11:三度目の《支配》
「ツァトリー様! あなた様の臣下であるヴィヴィエルア、ここに参上致しました!」
「《《ヴィル》》、いつにもましてうるさい。ボクがうるさいの嫌いだって知ってるでしょ」
「はっ、申し訳ございませんでした!」
「分かったならいい。それでネビュトス。もしかしてこいつと会ったりした?」
「あぁ、そうだな。びっくりしたよ。いきなり『ツァトリー様に何をした!』って怒られるんだもん」
するとツァトリーは申し訳なさそうな顔をして頭を下げた。
「本当にごめん……ヴィルはボクの事になると知性が猿以下にまで退化しちゃうの……ボクが愛されているばっかりに……ごめんね」
どうしてだろう。謝罪されている気が全くしないんだけど。
「まぁとにかく。こいつはツァトリーの配下なんだな?」
「ん、そうだよ。なんなら身の回りの世話もしてくれる執事兼護衛って感じだね」
「お前が不死者ならこいつも不死者って事でいいか?」
「あ、確かに」
「じゃあ、《《アレ》》しちゃっていい?」
「ん、いいよ。やっちゃって」
「え? ちょっとツァトリー様、アレってなんですか?」
「大丈夫、一瞬で終わるし痛くないから……」
「それが怖いのよぉ! ほんと? ほんとに痛くないのよね?」
怖がるヴィルの口調がなんかすごい変わった。
え、なにそれもしかして乙女? ギャップすごすぎ……しかもちょっと涙目だし。
そう思い改めて見るとヴィルは中々の美女だ。アリアが美少女に対してこっちはクールビューティーって感じ。
「――《支配》!」
「ちょっと――!」
怖がっているのは無視。さっさと支配させてもらう。
髪色はラベンダーのような色で、一部分にはツァトリーと同じ菫色のメッシュが入っている。髪型は少し長めのハーフアップで、服はスーツと軍服を混ぜたような感じ。下はツァトリーと同じく足を露出している。
そんな美しく魅力的な身体はすぐに白い光に包まれ、ツァトリーと同じように光輪がヴィルの上に現れた。そして数秒後、光が弾け飛ぶと首元にはチョーカーがあった。
「――ねぇ、今何をしたの?」
さっきまであんなに慌てた様子だったのにいきなり冷静になってる。なんでだよ?
「お前は不死者。俺は不死者の皇帝という不死者の最上級種族。だから俺はお前を支配した。理解出来たか?」
「あ、あぁ……理解できた。しかしこのみなぎる力は一体?」
「力? さぁね。ツァトリー、アリア。俺が《支配》した時こんな現象あったか?」
「ん、そうだね。あったよ。ボクはもともと強いから驚かなかったけど」
「そうですね、私もです。あの時は骨だったのに人の身体に戻った、という驚きでそれに気づけなかったですけど」
「――え、アリアって骨だったの!? 骸骨!?」
「あれ? 言ってませんでしたっけ。そうなんですよね~」
女子会が始まったのは気にせずヴィルに話しかける。
「さて、これでお前も俺の配下だ。普段はツァトリーと行動して構わない。立場的にはお前の上にツァトリー、その上に俺って感じで考えてもらえばいい。敬語は不要だ。今更だけどな」
「……そ、そうか。分かった。ありがたくそうさせてもらおう。その、マスター、と呼んでもいいか?」
うおっ……無いはずの心臓が少しドキッとした気がするぞ。
破壊力がすごい。問題ないですぅ。
「あぁ、問題ない」
「あ、ありがとう。それで、マスターは何を目的にしているのだ? そこのメイドも不死者なのだろう? 不死者ばかり集めて支配して、目的がわからないのだが……」
「あぁ、その話ね。簡単に言っちゃえばクソ女神の命令。二週間以内にこの世界を征服するのが目的だ。詳しい質問はアリアから聞いてくれ」
「あ、あぁ……分かった」
素直にうなずくヴィル。そういえば俺は質問してないな。
「なぁヴィル、一つ質問いいか?」
「え、えぇ。どうぞ」
「ヴィルはなぜこの城にいる? ツァトリーと一緒に来たのか?」
「えっと……」
どうやらとても困るような質問だったらしい。
失敗だったかな……
「妾はツァトリー様の執事をしている。家出、と言って良いかわからぬが、そのようなことになったので後から追いかけてきたのだ。だからツァトリー様と一緒に来た訳では無い」
「なるほどな。どうもありがとう」
こうして、希望の朝日が煌めく異世界生活二日目にして三人の可愛い仲間が出来たのだった。
――ってもう二日目!? まだやること色々あるって……!