1話 出会いはいつだって突然に!
天気は快晴。小鳥がさえずる音が聞こえる。今日はとても気持ちの良い朝だ。
4月のぽかぽかする気温の中、窓の外では桜の花が舞い散る。 俺は窓際の一番後ろの席に座りながら、校庭で体育の授業をしている生徒を眺めながら黄昏れていた。
──春、それは出会いと別れの季節。
卒業式では、皆で写真を撮る者どももいれば、制服のブレザーを「せーのっ!」のかけ声と共に大きくはためかせながら青春最後の思い出を作るやつもいて、中には一人寂しく、「あほくさ、卒業式で何やってるんだよ」なんて腐しておいて、本当は仲間に入れてほしいツンデレなやつもいる。 そうして別れの卒業式が終わって、春休みが過ぎ去って、今度は入学式、新学期、新たなる出会い──だ。
「正直気持ちは分からなくもない。俺もそっち側の人間だったからな。 ……まてよ? そっちってどっちのことだ?」
おっと、紹介が遅れたな。俺の名前は、宮下 俊。……天ノ川高校2年帰宅部だ。 彼女──なし。気になる異性──これも、いない。友達はもちろん0人だ! 無論、いないのではない。 作らないだけだ。 それは何故か? 答えは──エコだからだ。 友達がいるとやり取りが増える。ひとたび休日に遊ぶ約束なんかしてしまえば、体力も使う。お金を使うこともあるかもしれない。 どうだ、とてもエコだろ?エコすぎて環境のお偉いさんとかが友達を紹介してくれるようなレベルだな。
と、まぁそういうことなので、決して勘違いしないように。 とはいえ、これまでいじめも無く平穏な学生生活を送らせてもらっていたが、さすがになんの刺激もない毎日には飽きてきた。
一体どうしたものやら。考えこんでいると不意にスマートフォンのはいったブレザーのポケットがブルブルと震えた。
誰だ。 俺は恐る恐るスマホを取り出す。
「おかしい、俺のスマホに入っている連絡先は父・母・妹の3人以外誰も居ないはず、ましてやこの時間帯は両親共々働いているからまずない。妹が俺に連絡してくると言うと大体「コンビニでプリン買ってきてバカお兄っ!」としかない。それも夕方、つまり放課後の時間帯だ。だが今は11時、午前中の時間帯だ。だとすると考えられるのは一つ、迷惑メールとしか考えられない。それもだ、俺が最近機種を買い替えたばかりの最新型「陰フォン」にだぞ?どんなウイルスも受け付けないめちゃスペックの高いあの「陰フォン」だぞ!?許せん、せっかく人がごくまれにくる貴重な自習時間をのほほ~んと満喫していたと言うのに!」と不安と怒りがふつふつとこみあげてくる中スマホの画面を見るとそこには母からの一通のメールが届いていた。
「母さん?」
俺は少しほっとしたと同時にクラスの何人かがスマホをいじっているどさくさに紛れて内容を確認すると、そこにはこう書かれてあった。
「俊へ、お母さんとお父さんしばらくの間仕事の関係で家に帰ってこれなくなりそうなの。
そういうことだから今日の夕方頃、家にあなたたち向けにプレゼントを贈ったわ!きっと喜ぶわよ!
楽しみにしてなさい、母より」
「・・・は?」
一瞬俺はあまりの急な出来事に理解が追いつけなかったのだ。
だが両親が普段仕事が忙しいのは知っているし、家に帰って来れないことも今までも多々ある。
とは言っても1日2日程度のことであって「しばらく」などは生まれて初めてのことだ。しばらくは一体いつまでのことを言っているのやら。
ため息を吐くと同時に授業終了のチャイムが鳴る。
「もうこんな時間か」
時刻は12時お昼の時間となった。
「俊〜!」
後ろから俺の名前を呼ぶ可愛い甲高い声がする。
振り向くとそこにいたのは俺の幼馴染
「玉川 結衣」がいた。俺の唯一のマイフレンドだ
偶然同じ高校、同じクラスになった俺達は昼飯たまに食べ帰りもたまに一緒と言った仲。
一応言っとくが恋愛対象としては無い。けれどこいつといると一つ困ることがある。それは…
「また俊のやつ玉川さんと昼飯食べてるぞ!」
「妬ましい、呪ってやる!」
そう、この玉川さんは結構クラスいや、学校の中でも美人と言われモテモテなのである。
それもあってかこいつと一緒にいると周りの視線が一気に集中砲火してしまう。
全く困っちゃうね、モテるやつと一緒にいるとこっちまでモテちまうんなんてね、俺もとうとうモテ期到来かな?
