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雁擬き

掲載日:2026/01/27

この物語はフィクションです。

完全なオリジナルとして考えました。


また、後書きにネタバレがありますのでご注意下さい。




(人は何故──)


(周りの目を誤魔化してまで、取り繕おうとするのでしょうか)



 私の住む家は、三人家族で、母と父。そして、私です。


 家庭はとても静かで、母と父はあまり話す所を見たことがありません。

 母は、専業主婦でいつも家にいます。父は、毎日母の為に、遅くまで働いています。



◇ ◇ ◇



 私は、小学校に行かなければならないので、平日の日中は学校で勉強を学んでいます。

 大抵のことなら分かりますが。私にも、分からない事はありました。



「ねぇねぇ。歌恋かれんちゃん宿題みせてー!」

「昨日忘れちゃってさ〜!ね?お願い〜!」


「ちょっと、ゆずちゃん……。ダメだよ」


「え〜?別にいいじゃん〜!歌恋ちゃんはいつも満点なんだからさ〜!」

「──ねっ?」


「でも……」


「──?」

「私はいいですよ」


「本当にー!ほらゆったじゃん〜!」

「ありがと〜!終わったら返すね!」


「はい」



 宿題は、毎日家に帰ってからやります。

 母がそうしなさいと言うので、必ずやるようにしているんです。

 

 夕飯時になると、たまに私の名前を呼ぶような声が聞こえて来ます。

 私は隣の部屋にいるので、ハッキリとは聞こえませんが。父が母を怒鳴っている様子が分かりました。



「──だから、何度も言ってるだろッ!!」

「歌恋は──」


「……うぅ。…うぅ……。」



 その度に、母は泣いてました。

 私は、その小さな声を聞きながら、ゆっくりと眠りについたのです。


 父は、毎晩の様に母を怒鳴りました。

 しかし、私が父の顔を見た時。その顔には、疲労の表情が見えていました。


 私が心配をしても。父は「オマエは気にしなくていい」と言うので、私には父の気持ちが分かりませんでした。



◇ ◇ ◇



 そんなある日。

 私が通う学校で、参観日がありました。

 その日の帰り道。母は私を連れ、家に帰る途中でした。



「見て……佐々木さんの奥さん。また──」


「仕方ないでしょう。そうでもしなきゃ……きっと。」


「でも……このままだと。子供達にも──」

「それに、歌恋ちゃんやお父さんが……」



 三人の母親達が、私達のことを見ながら、私達に聞こえない様に会話をしていたのです。

 私の手を強く握る母の顔を見上げると、母は真っ直ぐに。ただ一点を見つめながら歩いていました。



「お腹空いたでしょう……?」

「歌恋。何食べたい?」


「なんでもかまいません」


「そう。分かったわ」

「なら、あなたが好きな"がんもどき"にしましょう」



 そうしてまた。夕飯時になると、父は母を責め。

 私は眠りにつきました。



(人は何故──)


(周りの目を誤魔化してまで、取り繕おうとするのでしょうか)

(私には分かりません。それが本当に──)



(幸せなのでしょうか?)



◇ ◇ ◇



 次に私が目を覚ました時。

 父はもう、仕事に行っていました。母は私の部屋に居ましたが、私はそのまま学校に行く準備をしていました。



「行って来ます」



 毎日。当たり前のように日々を過ごし、何一つ変わらない光景を記憶する。

 私には理解できませんでした。


 ですが、私にはどうすることもできないのです。



 何故なら──

 私は──



◇ ◇ ◇



「佐々木さん」

「あれから、奥さんの様子はいかがですか?」


「ええ。まぁ……、前よりは笑うことも増えた気がします」

「でも、充電中はひどく…。精神が乱れますね……」


「そうですか……」


「他にも、料理を三人分用意するんです……」

「それも……娘が好きだった料理を」


「それは……困りましたね。どうにかして境を認識してもらわないと」

「じゃないと、これから先も。同じ様な状態が続くでしょうし」


「学校の方は、どの様な対応をしてもらってるんですか?」


「学校の方は、事情を説明して。一応……通わさせてもらってはいます。しかし……」

「他の保護者の方からの苦情が来ている。と……この前報告を受けまして」


「それから毎晩。説得は試みてはいるんですけど、なんとも……」


「そうでしたか……。時間はかかると思いますが、諦めてはダメです。一緒に頑張りましょう」


「先生。ありがとうございます」


「いえ。工房さんを紹介した私にも、責任はありますからね。」

「引き続きお薬の方は出しておきます。」



「ありがとうございます」



──完──。




最後まで読んで頂き、ありがとうございました!


意味がよく分からなかった方に向けて、後書きに記しておきますね。

その上でもう一度読んでみると、改めて違和感に気付けるのかな?と思います。


[解説]

主人公の『私』はアンドロイドです。

そして、本当の『歌恋』は、すでに死んでいます。

娘である歌恋の母親は、悲しみからうつ病になっており。その現状を打開すべく、父親は医者に相談します。


※世界観的に、アンドロイドがある世界観と置いてるので、この物語の世界の人物達は、違和感なく話が進みます。

その上で、医者はアンドロイドを作成している工房の話を父親に提案し。

その案を受け入れた先の話が、この物語となります。


なので、主人公は人の心が分からず。

口調もどこかおかしいのです。

そして、夕飯時になると眠ってしまうのは、父親がアンドロイドの『私』を充電していたからです。


[小ネタ]

がんもどき

雁擬きのタイトルは、偽物を例えた食べ物を検索したら出て来たので採用しました。

小学生の娘の好物ががんもどきって、渋いなぁ。


ゆずちゃんの由来

「気を遣わない」と「果物」をかけて調べた時に、気を遣わないで育てられる果物の一覧に載っていた中で、名前にも採用されやすい名前として。「柚子」がありました。

なので、アンドロイドだとしても、家庭の事情を気にしないで話しかける子役。として採用しました。


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