表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
四章
77/97

76話

 騎士歴千四百二十二年十二月二十四日。

【地母神ヴィルトゥオーソ】の告知とともに、五体のドラゴンが封印から解き放たれた。

ドラゴン達はまず眷属【ワイバーン】を造り出し、巨大な巣の建築に取り掛かった。

各国は突然の事態に戸惑いながらも厳戒体制を敷き戦力をかき集める。

そんな動きの中、メロディはマリアと共にムジカ・オルガノ・コンチェルト十五世に召し出されていた。



 状況を整理しよう。

【リズムシナリオ】に進むつもりだったから【メロディシナリオ】の超展開についていけなかったが、現在でも【道標】の記述通りに物語が進んでいることに違いはない。

地母神のことも、ドラゴンのことも、皇帝陛下が権限を譲られたことも、今【ムジカの上王】が目の間にいることも予定調和の内。

だからこれからわたし達が【ムジカの上王】に言われることも予測は出来るのだが……


 【道標】って元々上王陛下にしか見えないものなわけで。

それを見せてもらっているのがわたしなわけで。

ムーサ師匠を通してわたしが【道標】の情報を使って帝国による大陸統一を目指していたこともバレているわけで……

絶対心証悪いよなわたし!


「メロディ先輩、冷や汗すごいですけど大丈夫ですか……?」


 隣にいるマリアが心配して小声で話しかけてくる程焦っています。

【道標】によるとこれから上王陛下は【聖女】であるマリアに三国の協力を呼びかける使者として大陸を旅するように指示することになっている。

同行するわたしにはマリアを支えて欲しい、と告げるとしか書かれていないが……絶対それで済まない。

わたしは作り笑いを浮かべて大丈夫だ、とマリアに視線を送るが全くそうは見えないらしい。

マリアの表情から心配の色が消えることはなかった。


「さて、早速だが君達を呼び出した理由を率直に説明しよう」


 上王陛下の凛々しい声がそんな空気を塗り替える。

恐る恐る見つめたその姿は、優しげで皇帝陛下とは種類の違う高貴さを漂わせている。


『ムジカ・オルガノ・コンチェルト十五世 サブキャラ 所属:【オルガノ王朝】

  【ムジカ大陸】の名目上の支配者、【ムジカの上王】。

  大陸に住む全ての人々の幸福を願う優しき女王。

  時折未来を見通すかのような発言をすることがある。』


 見通すかのようなっていうか【道標】で見てるんですよね……

上王陛下はマリアとわたしの顔を交互に見てから言葉を続ける。


「地母神に与えられた試練を乗り越えるため、我々は一丸となってドラゴンに立ち向かわなければならない。しかしそれはこれまで争い合ってきた歴史を思えば至難の業……そこで地母神の後継者、【聖女】である君に各国を説得して回って欲しい」


「わたしが……ですか?」


 マリアはごくりと息を飲む。

普通に考えて成人前の少女に託すには重すぎる役割である。

しかしマリア……【聖女】にはそれを可能とする手札がある。


「試練を乗り越えたとき、君はこの世界の新たな神となる。君が紡ぎ出す新世界で祝福を受けられるか否か、それは交渉材料として十分だろう?」


 先の見えないドラゴンとの戦いに単身突き進むか、新時代の神にいち早く従うか。

それだけ考えれば答えは明確に見える。


「しかし……上王陛下、先程【剣帝】、【トライアド帝国】のフォニム帝に全ての権限を譲ると宣言なされていましたよね?それでは不十分なのでしょうか?」


 そこである。

【ムジカの上王】からの権限の譲渡、つまり禅譲は大陸統一後なら願ってもないことだ。

しかし今、最強ではあっても割拠する三国の内の一国でしかない帝国が、名目上のものでしかない王権を譲られても……ぶっちゃけ困る。


「ああ、おそらく【クラシック王国】と【ピアノ公国】はそれを盾に【トライアド帝国】に負担を押し付けることを選択するだろう。それではこの試練を乗り越えるには足りない」


「えっ、じゃあなんで権限譲ったりなんかしたんですか?」


 そうだよ!

このままだと帝国はいいように戦わされて国力削られてボロボロになってしまう。

わたしははらはらしながら上王陛下の次の発言を待つ。


「それでも、【剣帝】に動いてもらわねば試練を乗り越えるどころか生き延びることすら出来ないからだ」


 上王陛下は目を伏せる。


「君達、昨年黄金竜ヴォーカルを見ただろう?()()()()()()()()()()()()()()()。今からあれは、眷属として大量のワイバーンを率い、他の四体のドラゴンと共に襲いかかってくる。土地や家々は焼かれ、平民達は為すすべもなく死に、騎士にも犠牲が出るだろう」


 そう言って、上王陛下はわたしの方を向いた。


「そんなドラゴンに立ち向かえるのは【剣帝】とメロディが持っている【宝剣ストラディバリウス】だけだ。だからなんとしてでもまず、帝国に動いてもらう必要があるのだ」


 脳裏に先程吹き飛んだ【オラトリオ騎士学校】がよぎる。

そもそも【メロディシナリオ】に行かなきゃいいんじゃないのかと今でも思うが、こうなってしまった以上、わたしは騎士として祖国を守るために全力を尽くさなければならない。

マリアも今は離れてしまった故郷、王国を思っているのだろう。

その瞳に強い意志が宿り始めている。


「マリア・ヴィルトゥオーサ、そしてメロディ・ドミナント・テンション。まずは【トライアド帝国】に赴き、対ドラゴン同盟締結を呼びかけてきてくれ!」


「……はい、全力を尽くします!」


「わたしも出来る限りマリアの助けを……」


「あ、メロディくんの方は【カルマポイント】の方も気をつけてね」


 なんか軽い感じに頼まれた!?

そんな空気でわたしとやってくつもりなんですか上王陛下!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