登場人物紹介③
書き終わってしまいました、からくり紅万華鏡……。
思い入れの深い作品だけに、ちょっと残念です。
読者の皆様に楽しんでいただけたら、嬉しく思います。
最終章にも関わらず、新キャラが多いので、幾つかに分けながらご紹介します。
最後なので長めの解説とあとがきを添えて。
まずはお馴染みのキャラから。
【瑞穂ノ神・:結彩ノ神 一ノ側仕 :白狼 :真白】
前章で性格描写をしっかり描けなかった分、真白らしさをいっぱい出そうと頑張りました。基本は何事にもフラットな感性で素直に気持ちを言葉にするタイプ。現世が長かったので瑞穂国の内情をあまり知らない。その辺りは蒼愛と感覚が近いかな。山の中に住んでいた真白は現世の事情にも疎いけど、テレビとかは兼太やマタギの爺さんと観てたからね。むしろ蒼愛の方が現世の事情を知らない。
残念ながらニホンオオカミは絶滅していますが、武蔵(秩父)の山には、今でも狼を:大神と称して「:真口:大神」と崇める信仰が残っています。
理研から逃げてきた兼太を看取ってから仲間を追いかけ瑞穂国にやってきた真白は、現世での最後の真口大神でした。兼太は霊元を持っていたblunderで、体にうまく霊能が馴染まずに、20歳くらいで亡くなりました。理研で生まれたbugの子たちの多くは20歳まで生きません。体内に霊元があったから兼太は20歳まで生きられました。
マタギのお爺さんと兼太と真白で生きていた頃から、真白は時々人の姿になって三人でご飯食べたりしてました。お爺さんが焼いてくれる固焼きせんべいを兼太と一緒に食べるのが好きでした。意識していないけど、真白は兼太と蒼愛を重ねていたりもするのかなと思います。
作中の半分くらい狼姿の真白ですが、狼の真白と一緒にいる蒼愛の方が自然な感じで書きやすかった。きっと現世で狼姿が多かったからなんでしょう。あとは、蒼愛が大きな犬(狼だけど)と一緒にいるシーンを書きたかった。4の冒頭で坂を転がる遊びをしてるのは、作者が蒼愛に「きゃー!」って言わせたかったからです。子供ってああいうシンプルな遊び好きだよねって思って。蒼愛は15歳で見た目は17歳くらいの子だけど、中身はまだ子供かなと思う。付き合ってあげる真白は優しいし、真白も楽しい。
【土ノ神::伽耶乃】
千年以上、野椎の姿で過ごしていた伽耶乃様がやっと神様の姿を取り戻しました。おっとりしたお嬢様風でありながら、芯のあるお姉さまになってくれました。
実は土ノ神に関しては大気津様で固定するつもりで最初はプロット組んでました。物語の展開を変更したときに、「神様一人死んでてくれてた方がいいな(酷い)」と思って、土ノ神の事情がこうなりました。で、はんなりおっとり怖いお姉さま仕様だった大気津様の性格を改変して伽耶乃に当てました。大気津様はもっとヴィランズっぽくしようと思ったけど、結局はその辺によくいる成金マダムみたいな性格になりましたね。それなりに気に入っています。土に溶けてからの大気津は真理を理解する物分かりの良い神様になってくれました。死んでみないとわかんないタイプの神様だったんでしょう。
伽耶乃は日美子とは違う感じに大局を見極めて、自分が声を上げる場所をわきまえている神様なので、聡明ですね。幽世が望んだ土ノ神は、今後も紅優と蒼愛を支えてくれると思います。
須芹が大好きな伽耶乃様って、ちょっと面倒な拗らせてる性格の子が好きなんだろうなって思う。だからエナを引き取ってもらいました。
ちなみに伽耶乃に呪詛を掛けたのは闇人名無です。元々、自分の意志で野椎に変化できる伽耶乃様が、待ち合わせしている須勢理を驚かせようと野椎の姿で隠れていた時に呪詛を掛けられて気を失ってしまい。野椎が落ちてるなと見付けて抱き上げた羽々(八俣)を須勢理が発見し、「八俣が呪詛をかけたんだ!」って思い込んで野椎姿の伽耶乃を羽々からむしり取って逃げた、みたいなのが真相です。
