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1:不死者の皇帝

皆様初めまして。ねくしあと申します。

私は普段カクヨムで投稿しています。

なのでぜひともそちらを見ていただければ幸いです。

https://kakuyomu.jp/users/Xenosx2


なろうの方の更新は遅めだったりしますので……

それに新作などもカクヨムの方が早いです。


毎日7時更新の新作です!

悪役転生です!

https://kakuyomu.jp/works/16817330668066613679

「ん……ここはどこだ……?」


 目が覚め、辺りを見渡してみる。

 そこは見渡す限り黄金の光に包まれた謎の空間だった。


 いくら見渡そうと誰もいない。自分の身体は……ある。人間とは思えぬ真っ白な身体だが。なんだか《《自分の身体じゃない》》みたいだ。――自分? 自分は誰だ?


「おはようございます。体調はどうですか?」

「あ、あぁ……。別に悪くない……」


 突然声をかけられ、反射的に返答してしまった。


 一体誰の声だ? 妙齢の女性のような声だったが……。少なくとも聞き覚えはないぞ?


「いきなりのことで困惑しているでしょう。まずは自己紹介を」


 そんな言葉が聞こえた瞬間、目の前に麗しい女性が――まるで女神のようだ――現れた。


「私はこの世界の女神、名はアザノヴァ。あなたをとある目的でこの世界に転生させました」

「転生……? どういうことだ?」

「あなたは前の世界で命を落としました。そして死の直前にあなたはこう願いました。『生きたい』、と。なので願いを叶えようと思いまして」


 そう言葉を紡ぐ女神の表情には慈愛がこもっているように感じた。

 心優しい女神様、という印象を受ける。

 その優しい笑みは見るもの全てを魅了してしまいそうだ。


「なるほど……? しかし俺にはそんな記憶はないんだが……」

「それは魂をこの世界、この場所に呼ぶ際、ほとんどの記憶が消えてしまうからなのです。そういうものだと思ってください」


 何か自分について思い出そうとするが、何も思い浮かばない。

 ただ目が覚めてからの事しか記憶にはないようだった。

 

 関係のないさまざまな事ならば覚えているのに、自分の事だけ思い出せないその感覚は、いささか奇妙すぎるものだった。


「なるほど……。それはいいんだが、俺はどんな目的で転生するんだ?」

「あら、飲み込みが早いんですね。驚きです」

「まぁ、記憶がないしな。何故死んだのか分からなければどう生きようかなんて決めようがないからな」

「分かりました。では転生させた目的、そしてどう生まれ変わるのかの説明をしましょう」


 改まった雰囲気になり、緊張した空気が流れる。


 俺は目の前の女神を見つめる。

 その姿はまるで中世の絵画にあるような装いだ。

 金色に煌めく長く美しい髪、透き通るような水色の瞳、純真無垢と形容すべき純白の衣服。

 もし絵の才能があれば彼女を描き、作品として残したい。そう思えた。


「この世界――あなたの行く世界は既に《《腐っています》》。なので神々はこの世界を、この世界の民を見放しました。そして神々で話し合った結果、あなたを《《不死者の皇帝》》――つまり不死者(アンデット)として送り出し、世界征服を成し遂げ、新たな世界を創り上げて欲しいのです」

「…………はぁ!?」


 不死者(アンデット)の皇帝!? 世界征服!?


 女神から告げられたのは、全く以て(もって)予想とは大きく異なるものだった。


 俺は小説や漫画、アニメなどが大好きだったのは覚えている。

 もちろんそこに付随する自分の事は思い出せないが、大体こういうのって「勇者に転生して~」だったり、「死んだお詫びで~」みたいなものだったりするのではないだろうか。


 それが《《人》》どころか不死者(アンデット)。世界を救うどころか《《世界征服》》。全くの逆だし正義とは程遠い。……いや、女神がやれって言うのなら正義なのか? いやいや考えるのはやめておこう。頭が痛くなりそうだ。


「ちょ、ちょっと待て! とりあえず、詳しく説明してくれないか? 不死者の皇帝ってどういうことだ?」

「えぇ。もちろん説明いたします」


 そう言った女神は俺の足もとに手を伸ばした。

 俺は怪訝な顔をしたが、何をしたいのかすぐに理解することとなった。


「さぁ、どうぞおかけください」


 振り返ると、そこには大理石で作られただろう椅子が――先程まではなかったはず――あった。


「で、では失礼して……」


 そして俺は遠慮がちにそこへ座った。


「さて、まずあなたが転生する場所について説明しましょうか。そこは赤道付近にあり、魔物が闊歩していて人が存在していません。まるで現世から隔離されたかのような地。人類には《《魔大陸》》と呼ばれていますね」


 魔大陸……名前からして恐ろしげだ。世界征服を成す者がいる場所としては相応しいだろう。

 しかし魔物が少し怖いところだな。襲われてハイ終わりだと虚しすぎる。それだけは避けたいところ。


「そしてあなたが征服する大陸、つまり人類の住む地はアルカ大陸と呼ばれています。もしくは単に中央大陸と呼ぶ人もいますね。魔大陸から考えると北方の海を隔てた場所です」

「一つ質問だ。魔大陸からはどれくらいの距離があるのか聞かせてくれ」

「……今は概要を説明しています。また後にしてくださいませんか?」

「そ、そうか……わかった」


 俺からすればごまかされたようにしか思えない。

 しかしそういうタイプの人もいると聞いたことがあるし、仕方ないのだろうと思うことにした。


「次に種族ですね。不死者(アンデット)の皇帝と先程は表現しましたが、この世界での言い方にすると不死者の皇帝(イモータル)と言うべきでしょう。そんな不死者の皇帝(イモータル)は不死者の《《皇帝》》の名に相応しく、配下を創造したり、他の不死者(アンデッド)を支配することが可能です」

「なるほど。不死者の皇帝(イモータル)――不滅というのは、なんだか縁起が良いな」


 これまでを簡潔にまとめよう。


 転生場所は魔大陸。北方の海を隔てた先にあるのがアルカ大陸。

 俺は不死者の皇帝(イモータル)という不死者(アンデット)に転生する。配下の創造と支配が可能……と。

 記憶の整理は大事だからな。


「さぁ。考えるのも程々にして、転生しましょうよ。実際に見て感じるものがあるかもしれませんよ?」


 彼女は微笑みながら俺にそう語りかけてきた。


 その声は甘くとろけるようだった。


 それによって理性が半分か、それ以上が機能していなかったのだろう。だから質問も、反論も、抵抗の何もかもが思い浮かぶ事はなかった。本能に語りかけられたかのようだった。


「あ、あぁ……。そうだな。それじゃあ、お願いします」

「分かりました。……あ、伝え忘れてしまったのですが、もし二週間以内に目的を達成出来なかった場合、あなたは地獄の炎に焼かれ永遠に苦しむことになります。いかんせん不浄な『不死者(アンデッド)』ですので」


 その瞬間、彼女の背中に大きく白い翼が三対六枚、頭上には幾重にも連なる光輪が現れた。


「――この世界を統べし女神アザノヴァの名の下に命ずる。万物の理よ、今一度この世の支配者たる我に従え!」


 女神がそう唱えると、俺の身体は白い泡のようになり消え始めた。


 そしてすぐに意識は闇に落ちた――――


 俺が文句の一言も言えないままに。

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