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黒翼の冒険者  作者: さい
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黒翼の冒険者

 夜の静けさを切り裂く咆哮が響き渡る。

 小さな村が魔獣の襲撃を受けていた。

 家々は炎に包まれ、村人たちは必死に逃げ惑う。

 村の中央には、巨大な狼型の魔獣が立ちはだかり、その爪は血に染まっている。


「誰か助けてええええ──ッ!!」


 幼い少年の叫び声がかき消される中、村の人々が次々と倒れていく。

 希望は完全に断たれたかに見えた。


 突然、空から黒い影が降り立つ。

 その影は、黒いマントをなびかせた青年だった。

 背中には漆黒の翼が広がり、彼の目は鋭く魔獣を見据えている。


「逃げられるやつ早く逃げろ。あとは俺がやる」


 それだけ告げると、彼は魔獣に向かって歩き出した。



 エルナンはマントを投げ捨てて、静かに手袋を外す。

 そこから現れたのは人間離れした獣の手だった。

 村人たちはそれを見て後ずさるが、エルナンは気にも留めず魔獣に向かって叫ぶ。


「お前の相手は俺だ!!」


 魔獣は低い唸り声を上げ、エルナンに飛びかかる。

 しかし、エルナンはその攻撃を紙一重でかわし、獣の手を振りかざして魔獣の腹に強烈な一撃を叩き込む。


「そんなもんかよ狼さん──ッ!!」


 エルナンの背中から黒い翼が広がり、周囲の空気が震える。

 その姿に、村人たちは驚きと恐怖で息を呑む。


「獣の手に漆黒の翼……もしや、お前があの……黒翼(こくよく)の冒険者なのか!?」


 村人たちがエルナンを見てざわめき出した。


 エルナンは翼を使って一気に上空に舞い上がり、急降下して魔獣に追撃を仕掛ける。

 魔獣は怒り狂い、口から黒い炎を吐き出すが、エルナンはその攻撃を受け流し、鋭い一撃を繰り出した。

 魔獣の咆哮が一瞬止まり、巨大な体が地面に崩れ落ちた。



 戦いが終わり、村には静寂が戻った。

 しかし、村人たちはエルナンに近づこうとはしない。

 彼の力を目の当たりにし、その異形の姿に恐怖を覚えていたのだ。


「助けてくれて……ありがとう」


 震える声でそう言ったのは村の長老だった。

 エルナンは彼を一瞥すると、無表情で手袋を嵌め直した。


「俺はただ依頼をこなしただけだ」


 エルナンはそう答え、村の中心に放置されていた魔獣の死骸に視線を移す。


「報酬はあとで受け取る。次に同じことが起きないように備えておけ」




 夜、村を後にしたエルナンは森の中で焚火を囲んで座っていた。

 彼の目は炎を見つめていたが、その表情は虚無的だった。


『よくやったな、エル』


 頭の中に響く声。

 それはエルナンと融合した魔獣、ザグラのものだった。


『腹が減ったぞ、エル』


 エルナンは無言で焚火に薪をくべる。

 ザグラは嘲笑混じりに続けた。


『あいつら、お前を見て怯えてたな。結局、お前を待っているのは感謝じゃない。ただの恐れだ。奴らにとってお前は魔獣と同じだよ』


「んなことはどうでもいい」


 エルナンは低い声で答えた。


「俺の仕事は魔獣を倒すこと。それ以上でもそれ以下でもない。()()()をぶち殺すまでは!!」


『そうか。だが、それで本当に満足なのか?』


 ザグラの声が消え、再び静寂が訪れる。


「……大満足だよ」


 エルナンは小さく息を吐き、地図を広げる。

 次の目的地を確認すると、焚火を消し、眠りについた。



 ルシブァ……俺は絶対にお前を殺す。

 あらゆる願いを叶える奇跡の石──『オムニストーン』を使って……。

 俺たちの里を燃やしやがって……絶対に殺す。

 絶対にだ!!


 

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