【災厄の神・再生の神:エナ】
本作のダークマター、総ての元凶のエナ様です。エナは、水蛭子の次に生まれた不具の子・淡島がモデルです。:胞衣は胎盤の意味です。伊弉諾と伊弉冉が島産みした時に最初に生まれた島で、オノゴロ島の前に生まれた島です。水蛭子ほど不具の子扱いはされておらず、小島としてオノゴロ島の近くにあったらしいので、小豆島じゃないかという説もありますね。命の源になる大地。だから、この物語でのエナの属性は土ノ神です。
きっと受け入れてくれるって思っていた兄弟に、会った途端に魂を引き千切られたら怯えもするよね。元々、臆病な性格のエナが勇気を出してヒルを追いかけたのに拒絶され(たと思い込み)、偶然会ったクイナの親切に安息を得たのに勝手に先に死んじゃって、心が痛くなるのはもう嫌だと思って本当の自分を内側に避難させた。心の防衛反応ですが、その為に陰でコソコソやってた悪い所業は、ある意味でかまってちゃんかな。誰かに愛されるためには、まず出会って仲を深めて信頼関係作らないといけないからね。そういうの、エナは苦手そう。
そんなエナが、ヒルとクイナに次いで、やっと見つけた蒼愛という宿木は救いのように感じたでしょうね。蒼愛が自分を拒否らないように準備していた呪詛は小碓が蒼愛に使いましたけどね。
蒼愛を口説いている時の独りよがりなエナは気に入っています。もっとわけわかんねぇヤンデレにしたかったけど、ヤンデレって過ぎると話が進まなくなるって実感して、ソコソコにしました。自分にしかわからない理屈で話すから、まずもって会話にならないんだけど、蒼愛も紅優もわかんないなりに理解しようと頑張っちゃうタイプだから、シーンが進まなくなった。紅優を殺されて色彩の宝石の力MAX蒼愛を目の前にしたエナは「絶対勝てない」と感じ取って腰を抜かしてしまいました。そこからは怯えモードでしたね。
本気で怒った蒼愛を書きたかったからエナに紅優を殺してもらったんだけど、そんなにひどい怒り方はしませんでしたね。途中で紅優が生きてるって蒼愛が気が付いたからって裏設定もあるんだけど。十束剣が羽々なのも、蒼愛は知っていたから、死ぬわけないって思っていたけど、紅優が死んでるっぽい画面に耐えられず怒り心頭した感じでしょうか。十束剣に関しては、須芹を助けるシーンから蒼愛が持っていますよね。エナに「似合わない」と言われたように読者さんに違和感もって欲しくて蒼愛に使ってもらいました。「あの剣、なんかありそう」って思ってもらえてたら嬉しい。
一番最初に時の回廊から聞こえた声、あの時点でエナでした。種もエナだし、水ノ宮で闇に堕として攫おうとしたのもエナだし、夢の中まで追いかけてきたのもエナだし、時の回廊で会った八俣もエナだった。ヒルの振りして声掛けたり、ヒルに混ざって声掛けたりしてました。エナは三か月前の白狼の里で蒼愛を見付けてから、ずっと見ていました。現世にまで確認に行ってるからね。だから、蒼が紅の元に買われた瞬間から見ていたんですね。それを念頭に物語を冒頭から思い返していただくと、おっかねぇなって感じると思います。
ヤンデレエナも、臆病で怯えているエナも可愛いです。作者はヤンデレやメンヘラを書くのが好きです。
【災厄の神・破壊神:ヒル / 日の神子::日照】
言うまでもなく伊弉冉と伊弉諾の神産みで最初に生まれた不具の子・水蛭子がモデルです。:水蛭子は実は:日照子で日の神だったのではないかという説を唱えている学者さんがいて、その解釈が好きなので使わせていただきました。神話だと不具の子は葦舟に乗せて流しますが、水蛭子は日本各地で恵比須様やらマレビト神やらになってたりして、流れ着いた先でちゃんと神様になってるパターン多いです。出来損ないだから捨てたというより、一人前の神様になってほしいと願いを込めて葦の舟に包んで流して成長を促したのかな、と考えたり。そうであって欲しいと思う。だから、幽世にはそんな風に話してもらいました。
