表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
からくり紅万華鏡ー餌として売られた先で溺愛された結果、幽世の神様になりましたー  作者: 霞花怜(Ray)
第三章 瑞穂国の神々

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/166

37.閨の睦言

【R18】部分割愛。

アルファポリス、fujossy、エブリスタに掲載しています。

 気が付いたら、紅優の腕の中で寝ていた。

 着物を着ていなくて、体中が愛された後の充足感で満たされていた。


(僕、紅優に抱いてもらったんだ。良かった)


 どうして良かったのか、よく思い出せない。

 確か、淤加美に加護を付与してもらって、その後の記憶が曖昧だ。

 曖昧ながら、感覚は覚えていた。


(神力がいっぱい流れてきて、霊元からいつもより沢山霊力が溢れて、全身が甘く薫っているのが、自分でもわかるくらいだった)


 淤加美の様子も、いつもと違った。

 まるで蒼愛の霊力に酔っているかのように、蒼愛を求めていたと思う。


(あれはきっと、色彩の宝石の力だ。神様や妖怪を甘く薫る美味しそうな霊力で惑わすんだ。そんな力、何の役に立つんだろう)


 霊元が開いてからの蒼愛には、自分の能力を感覚で感じ取る力があった。

 自分の中に四つの属性があることも、それぞれの力をどう使えるのかも、蒼愛には感覚で何となくわかった。


 だから、感じる。

 霊力で相手を惑わすこの力は、きっと使わない方がいい。

 良い結果を生まない。

 これは、蒼愛の直感だった。


(でも、どうしてそうなっちゃうのか、わからない。自分でどうしようもないし、自分も飲まれちゃうのかもしれない)


 覚えていないというのは、きっとそういう事なんだろう。


(もしかしたら僕は、無意識で紅優を悲しませるような行為をしちゃうのかもしれない)


 そう思ったら涙が出てきた。


「……蒼愛、目が覚めたの? 泣いてる? もしかして、痛かった?」


 紅優が蒼愛の涙を拭った。


「違う、違うんだ、紅優、僕、僕……」


 言葉が上手く出てこない。

 さっきの淤加美とのやり取りを話したら、紅優は悲しむかもしれない。

 そう思うと、余計にどう話せばいいか、わからなくなった。


 紅優が蒼愛を胸に引き寄せた。


「落ち着いて、話したいコトだけ、ゆっくり話してごらん。話したくないコトは、話さなくていいから」


 蒼愛は首を振った。


「紅優に話したくないコトなんかない。全部、ちゃんと聞いてほしい。でも、話を聞いても、僕を嫌いにならないで……」

 

 あまりに自分に都合が良い言い分で、語尾が弱くなった。

 涙で潤んだ蒼愛の目を、紅優が指で拭った。


「嫌いになんか、ならないよ。大丈夫だから、蒼愛の辛さを俺に分けて。一緒に悩もう」


 優しい眼差しが蒼愛を見詰める。

 紅優はいつも、蒼愛の心に触れる努力をしてくれる。

 それが、たまらなく嬉しい。


「うん、うん……。一緒に、考えて」


 蒼愛はさっきの淤加美との出来事と、感じ取った自分の霊力について、紅優に話した。

 初め、険しい顔をしていた紅優だったが、徐々に心配するような表情に変わっていった。

 一通り話し終えた時の紅優は、やっぱり心配顔をしていたが、少しだけ安堵しているようにも見えた。


「蒼愛のその解釈は、きっと正しい。恐らく、それは魅了という力だよ。まさか神様まで魅了してしまうだなんて、驚きだけどね」


 紅優が困った息を吐いている。


「魅了? 淫魔とかが使う妖術?」


 理研に置いてあった妖怪の本の、西洋の妖怪の欄に、インキュバスとかサキュバスの項目があった。そこに書いてあった気がする。


「そうだね。性を糧にして生きる妖怪や人を喰う妖怪が良く使う術だよ。俺が、買った子たちに使っていたのも、魅了の妖術。相手が無条件に俺を好きになって、俺の言葉を疑わないように術をかけるの」


 ニコや芯の様子が思い浮かんだ。

 紅優が言う通り、相手を大好きで疑わない、そんな自分に疑問も持たない。そういう妖術だった。


「蒼愛の場合は、色彩の宝石の質の一部だと思うんだ。自分の意志とは関係なく、神様や妖怪を惹き付けてしまうんだよ。より多くの加護や力を得るためにね」


 蒼愛は絶句した。


「じゃぁ僕は、色んな相手を誘っちゃうの? そんなの嫌だ。僕が欲しいのは紅優だけなのに」


 紅優に、ぴたりとくっ付く。


「うん、知ってる。さっきも、淤加美様に誘われた蒼愛が呼んだ名前は俺だけだったって、言われたよ」

「本当……?」


 見上げると、紅優が微笑んで頷いてくれた。


「嬉しかった。淤加美様に無駄に口付けられたのは、嫌だったけど。それでも蒼愛が求めてくれたのが俺で、嬉しかったよ」


 紅優が蒼愛の髪に口付けてくれる。

 胸が甘く締まって、嬉しい。


「なるべく一人にならないで、一緒にいよう。何をきっかけに蒼愛の魅了が出てしまうのか、まずは探そう。何があっても俺は蒼愛の気持ちを知ってる。変わらずに愛しているから、心配しなくていいよ」


 蒼愛は紅優を見上げた。

 紅優はいつだって、蒼愛の気持ちを読んで蒼愛が欲しい言葉をくれる。


「僕も、紅優と同じくらいの愛を紅優にあげたい。紅優がしてくれるみたいに紅優を愛したい。紅優、大好きだよ」


 紅優が嬉しそうに笑んだ。


「知ってる。蒼愛は正直だから、全部ちゃんと伝わってる。心を伝えるのは言葉だけじゃないよ。蒼愛の全身から、ちゃんと愛を感じてるし、大好きをたくさんもらってるよ」


 まだ紅優と番になる前に、好きをたくさん集めようと約束した。

 もっともっと、紅優への好きを集めたい。大好きを増やしたい。そう思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