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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
四章
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82話

 その後しばらく皇帝陛下の愚痴に付き合わされ、公務の都合でようやく解放された。

精神的にへとへとになって客間に戻ると、そこにはなんだかそわそわとしているマリアがいた。


「ただいま……ごめんね、一人で待たせちゃって」


「いえ、大丈夫です!ちょうど気持ちを落ち着けられたというか……それよりどういった件での呼び出しだったんですか?」


「私的で些細な話をしただけよ……それとこれから王国首都【マイスタージンガー】へ行く道中のことなんだけど」


 私的な話は全て省いて、国境地帯にいるお父様に会う用事ができたことを説明する。

どうせ通る道のことだから、大した問題ではないはずだ。


「メロディ先輩のお父様にですか!?」


「ええ、もしかして何か問題あるかしら?王国でお父様の評判が悪いとか?」


「そうじゃなくて!ご家族に挨拶とか展開が速いなというか……」


「展開?そういえば緊急事態だからあなたのお父様に会いに行くことも出来るかもしれないのよね」


「わたしからも紹介ですか!?メロディ先輩がそうしたいならやぶさかではありませんけど!!」


 なんかマリアの様子が変だな……

まあ色々あったからまだ気持ちの整理がついていないのだろう。

夕食にはまだ時間があるし、少し休ませてあげた方がいいかもしれない。


「ちょっと休む?寝室はあっちだけど……」


「寝室!?それは流石に~~~!!」


 マリアは目を回してばたん、と倒れた。


「ちょっと大丈夫!?待ってて、すぐ医者を呼んでくるから!」



 幸いマリアは「ちょっと興奮しすぎただけ」とのことですぐに目を覚ました。

夕食会にもちゃんと参加できたし、お外モードの皇帝陛下ともしっかり話せていたが、なんだろう、相変わらず様子がおかしい。

今まで通りの距離感で話そうとしたら避けられなくなった代わりに舞い上がるようになったというか。

親衛隊の子達みたいな反応をするようになったというか。

まあこれも色々あったせいで距離感を測りかねているだけで、すぐに慣れて元通りになるだろう。


 というわけでマリアとの関係改善はこれでよし。

わたし達は急ぎ【トリニティ】を出発し、【マイスタージンガー】へと向かうことになった。

お母様に挨拶をする暇がないのは残念だが、ブレイクおじさまに伝言も頼んだし今は急がねば。

まずは【トリニティ】から南東、帝国と王国の国境地帯に移動である。

今回もワイバーンとの遭遇に気をつけながらの道のりで、移動には一週間の日時を要した。

そうして辿り着いたお父様の駐留しているテトラッド砦。

この目に見るのは初めてだが、とても立派でなんだか誇らしい。


「見た感じ、大事にはなっていないみたいね」


「はい、ここから【マイスタージンガー】へは南に二日ほど……向こうも無事だといいんですが」


 マリアの表情が少し曇る。

彼女の心配を減らすためにもここでの用事は急いで済ましてしまわなければ。

砦に入るための身元の照会は問題なく進んだ。

思い返せば【オラトリオ騎士学校】入学のために帝国を離れたとき以来、およそ三年ぶりのお父様との再会である。

通された部屋でお父様は皇帝陛下の前やお母様の前にいるときとはまるで違う――「大将軍」の顔で待っていた。


「皇帝陛下よりの伝令の役、ご苦労。挨拶は不要、用件のみを話すように」


「はっ、こちら皇帝陛下の命令書をお預かりしています」


 親子らしい会話なしに粛々とことは進む。

命令書を確認したお父様は早速部下達に新たな指示を伝え、それが済むと再びわたしに向き直る。


「皇帝陛下からの用件はこれだけか?」


「命令は以上であります」


「……本当にこれだけか?」


「そうですが……」


「本当の本当に!?」


 「大将軍」の仮面が破れかけている。

娘を前にしても揺るがないくせに皇帝陛下が絡むとこれなのはちょっとアレである。

とはいえ多分命令以外もこっそりと伝えろという意味でわたしをここに向かわせたのだろうし、おうちモードの皇帝陛下の様子を教えてあげよう。


「命令はないですけど、フォニム様はしばらくお父様に会えてないから寂しいみたいですよ」


「そうか!ははは、よく伝えに来てくれたメロディ!ならば任せろ、陛下の御前へ参上できるよう速攻で命令を果してみせるとも!!」


 とんでもなくご機嫌になった。

またすごい無茶振りが命令されたんだろうな……

横で見ていたマリアと護衛の騎士達もちょっと引き気味である。


「さて、【聖女】殿にはこちらでわかっている王国の情報をお伝えしなければ!」


 話しかけられたマリアは一旦わたしの顔を見たので、わたしはゆっくりと顔を横に振った。

ごめんね、お父様ちょっとアレなんだ……

わたしの反応をみたマリアは、冷や汗を一筋流してからお父様の方を向く。


「はい、わたしが【聖女】の称号を頂いたマリア・ヴィルトゥオーサです。王国の現状、どのように伝わってきているのでしょうか?」


「我々帝国が調べたものなのであなたとしてはそのまま受け取り難いかもしれませんが、()()()()()()()()()()


 どうやらお父様はかなり重要かつ正確な情報を入手しているようだ。

マリアがそれを察したのを確認してから、お父様は言葉を続ける。


「【クラシック王国】南部は既に青竜王ベース、赤竜王ドラムによって制圧されています」

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