触れたものを総て壊してしまうヒルはメンタルも幼く大胆で素直。色彩の宝石をもらったり名前をもらったり加護をもらったりしながら成長していく感じが、書いてても可愛いなと思いました。結果的にお姉ちゃんな感じで育ってくれましたね。蒼愛が早い段階で色彩の宝石を与えられた経緯と、何より拾ってくれたのが羽々だったのが、ヒルにとっては一番の幸運だったと思う。
女の子にするつもりはなかったけど、日の神は女神がいいな。あとは、羽々と番うなら女の子かなと思って、設定を足しました。日照が羽々と番になっちゃったら、エナは悲しむかな。ちょっと心配ですが、祝福できるエナになれると思います。伽耶乃の元ではんなりスパルタに育てられているエナは、本当に欲しい愛を見付けられるんじゃないかなって思う。それぞれに番を見付けて、それぞれの幸せを確認し合う。日照とエナにはそんな関係でいてほしいと思います。
大蛇の領土で羽々と日照、ピピが仲良くNYANCHOCOTTのスイーツを堪能する姿はほっこりします。それぞれが幸せな形で新しい段階に進めるといいなと思います。
【大蛇の一族の長:(:八俣):羽々(はば)】
羽々さんの性格や立ち位置は、実は最後まで悩みました。大蛇は全員、それなりに癖の強い性格にしようと思っていましたが、その親玉なのでね。結果、スイーツ好きのおじさんになりました。野々が「ちょっと変わってるけど良い長」と言っていた感じですね。あんな感じだけど、誰とでも仲良くなれちゃう性格だと思う。どちゃくそ強いのに力で相手をねじ伏せない優しさも、大蛇っぽくない意外性ですかね。対エナでも対小碓でも蒼愛たちは羽々さんにかなり助けられました。作者的にかなりお気に入ってます。
対小碓で、蒼愛VS紅優、真白、井光の三人が戦っている時、羽々も紅優たちに攻撃する振りをして皆に瑞穂玉を与えていました。紅優が小碓の結界の内側に入ってから、後ろの方でこっそり井光と真白の治療をしていた。だから紅優が神力MAXで放出した瞬間に井光と真白は結界を張れました。
名前の通り、元ネタはヤマタノオロチなので、須芹の父である根の国の神スサノオに現世で退治されてて、因縁はあります。気にしているのは須芹の方だけで、羽々は「そんなこともあった」程度にしか考えていない。妖怪は人より後悔とかしないので。後悔って、脳の前頭葉や感情野の発達した人間独特の感情であり感覚だと思います。自然界の生き物は、後悔より学習、失敗は次に活かす。うじうじ後悔とかしてたら狩られて死んじゃうから。妖怪の感情や感性は自然界の獣に近いかなと思います。言葉を話して感情もあるけど、人間とは発達の方向性が違うんだろうと思います。神様は人間の御先祖様だから、きっと人間と同じ感性なのでしょう。
ちなみに日本書紀だと「羽々=大蛇」の意味です。
【:燕見・:飛燕:ピピ】
蒼愛の頭に鳥を乗せたかった。小さな鳥キャラを出した理由はそれだけです。鳳凰(陽菜)と八咫烏(世流)じゃ、でかくて頭に乗せらんないからね。だけど、作者の意に反して重要キャラに育ってくれました。長く書いてるとこういうのが面白い。
臆病なのに好奇心旺盛で、怯えてても寝ると忘れる、というか慣れる。可愛いと言われたくないけど、めっちゃ可愛い雄。ちょっとびっくりな相手と自然と仲良くなれてしまうのは、幸運を運ぶ燕ならではかなと思います。
真白と番になったら天上に住むだろうけど、大蛇の領土に遊びに行って、羽々と日照を見守るんだろうと思います。番になった後の漢字の名前も考えてあるんだけど、出せなかった。どこかで書きたい。
燕見や飛燕という妖怪は作者の創作です。だから蒼愛が理研で読んでいた妖怪図鑑には載ってない。
まだまだ紹介が終わらないので、続きは次に。