「またなんか一人で妄想しながら考え事してるの?」
結衣はそう俺に問いかけながら隣の空いてる席に座る。
「別に、お前には関係ないだろ?つーか何しに来たんだよ?」
険悪そうに言うと、
「何ってお弁当持って来てあげたんじゃない!」
「弁当?」
「そう、どうせ今日も購買で買うつもりだったんでしょ?ただえさえお小遣いが少ないっていうのにこんなことで毎日使ってたらなくなるでしょ?」
「お前は俺のお母さんか!」
「良いからほら!」
結衣はそう言って俺に弁当を無理やり渡すと、席を立ち教室を出て行った。
両親共々毎晩仕事の影響で遅くなることが多かったため俺と妹は結衣の家にお邪魔してよく夕飯をご馳走になっていた。
最近玉川家では結衣が食事を作ることが多くなりそのついでに俺の分まで作ってくれていると言うわけである。
正直毎回クラスの目線はとても気になるがこの弁当はとても美味しく有難く思う。
「正に美味しー闇、感謝感謝☆彡」なんつって!
時刻は夕方16時放課後の時間である。
この時間帯になると速攻で教室をでて家に帰る者もいれば部活に向かう者もいれば、
「この後どうする~?カラオケ行く?」と何処に遊びに行くかを相談する者など様々な人たちがいる。
正直この雰囲気は嫌いでは無い。
何故ならこの後は俺に待っているのは自由!
何にも縛られることは無く、このまま家に帰り好きな物を食べて、飲み、アニメやゲームをする!
あー、なんて極楽!正に幸せとはこのことである!
そんな幸せに浸っていると、またもや後ろから聞き覚えのある声がする。
「俊~~!」
「また結衣か...」と分かり振り向いた瞬間、
ドンッ!と思いっきり手に持っているスクールバッグが俺の顔面にダイレクトアタックした。
「あ、ごめん。」と申し訳なさそうに謝る結衣であった。
「挨拶が大げさにも程があるだろ!」
「ごめんってば~」
全く、こいつはこれからもこの可愛さで世渡りをしていくつもりなんだろうなー。
「なんでいつも先行っちゃうの?」
「俺はお前みたいに暇じゃないんだよ」
「暇でしょ?どうせ?」
「ん!?」
「あ、図星だ!」
「別に良いだろ?暇だって!後、今日から俺の両親はしばらくの間は居ないから忙しくなるのは嘘ではない!」
「え!?おばさんとおじさん居ないの!?」
「そうらしい、仕事で忙しくてどうとかーって言ってたな。なんせ俺も今日知ったばかりだからまだ詳しい事情は分からん」
「へぇーそうだったんだ、じゃあ夕飯とかはあたしがお邪魔して作ることになるかな。」
と、結衣はニマニマしながら言う。
「なーにお前にやけてるんだよ、気持ち悪い」
「べ、別に。にやけてなんかないし」
結衣は少し恥ずかしそうに顔を隠しながら言う。
そうこうしている内に俺の家に着く。
「なんでお前までついて来てんだよ!」
「別に良いじゃない!あたしも暇だし、妹ちゃんにも久々に会いたかったし」
やれやれと思いながら俺は家の玄関前に近づき、ドアを開けようとしたその時であった。
家の中から異常な悲鳴がこみあげてきた。
「ぎゃ~~~~~~~~~~!!!」
それは俺の妹の悲鳴だと一瞬で分かった。
「なんだ!?」
「何!?」
俺と結衣は驚き、俺はとっさにドアを開けると妹は泣きながら俺の方へと飛びついて来た。
「お兄いいいいいい!!!!、お、お、おん」
「どうした春香!?、落ち着け、一体何があったんだ!?」
「女の子が!女の子が!」
俺達は春香の言動に驚いていると、
「おかえりなさい、俊さん!」とても綺麗な美声が俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。
それに気づき顔を前に向くとそこにいたのは俺が見たことの無い美女が片手に包丁を振り回しながらこちらに向かって来た。
「「「ぎゃ~~~~~!!!」」」
これが俺とAI美少女との長いようで短い共同生活の始まりであった。