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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
四章
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94話

 ハミィの()()()はけっこうな騒ぎになったが、わたし達は表向きマリアの気遣いで忙しい合間をぬってわたしが家族に会えるようにしてくれた、ということになっているので【オルガノ王朝】の現在の本拠地であるアリアに戻らなければならない。

わたしは試練を無事乗り越えてハミィを取り戻してみせると家族に誓い旅立った。

……我ながら面の皮が厚いがとにかくそういう筋書きにするこに成功したのである。


 そしてアリアに辿り着きムーサ師匠に合流した頃には、黄金竜ヴォーカル討伐作戦の準備が始まっていた。

決着のときが、目の前に迫っている。



 作戦決行日。

黄金竜ヴォーカルが眷属のワイバーン達と籠もる【聖都オラトリオ】を三国の軍が囲む。

北からは【剣帝】フォニム陛下が率いる【トライアド帝国】。

南東からは先の二体のドラゴン討伐作戦で主力をなした【クラシック王国】。

西からは最も寡兵ではあるが拘束用の【遺物(マスターピース)】を有する【ピアノ公国】。

大陸の騎士の力が、正に結集しているのである。


「なかなか壮観ね……」


「ワイバーンがたくさんいますけど、こっちだってこれだけの兵力ならどうにかなりそうですね」


 わたし達は西側、公国軍に陣借りしている聖堂騎士団の本陣から戦場を眺めていた。

作戦では黄金竜ヴォーカル討伐は三国の軍に任せ、わたし達はその後の最後の試練に全力を注ぐことになっている。

もちろん戦いは何が起こるかわからないので、いざとなればわたし達も参戦するが。


「あんまり緊張するなよ。【道標】に記された必要な条件は全て満たした、あとはなるように身を任せるだけさ」


「ムーサ師匠……」


 そう励ましてくれるムーサ師匠は余裕の態度を崩さない。

それはここまでの努力が実るのを確信しているからか、それともわたし達を安心させるための演技なのか。

わからないけれど、大事な一戦、励ましを受け取って気合いを入れる。


「そうですね、ここまでがんばってきたんだからあとは上手くいくだけよ!」


「はい!最高のハッピーエンドを掴みましょう!」


「ああ、その意気だ。じゃあそろそろマリアくん、始めよう」


 マリアは深く頷き、身だしなみを整えてムーサ師匠の正面に立つ。

これからムーサ師匠の魔法を使って全軍に【聖女】――次代の神としての演説をするのだ。

ムーサ師匠が呪文を唱え、マリアに開始の合図を送る。


「【ムジカ大陸】の騎士のみなさん、【聖女】マリア・ヴィルトゥオーサです」


 マリアは堂々とした態度で演説を始める。


「突然始まった【地母神ヴィルトゥオーソ】様からの試練、ドラゴン達との戦い、みなさんここまでわけもわからないままよくぞ耐え抜いてくださいました。心からの謝礼と、惜しみない称賛を贈ります」


 丁寧にお辞儀をして、さらに続ける。


「これから始まる最後の戦い、わたしはみなさんの勝利を確信しています。そして次代の神として、勝利の後に至上の栄光と祝福を誓います!」


 マリアは拳を高く掲げる。


「騎士に勝利を!人類に繁栄を!そして三国よ永遠なれ!!」


「【聖女マリア】万歳!!」


 わたしは真っ先に叫んだ。

周囲にいた【オルガノ王朝】の人々も続いて万歳の声が響き渡る。

次第にそれは公国軍にも広まり、大地を揺るがすような大騒ぎとなった。


「緊張しました……こんな感じで良かったんですよね?」


「ああ、各国に仕込んでおいたサクラのおかげで帝国軍と王国軍も盛り上がってるぜ」


「ここで普通に小細工してるのがなんかブレないですよねムーサ師匠……」


「わはは、いいんだよこんな感じで。さあ、もうすぐ狼煙も上がるぞ」


 ムーサ師匠の言う通り、作戦開始の合図である狼煙が上がる。

開戦の時である。

最初にことが起こったのは北、帝国軍からだった。

巨大な衝撃波がワイバーンの群れを一瞬で粉砕する。

その轟音と光景はわたし達の位置からでもよく見ることが出来た。


「なんですか今の!?」


「あれは【真・幻影斬(ミラージュ・バースト)】、残像ではなく分身を作り出し、協力して巨大な衝撃波を生み出す【剣帝】の奥義よ。この規模、恐らく五十人程に分身してやったわね」


「当然の様に分身するんですか!?」


「当代のフォニム帝だけじゃなくて一時代に一人は分身できる奴出てくるとか騎士意味わからんぜ」


 皇帝陛下の強さにマリアとムーサ師匠が慄いているが、戦いはまだこれから。

残りのワイバーン達が敵を迎え撃つために北へと集中する。

すると自然に南側の守りが疎かになり、そこに王国軍が攻め寄せる。

こうなれば流れはこちら側のもの、騎士の軍勢がワイバーンを次々と狩っていく。

さあ、となると本命、黄金竜ヴォーカルが動き出す!


「来ました!!」


 黄金竜ヴォーカルの一吠えで軍勢が抉り取られる。

巨体から繰り出される規格外の破壊力にこのままでは形勢が逆転される、しかし。

待機していた公国軍が【遺物(マスターピース)】を起動、黄金竜ヴォーカルを拘束する!

黄金のドラゴンは動きを止め……ていない、【遺物(マスターピース)】に囚われながらも身悶えしその余波だけで被害を広げる。

公国軍はもろにその被害を受けつつも、残っている【遺物(マスターピース)】をさらに起動、苦闘の末今度こそ黄金竜ヴォーカルの拘束に成功する。


 こうなればもう後は皇帝陛下がとどめを刺すだけである。

帝国軍から一人の騎士――もちろん皇帝陛下が飛び出し、ドラゴンの首を飛ばす。


「やった……!」


「ええ、そしてわたし達の出番よ、マリア!」


 空から光が降り注ぐ。

そして響き渡る透き通るような、【地母神ヴィルトゥオーソ】の声。


「見事です、愛しい人々、そしてわたしの後継者」


 マリアの目の前に【門】が現れた。


「さあ、最後の試練です。【門】をくぐり、神座に至りなさい」


 マリアがわたしを見て、手を差し伸べる。

わたしは強く頷き、差し出された手をしっかりと握る。

そして二人で、【門】をくぐった。

さあ、待ってろ【トゥルーエンド】!!

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