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からくり紅万華鏡ー餌として売られた先で溺愛された結果、幽世の神様になりましたー  作者: 霞花怜(Ray)
第三章 瑞穂国の神々

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59.色彩の宝石の力

〇●〇●〇



 紅優の後姿を眺めていた利荔が、クスクスと笑った。


「蒼愛にあれだけ求められるんじゃぁ、紅優も魅了を全否定しないよねぇ。誰相手に魅了になろうと、蒼愛はあんな風に毎回、紅優だけを求めるんだろうから。あーぁ、笑っちゃうね」


 笑う利荔を、志那津が面白くない顔で眺めた。


「道化を演じただけの結果は得られたんだろうな」


 じっとりした志那津の視線に、利荔は何とか笑いを収めた。


「まぁね。正直、志那津様があそこまでになっちゃうとは、思わなかったよ。蒼愛を喰っている間の記憶ってあるの? 覚えてる?」

「全部、覚えてるよ。俺はこのあと、どんな顔して訓練したらいいんだ」


 頭を抱える志那津の顔は真っ赤だ。


「そうだねぇ。只の本音だったもんね。可愛い志那津様、出ちゃったね」


 まるで素直ではない主は、気持ちと真逆の態度をとってしまうのが常だ。

 本音など永遠に相手に伝わらない場合もある。


 志那津が顔を上げて、利荔の頬を摘まんだ。


「濃い霊力、美味かった?」


 利荔の言葉に、志那津が手を離した。


「美味かった。吸い始めたら止まれなかった。利荔の言う通り、あれは最早神力だ。蒼愛の価値を直に教えられた気分だったよ」

「あの魅了の術はね、まさにそれが真意だよ」

 

 利荔の言葉に、志那津が顔を上げる。


「ほんのちょっと舐めた程度じゃ気付けない。その程度の接し方しかしない相手には、真価を教える必要はないんだ。深く関わる相手にだけ、本当の価値を教える。だから多く吸わせる。捕食を阻害したいなら真逆の術にすべきだけど、あれは喰わせて蒼愛の価値を知らしめるための術だ」


 志那津の顔が驚きとも取れない色に変わった。


「加えて、相手に蒼愛を好かせる。深く関わり真価を知らせたい相手には好かれておいた方が得だからね。色彩の宝石としての質と考えて間違いない」


 志那津の顔が小さく俯いた。


「けど、俺は。霊力を吸う前から蒼愛を……。多少、見込みのある人間だとは思っていたけどな」


 志那津が御披露目の時点で蒼愛を好いて認めていたのは、話を聞いてすぐにわかった。

 素直じゃない志那津の言葉を拾って気持ちを汲み上げられるのは、きっと利荔くらいなものだ。

 利荔は志那津の頭を撫でた。


「そうだねぇ。蒼愛には魅了なんか、必要ないだろうね」


 そんな術がなくても、蒼愛はきっと万人に好かれる。

 そういう雰囲気を持っている。


「紅優に聞いたんだけどね、蒼愛はさ。どんな術を使えて、どれくらい霊力を消費するとか、自分の能力をある程度把握できていたんだって。けど、魅了だけは、把握できていなかった。今でもよくわかってない。あの術、蒼愛には不似合いだよね」


 利荔の手を振り解いた志那津が目を上げた。


「何が言いたい?」

「んー? 色彩の宝石としての質について、恐らく蒼愛は無自覚なんだ。他にも眠っている力があるのかもしれない。石の方の宝石が、総ての力を確認できていなかったように、蒼愛という宝石も、未確認の部分が多い。今後もそういう力が現れる可能性はあるなってね」


 利荔の説明を、志那津は静かに聞いていた。


「今後、そういう力が現れたなら、俺たちが解析してやるのが一番、早いだろうな」

「そうだろうね。風ノ宮は智慧ノ宮、だからね」


 考える顔をしていた志那津が顔を上げた。


「俺たちは蒼愛たちの味方をする。アイツはきっと理を間違えない。神々は色彩の宝石を守るために存在する」


 決意した顔の志那津に、傅いてみせた。


「風ノ神、志那津様がご決断されたのでしたら、従うまでですよ。俺は貴方の、一ノ側仕ですからね」


 蒼愛が可愛くて好きだから、友達になりたいから、力になってやりたい。そう素直に言わない主の胸の内は、利荔の心の中にだけ留めておいてあげようと思った。

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