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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
四章
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89話

 白竜王キーボードを討伐を成し遂げ、【カンタータ】では盛大な祝賀会が開かれた。

街のあちこちで酒宴が開かれ、怪我を負った騎士達も、家族を失った人々も、今このときは喜びを共有している。

わたしとマリアは騒ぎの中にいると目立ちすぎるからということで、クレシェンド公とレガートと、内宮でささやかな祝いの席を設けてもらった。


「流石メロディ、ついにドラゴンスレイヤーだね」


「大げさよ、拘束されているところをちょっと突き刺しただけなんだから」


「いいじゃないですか、せっかくの名誉なんですから!これからは【竜殺し】メロディ・ドミナント・テンションでいきましょう!」


「いや、本当にやめて……」


 お酒は入っていないはずなのに、マリアもレガートも気が大きくなってしまっている。

わたしの左右の隣りに座って、ああだこうだと大盛り上がりだ。

多分、マリアは初めての戦場に出た緊張、レガートは国に大きな脅威が迫っていた緊張から解放されて、気分が浮ついているのだろう。

わたしも正直まだ胸がどきどきしている。

そしてそんなわたし達を見守っているクレシェンド公。


「あー、レガート。そろそろクレシェンド公のところに……」


「あはは、お気になさらずに。僕は気にしていませんから。それよりこれからの予定はもう決まってるんですか?」


「それは、白竜王キーボードを先に討伐したことで少し予定は前後しますがだいたい決まっています」


 三国全てが同盟に参加の意を表してくれたので、次は正式な調印式、そして具体的な討伐計画を定める三国首脳会談である。

そういったことは通常なら【聖都オラトリオ】にて行われるのだが、現在聖都は黄金竜ヴォーカルがまだ健在なため会談の場所としては危険だ。

そのため【聖都オラトリオ】から西、公国の領土であるものの険しい自然に囲まれ居住に適さず、ろくに資源もないため半ば放置されいる僻地アリアを代替とするように上王陛下から仰せつかっている。


「一応うちの領土なんだけど決まっちゃってるんだ」


「そこは【ムジカの上王】の仰ることなんで……」


 正確に言うと王権は皇帝陛下にもう譲られているから【ムジカの上王】の言うことなんてもう無視したって構わないのだが、正式な禅譲の儀式が行われるまで帝国皇帝に支配権があるとは認めません、としているのが現在の王国と公国である。

なので今は【ムジカの上王】を重んじておく、ということでシンフォニア伯爵もアリアを会談の場とすることを受け入れている。


「何事もなければ既に【魔法使い】ムーサ・カメーナエ卿が公国に入国しアリアに到着しているはずなのでわたし達は彼女と合流、魔法で三国の王に調印式のために集まるよう連絡してもらう手はずです」


「へー、すごいことになってるんだねえ」


「あなた当事者だよ?」


 レガートの言う通り、とぼけているがクレシェンド公こそ三国の王の一人である。


「わかってるよ~。じゃあまたすぐに会うことになるのかな?今みたいにゆっくりは出来ないだろうけどよろしくねえ」


 なんというか、凡庸というよりも底抜けに駄目かそう装っている大物かの二択って感じの人物だなあ。

クレシェンド公が今後どんな王になるのかに思いを馳せつつ、両手にマリアとレガートの状態でその夜は更けていった。



 【カンタータ】を発ち、険しい公国の道を北東へと進むとアリアの地である。

しばらくぶりとなるムーサ師匠との再会。

別れたときは言い合いをしてそのままだったし、独断で行動していたことが上王陛下にバレたことで立場が危うくなったりしてないだろうかと少し心配あっての再会だった……のだが。


「よお、ことは上手く行っているみたいだなマリアくんにメロディくん!」


 なんかいつも通り、いや、いつもより元気というかつやつやしていた。


「【魔法使い】さん!そちらも元気そうでなによりです」


「ちょっと気不味い別れ方だったような気がするんですけど……なんでそんなにつやつやしてるんですかムーサ師匠?」


 ご機嫌なマリアと不審げなわたしを交互に見て、何故か満足気にムーサ師匠は答える。


「んー?なんと言うかさ……君達が出発したあと上王陛下と腹を割って話そうってことになってさ」


「背信行為してた相手に寛大ですね」


「あははー、それがさー『君に余計な気を回させてしまう不甲斐ない上王ですまなかった』なんて言われちゃってさ……あまりの器の大きさに惚れ直したっていうか、絆が深まっちゃったというか」


「あっ、もしかして【魔法使い】さんと上王陛下って特別な間柄だったり!?」


 マリアがぐいぐいと食いついている。

ムーサ師匠はご機嫌かつ自慢気に、人差し指を立てて口の前に持っていく。


「秘密だぜ?」


「わー!わかりました、もちろん秘密にしますね!!」


 要するに、立場が悪化するどころかイチャつくだしになったと。

思う存分にいちゃついたのでご機嫌かつなんかつやつやしていたと。

心配して損したな!!


「まあ、それはそれとして、だ。これから正式に同盟が組まれて三国合同でのドラゴン討伐が行われる。青竜王ベースと赤竜王ドラムの討伐については三国の指導者が中心となってなんとかしてくれるからあまり気にしなくていい。問題は最後の黄金竜ヴォーカル」


 最後、その言葉を聞いて緊張が走る。

黄金竜ヴォーカルを倒したらそのまま休む暇もなく最後の試練、そして【道標】に記されている最後の運命の分岐点に進むことになるのだ。


「【メロディトゥルーエンド】まであともう少し、気を抜かずに行こうぜ」

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