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傲慢貴族はあまのじゃく。隣のあの娘を守るために、嫌われ役を演じます。  作者: 古晴


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第二話 隣のあの娘が気になって

 出会った日からシリウスは、メリッサの心をどうにか崩したかった。崩したうえで、手を差し伸べて、自分との格の違いを見せつけたかった。


 しかし、メリッサはしたたかな少女だった。頭脳明晰で、自信に満ちて、毅然とした姿勢を持つ平民であった。荒探しをしたくとも、彼女はその隙が全く無い。


 隣で鷹の羽ペンをノートに走らせる彼女は、貧しいながらも、身なりもきちんと整えており、ほのかにカモミールの良い香りがした。


 黒板を真剣なまなざしで見つめる姿は、凛として、それでいて可憐だ。ノートをひたすら書き写す姿をちらりと見ると、伏目がちなまつ毛がとても繊細で美しい。ふいに髪を耳にかける仕草や、人差し指を顎に当て思案している姿に胸がときめいた。


(いやいや、何見とれているんだ俺。メリッサに格の違いを見せつけるんだろ)


「この数式は、こういう風に解いた方が早い」

 

 シリウスは、メリッサのノートを横から取ると、魔インクにつけた羽ペンを走らせた。


「……ありがとう。でもあなたが答えを教えたら、私の考える力がつかなくなるでしょ」


「お前が、あまりにも長く考えているから時間の無駄だと思ったんだよ」


(ほら、そこでシリウスすごいねって言うんだ)


「へぇ~。()()()()()ね……。この時間は私だけが考える時間なの。余計なことをしないでちょうだい」


 メリッサの牙城は、そう簡単には崩れなかった。


――地理学の時間でも……


「我がバーモント王国は六つの領地と1つの大公領で成り立っていますが、我が国には、世界三大瀑布と言われている有名な滝が一つあります。どこの領にあるか知っていますか?う~ん、メリッサさん。答えてみて」


「はい、先生」

メリッサは、起立をした。


「スコティシア領の南方にあるフォレスナ森林地帯には、ガンガーラの大滝があります。世界のトップを誇る水量と高さは120メートルもあります」


(ふむ。相変わらず、優等生な回答だ。……よし!)


 シリウスは、挙手をした。


「先生、補足をつけたいのですが、よろしいでしょうか?」

「ええ、どうぞ」


 シリウスは起立をすると説明を始めた。


「カンタルス山脈の中腹にあるエンジェルスホールと呼ばれる超巨大湖があるのですが、そこを源流としているのがウィルソン川です。『バーモントの背骨』とも言われ、この国を南北縦断するほどの長くて大きな川です。ウィルソン川は他にもミネスト川やガルガリー川はじめ、大小十数の支流と合流し、下流になるにつれ、川幅が大きくなります。やがてその川は、南方の森林湿地帯であるガンガーラ滝へと流れ着くのです。ガンガーラの滝が圧倒的な水量を誇る理由がお分かりになりましたでしょうか?」



 シリウスの補足の回答に地理学の先生は感動したのか、教室は割れんばかりの拍手が起った。貴族令嬢共が「シリウス様。素敵」などと言っている。


 どうだと言わんばかりにメリッサをちらりと見たが、ふくれっ面をしてジト目で見返してきた。


「川のことも聞かれたら、私だってちゃんと答えられたわ!!」



(う~む。格を違いを見せつけるには、まだまだ時間がかかるのか……)


 シリウスはメリッサを知るために、行動範囲を調べることにした。思いついたのが追跡魔法だ。しかしなかなか追跡魔法をつけるタイミングが難しかったので、魔法理論学の実演授業でこっそりとつけることにする。


 手のひらに、小さな氷の礫を作り出すと、氷に魔法円を小さく描き、それをメリッサの背中にぶつけてみた。


(狙い通りに……いった!!)


 メリッサは、背中を擦りながら、落ちてる氷を見つけると、舌を鳴らして、こっちを睨んだ。


(知らんぷり、知らんぷりだ)


 ロイドはシリウスが氷の礫を投げつけたのを見てたので、ニヤニヤと笑ってはいるが、追跡魔法をつけていることは何も知らない。


(さて、これで1週間はアイツの動きを追跡魔法で確認できるぞ)


 シリウスは追跡魔法で、メリッサの足取りを追ってみる。


 お昼の休憩時間。さっそく追跡魔法の光の道しるべに沿って歩いていると、早速メリッサを見つけた。


 メリッサは、食堂でローストサンドを買っている途中だった。それから後をつけてみると、本舎から離れた鬱蒼とした東屋で1人でご飯を食べていた。アイツ、友達がいないらしい。


(俺が友達1号になるのもありだな)


 東屋にどこからかミケの野良猫が現れた。

 

 ミケの野良猫は、メリッサを警戒しながらじっと見つめている。ローストサンドが目当てだろう。


 メリッサが何か呟くと、笹の葉らしいものが空間から現れた。


(あいつ、植物系の魔法が使えるのか……)


 笹の葉にローストサンドを少し分けると、ゆっくりとミケのほうへ飛ばしていった。おなかが空いていたのか、物凄い勢いでそれを食べはじめる。


「ふふっ、美味しい?良かったね〜」


 メリッサのふんわりとした優しい笑顔を見ると、胸の奥がキュンとときめいた。


(クソッ、なんて可愛らしい顔をするんだ!俺にも今みたいな表情を見せてくれたらいいのに!)


  ❇❇❇❇


 その日の放課後。メリッサは、図書館へ行くと今日の復習でもやるのか、閉館時間まで勉強をしていた。


 ただ、今日メリッサをつけたことで、気になることが一つ。毎回、何人かの令嬢たちに絡まれたり、嫌味を言われている。別にアイツは人と関わらないようにしてるし、平民だが、礼儀正しい。何か問題を起こしているわけでもない。


 特に気になったのが、図書館で見たあの三人の令嬢だ。メリッサに対して、強気に何か言い放っていたようだが……。

 

 (一体どんな会話をしたんだ?気になるな……)


シリウスは、この三人の令嬢に事情を聞いてみることにした。



読んでいただき有難うございます!

第三話は、21時40分に投稿します。

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― 新着の感想 ―
何で優しくしようと言う選択肢がないんだよー。 ちょっと歪んでませんか?シリウスさん。 しかし、そんなオラオラ系男子の たまに見せる弱い一面がっ。 古晴様には、刺さる冨田!! ( ・∇・)お前、俺の…
考える時間は大切ですよね。メリッサの方が正しいですけど、シリウスにまだ正論を受け止める度量は無さそう。 (´ε`) うはっ! やってることがストーカーになり始めたよ! (´⊙ω⊙`)! 猫が可愛い…
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