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【間もなく15000PV!ありがとうございます!】破滅の夜に溺れた悪役令嬢は、母になっても溺愛されます!  作者: 愛龍


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鐘の音が、天へと昇る。

純白の光が差し込む神殿の祭壇。

花々が静かに風に揺れる。


その中央に―

白いヴェールをまとった花嫁、アイリス・ブルーヴァルド。

深い青の礼服に身を包んだ、ランティス・ブルーヴァルド。


二人の姿はまるで“聖なる絵画”のようで、

集まった人々の視線をすべて奪っていた。


神官が祈りの言葉を唱える。

空気が神聖な静けさに満たされる中―

ランティスはゆっくりとアイリスの手を取り、

その瞳をまっすぐに見つめた。


「……永遠に、君を愛す。」


唇が触れ合う。


その瞬間――


光が弾けた。


眩い白光が神殿全体を包み、

祭壇の上で聖印がスパークする。

参列者たちがざわめき、

風が渦を巻いた。


「な……何だ!?」


ランティスがアイリスを抱き寄せる。

彼女のドレスが光に揺れ、

まるで空気がひとつの境界を超えたようだった。


そして―光の中心に、“少女”が立っていた。


金の髪。

白磁のような肌。

淡い空色の瞳。


神殿の扉も開かぬまま、

まるで“空間から生まれ落ちた”かのように現れた異界の乙女。


「……マリア。」


アイリスの胸が強く跳ねる。

(この光景……知ってる。)


前世の記憶―ゲームの続編。


ランティスと聖女リンカが結ばれなかった場合、

第二の異世界の乙女“マリア”が現れランティスが一目惚れする。

そして、花嫁を残して乙女の手を取る物語のオープニング…………


だが――。


目の前の現実は、違った。


光に包まれながらも、

ランティスは腕の中の花嫁を離さなかった。


抱き寄せたまま、

青い瞳がマリアを見据える。


「誰か、この少女を城へ。」


その声は凛として、静かだった。

命令の響きに一切の迷いはない。


神殿の空気が再び張り詰める。

参列していた騎士団が動き出し皇太子リュオネストが前へ進む。


「……異界の来訪者か。騎士団長、保護を。」


「はっ!」


マリアは光の中で、驚いたように瞳を瞬かせた。

目の前にいる“運命の人”がなぜ自分を抱きしめないのか理解できない―そんな顔だった。


「……どうして……」

彼女の唇がかすかに震える。


だがそのとき、

別の場所で、もう一人の女が息を呑んでいた。


――聖女リンカ。


祝福の席の最後列でその光景を見ていたリンカは、

白い指をぎゅっと握りしめた。


(……嘘、でしょう……?)


ランティスがマリアを見ても動かない。

本来なら――

あの光の瞬間、ランティスは花嫁を放り出して

マリアに手を伸ばすはずだった。


その行動が“続編”の物語を開くトリガー。


だが今、彼はアイリスを抱いたまま、

“冷静に指示を出した”。


(違う……ルートが、違う……!)


リンカの頭の中で、

物語の歯車が軋む音がする。

“青の公爵”の運命が書き換わっている――


“聖女”でも“異界の乙女”でもなく、

アイリスを中心に回っている。


(そんな……そんなはず、ないのに……!)


リンカは震える指先で胸元の聖印を握った。

だが、もうその印からは光は放たれない。


神々の祝福が誰に与えられているのか――

この瞬間、

誰の目にも明らかだった。


祭壇の中央で、

アイリスとランティスは互いを抱きしめたまま。


金の光に包まれたマリアを見送る。


―物語の書き換えが、始まった。


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