。モーリス・ファラント枢機卿である。
「ようこそ。フィンシオン辺境伯様」
「これはファラント枢機卿殿。あなた自ら出迎えていただけるとは、お手数をおかけし、大変申し訳ない」
「いえいえ、私共天人族にとって、あなたは最も大切な友人ですからね。出迎えるのは当たり前というものです。さあ、こちらへどうぞ」
簡単に挨拶を終え、儀式の行われる部屋へ通される。
「実は本日は私の娘も儀式に参加させていただくのでご紹介をと思いましてな」
「枢機卿様のお子様。シンと同い年だったのですか。奇遇ですな。私もやっと授かった子だったのですが、枢機卿様も同じですか」
「おっしゃるとおりです。私共天人族は滅多に子供ができませんので、今回授かったことを神様に感謝しております。ルーシア、こちらに来なさい」
トコトコ歩いてくる小さな少女。レグスとソナは彼女を見て将来確実に美人になると勝手に妄想していた。シンは横でルーシアをぼーっと見つめていた。
早くも再会できた2人だったが、この時どちらも記憶が蘇っておらず、双方人見知りな感じで、簡単に挨拶をするに留まっていた。
「こ、こんにちは。シンでしゅ」
「こ、こんにちは。わ、私ルーシア」
初々しい挨拶に、親達は笑顔が絶えない。
「「??」」
当人達は何故か前にもこの様な事があったようなデジャブを感じていたが、お互い記憶も戻っていない子供状態なのでスルーされた。
「では、儀式を始めましょう。シン様、ルーシア、ここに座ってください。そしてこの水晶に手を置いてください」
この水晶は生体データを吸い上げるものだ。吸い取ったデータを魔石カードへ転写して、身分証明カードが出来上がる。
シンとルーシアが其々水晶に手を置いた瞬間、2人の水晶が光が迸る。聖堂全体が光に覆われて行く。
「な⁉︎なんだこの光は‼︎こんなこと今まで一度もなかったのに!シン様、ルーシア大丈夫ですか?」
「「うん、大丈夫」」
2人同時に返事する。
「ファラント枢機卿殿!今の光は?」
「フィンシオン辺境伯様。いえ、私にもわかりません。今まで一度もこんなに強烈な光を出したことはありません。とりあえず水晶のデータをカードに転写してみましょう」
魔石カードに其々の水晶を転写していく。
出来上がり、レグスはシンのカードを受け取って内容の確認をした。同時にモーリスもルーシアのカードを見た。
■名前:シン・フィンシオン
■性別:男
■年齢《3》■生年月日《207/9/25》
■ジョブ《村人2》
■ステータス《52》
体力《28/28》魔力《84/84》筋力《14》
耐久力《14》敏捷《28》器用《36》
知力《42》精神力《42》運《210》
■スキル《3,630》
ユニーク
〔???1〕〔???1〕
パッシブ
〔全言語理解2〕〔全属性魔法適正☆〕〔成長速度上昇2〕
アクティブ
〔錬金1〕〔採取1〕
■称号
〔宇宙創造神の加護〕
■賞罰
なし
■名前:ルーシア・ファラント
■性別:女
■年齢《3》■生年月日《207/12/12》
■ジョブ《村人2》
■ステータス《52》
体力《20/20》魔力《120/120》筋力《8》
耐久力《10》敏捷《24》器用《28》
知力《56》精神力《64》運《150》
■スキル《520》
ユニーク
〔???1〕〔ポイントオペレーター2〕
パッシブ
〔全言語理解2〕〔全属性魔法適正☆〕〔成長速度上昇1〕
アクティブ
〔光魔法1〕〔空間魔法1〕
■称号
〔創造神の加護〕
■賞罰
なし
「………………」
レグスとモーリスは石化した。
「あなた?どうしたの?」
そういって、ソナもカードを見た。
「まぁ!なんということでしょう。シン!あなたは神様に守られているみたいよ!」
ソナは男親2人より落ち着いていた。
「でも、宇宙創造神ってどなたかしら?聞いたことない神様だわ。宇宙って何かしら?強そうではないわね。下級神様だとは思うけど」
ソナは落ち着いているというより、天然だった。
この世界では、神は存在すると信じられている。というのも、アルヴ暦の始まりが、世界共通通貨を作成せよとの神託があったからだ。
神は上級神、中級神、下級神と言われているが、実際神様の名前を今のアルヴァースにいる人達の殆どは知らない。一部教会に属するものは、神の名前を出したりするが、それは、教会の先人達が勝手に付けた名前だったりする。
実際アルヴァースで本当の神は創造神のシンただ一人なのだ。秘書作成が実は創造神の部下となる神作成の一歩なのだが、これは当時のシンもルーシアも知らないことだった。
閑話休題
漸く気を持ち直した男親達はお互いを苦い顔で見つめあい、2人のカードを見せ合いながら、話を始めた。
「ファラント枢機卿、この子達は一体どうしたのであろうか?能力値も一般的ではないと言うか、知力や精神力は大人と比べても遜色がないではないか!」
「フィンシオン辺境伯、正直私も混乱しております。恐らくはこの神の加護が影響しているのでしょう。私も初めて加護というものを見ました。しかも、2人別の神の加護です。私はこの2人に何か神からの使命があるのではと思っています」
「神からの使命?そんな事が本当にあるのか?」
「いえ、あくまでも憶測でしかありません。加護を与えられたのは、この子達が初めてですし。あの、……フィンシオン辺境伯。お願いがあるのですが、この事は内密にしていただくことは可能でしょうか?」
「内密にと?……あぁ、そうだな。これが広まれば確かに良くないことが起きるかもしれないな。神の加護が付いている事が知れるだけで、攫われる危険もあるな」
「えぇ、仰る通りです。せめてこの子達が大きくなるまでは、世間に広まらないようにしなければ」
「うむ、わかった。俺は誰にも言わん。ソナにも言い聞かせておく。あとは、シン本人にもだな。カード情報は隠させよう」
「ありがとうございます。私もルーシアに言い聞かせておきます」
「では、そろそろ城に戻らなければならない時間だ。予定より時間がかかってしまってすまなかったな」
「いえ、こちらこそ失礼いたしました。では次は5歳の儀式でお待ちしております」
「うむ、また頼む。ソナ!シン!帰るぞ」
そう、告げられた後、ソナとシンはモーリスとルーシアに別れを告げて教会を出て馬車に乗り込んだ。
馬車の窓から顔を出し、モーリスとルーシアに手を振るシン。
ルーシアも手を振って馬車見送っていた。
こうして、シンとルーシアの再会は、回りに混乱を招きながらも、本人達の記憶が戻らないまま誓いを果たしたのであった。
一般的3歳児ステータスは当然ですがこんなに高くありません。一桁が普通です。
運は100が普通でレベルアップでの変動はしない設定としています。
ステータスポイントで各種数値アップができます。運にも適用化。
ステータスポイントはレベル×1p入ります。
シン、ルーシア共に宇宙創造神が50pくれました。
体力は耐久の2倍、魔力は知力、精神力を足した数値が基本系です。装備、スキル、アイテム等で変動する場合もあります。
スキルポイントは、レベルアップ毎に10p入ります。シン、ルーシア共に宇宙創造神が500pくれました。更にシンは3,110ポイントをルーシアが転生時に〔ポイントオペレーター〕を使って移している為、異常値になってます。
ちなみに宇宙創造神がオマケをあげた時は、ルーシアがシンに創造神のポイントを移したことを認識してませんでした。その為シンは、よりチートになることに...。




