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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
三章
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74話

「リズム!待っ……」


 マリアの静止に、リズムは耳を傾けない。


(もう時間がない。無理矢理引きずってでもパーティーに連れ戻す!)


 リズムはためらうことなくマリアを行動不能にせんと踏み込む――が。

先程リズムが放った【飛燕剣(ソニック・ブレード)】よりも遥かに速い衝撃波がそれを妨げる。

マリアの【魔弾(フライシュッツ)】である。


「やめてリズム、()()()()()()()()()()()()()()()


 リズムの敵意を感じ取ったマリアは既に戦士の顔になっている。

優しげな言葉と裏腹に、自分に剣を向けるのならば容赦はしない、とそう断じているのだ。

リズムの額に青筋が走る。


「俺を舐めるなよ!!」


 激昂し、今度こそマリアに斬りかからんと踏み込む。

マリアは冷静に、何度やっても同じだと再び【魔弾(フライシュッツ)】を放つ。

いや、今度はリズムの動きを妨げるのではなく、彼を打ち倒すためにその一撃は放たれた。

真正面からそれを受けたリズムは倒れ――ない。


「嘘……!?」


 リズムはかつてメロディがそうしたように、【魔弾(フライシュッツ)】を跳ね返したのだ。

跳ね返された【魔弾(フライシュッツ)】をすんでのところで避けるマリアだったが表情は驚きで歪む。


(わたしの技がメロディ先輩以外に!?)


「姉上が見せてくれた勝ち筋を、俺が身に着けないはずがないだろう!」


 そしてここでリズムが攻め手を止めるはずがない。

この勢いのままマリアを打倒さんと、距離を縮め【十字剣(クロス・ブレード)】が放たれる。


「終わりだ!!」


「くっ……そっちこそ舐めるな!!」


 鳴り響く金属音。

マリアも【十字剣(クロス・ブレード)】を放ち迎撃したのだ。

二人は鍔迫り合いの形になる。

押し合い、睨み合うリズムとマリア。

殺気に溢れた静寂を破ったのはマリアの言葉だった。


「謝るよ、リズム。確かにわたしはあなたを舐めていた」


「謝る必要はない……!ただここで倒れろ!!」


「それは無理。代わりにまだ誰にも見せたことのない剣技を見せてあげる」


 誰にも見せたことのない剣技、その言葉にリズムは心を乱される。


(【魔弾(フライシュッツ)】以外に隠し技が?いや、【道標】にそんなものがあると姉上は言っていなかった。ハッタリ?だがこの自信に満ちた顔は……)


 リズムの認識している通り、【道標】にマリアが【魔弾(フライシュッツ)】以外にも特殊な剣技を習得しているなどとは書かれていない。

マリアに奥の手などない――本来ならば。

これはあり得なかった展開、メロディが切り開いてしまった新たな道(かのうせい)


 マリアは衝撃を受けたのだ。

理外の剣技、【魔弾(フライシュッツ)】を初見で攻略してしまう騎士の存在に。

そんな騎士が、まだ発展途上の一つ年上の騎士でその後も強くなっていっているということに。

だからマリアは、自分もさらに強くなりたいと強く願った。

そして存在しないはずのもう一つの理外の剣技を編み出してしまった。


「【魔王剣(ザミエル)】」


 その名を告げたのと同時にマリアの剣の刀身が黒く染まる。

リズムがそれを認識し、これから起こることに備えようとしたその刹那。


「がっ……!」


 マリアは微動だにしていない。

にも関わらず、リズムの体を衝撃波が襲い吹き飛ばされる。

そしてそこで終わらない、何が起こったのか理解しようとするリズムにさらなる衝撃。

連続で五発、最初に吹き飛ばしたものを含めると六発の衝撃波がリズムに畳み掛けられる。


(なにが……起きた……?)


 状況を理解できないまま、リズムの意識は闇へと沈む。

だから彼はそれを目撃することはなかった。

巨大な反動がマリアの身にも襲いかかっていたことを。


「はっ……!」


 マリアはよろめき、剣を地面に突き立ててなんとか体を支える。

その刀身はもう黒く染まっておらず、元の輝きを取り戻している。


「勢いで戦っちゃったけど……リズムのことどうしよう……?」



 近くで大きな音がした。

おそらく戦闘によるものであろうそれは、不気味な六連続の音とその後の悲鳴のような轟音で締めくくられ、再び静寂が戻る。


「マリアが来るってどんな手紙を……!それに今の音もあなたが何かしたんですか!?」


 わたしは不安から叫ぶようにムーサ師匠に疑問をぶつける。

それを聞いたムーサ師匠の表情は、困惑。


「いや……今の音は知らない。なにあれ怖い……」


「えっ、関係ないの?あんな不気味な音なのに?いや、怖い!」


 自然に起きる音には聞こえなかったんですが!?

どうしよう、リズムとマリアの様子を見に行きたいのに別に気になることが出てきてしまった。

さっきまでムーサ師匠との間にあった緊張感は薄れて、いっしょに困惑しながら音のした方向を見つめる。


「あたしにもわからない現象が校内で起きてるとかやばいな……っていうかマリア・ヴィルトゥオーサも巻き込まれたかもしれない……?」


「一旦様子を見に行きます……?」


「いや、君の身に何かあったらまずいからわたしだけで……」


 そんなことを話していると明るい少女の声が聞こえてくる。


「メロディせんぱーい!お待たせしましたー!!」


 それは間違いなくマリアのものだった。

来ちゃったよ!怪現象には巻き込まれてないみたいで良かったけど抜け出してきちゃったよ!

リズムはどうしちゃったんだ、と混乱しつつ声のする方をよく見てみると。


「ぜぇ……はぁ……すみません、ちょっとトラブルがありまして」


 マリアは()()()()()()()()()()()()()()()ボロボロで、同じくボロボロのリズムを背負っていた。

あれ、やっぱり怪現象に巻き込まれた!?


「どうしたのマリア!?何があったらそんなことに、リズムは無事なの!?」


「無事……ではないけど、命に別条はないです」


 うん、気を失ってるからちょっと命の心配もしちゃうくらいボロボロだよ二人共!

あの戦闘音は二人に関係あったのか?そううろたえるわたしを尻目に、マリアは妙に興奮していて。


「メロディ先輩、お手紙ありがとうございます。わたし……」


 そう、マリアは頬を赤らめていて、瞳もきらきらと輝いていて。


「わたしも!メロディ先輩のことが好きです、恋人になりたいです!!」


 告白をしてきた。

あっ……

入っちゃった、【メロディシナリオ】……

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