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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
三章
72/97

71話

 季節はゆっくりと秋へと変わっていく。

わたしは相変わらず剣術トーナメントが中止になったことで出来た時間を鍛錬に費やしている。

ただ一つだけ、冬に控えた聖誕祭パーティーに向けた布石を打っておいた。

去年と一昨年は流れでそうなってしまっていたが、ダンスコンテストの優勝者へのご褒美としてわたしがデートしてあげるという件について、今年は早々に公言しておいたのだ。

親衛隊とおまけにリタにそのことを広めるように頼んだ結果どうなったかというと……


「誰かー!わたしとダンスコンテストに出てくれませんか!?」


「見つけた!まだ相手のいない男子よ!!」


「練習場所は抑えておきましたから、毎日しっかりお稽古しましょうね!」


 まだ参加申込期間が始まってすらいないのに、パートナー探しが大盛り上がり。

練習場所の予約の取り合いも起こっているという。

ちょっと煽りすぎた気もするが、とにかくこの盛り上がった空気に乗っかってマリアもリズムとダンスコンテストに出場する方向に意識を持って行って欲しいところだ。

とりあえず今日の夕食の時間にでもマリアの様子を伺ってみるか。


「よし、今日はこの辺にして夕食にしましょう」


「はー、はー……了解……」


 鍛錬で虫の息になっているブルースに終了を告げる。

まだまだ頼りないが、最初は途中で潰れてたからけっこう進歩してきたな。



 というわけで勉強会メンバーを集めて夕食の時間である。

鍛錬をしていたわたしとブルースだけでなく、ダンスコンテストの練習に励んでいたレガート、ヨハン少年とヨハンナ少女、親衛隊の子達、そしてリズムとマリアもエネルギーを補給するためいつもよりいい食べっぷりを見せている。

普段からいい食べっぷりのレガートなんて大変なことになっている。

まあそれは置いといて、マリアの様子を確認しておかねば。


「みんなダンスコンテストの練習頑張っているみたいね。調子はどうかしら」


「それはもう、全力を尽くしているよ」


 レガートの目つきが(多分)鋭くなった。

去年の疑惑の判定が逆に彼女を燃え上がらせているようだ。

今年は誰が優勝するかに【キャラフラグ】も【カルマポイント】も関係ないし、普通に行けばレガートとセバスティアン王太子のペアが優勝しそうだが……


「わたしも全力です!優勝狙っているので、よろしくお願いします!!」


 マリアもダンスコンテストに向けて気持ちを燃え上がらせていた。


「ふーん、いいよ。今年こそわからせてあげる」


 不敵にマリアに告げるレガート。

なんだが二人の間に火花が見える気がするぞ……!

しかしマリアがダンスコンテストに出場する気満々なのはいいことだ。

リズムとがんばろうね、と気合を入れあっているし、これは心配いらないみたいだな?


「メロディ様、わたし達も優勝目指してがんばってます!」


「今年が最後のチャンスですからね……!」


「気持ちはレガートさんにもマリアさんにも負けません!」


「もちろんみんなの気持ちはわかっているわ、応援してるわよ」


 なので安心して親衛隊へのファンサービスへ移行だ。

動機はなんであれ、ちゃんと努力している人を応援したいのは本当だからね。

というわけでわたし達の食卓がダンスコンテストの話題で盛り上がる中、イロハがぽつりとこぼす。


「こんなに盛り上がってるとぼくが出られるような感じじゃないな……」


 むむ、それは聞き捨てならない発言。


「イロハさん、あなたもダンスコンテストに興味があるの?」


 すかさず反応を返したわたしにイロハは気まずそうに微笑む。


「えーっと……興味はあるんですけど、こっちの踊りはよく知らないし、パートナーの当てもないから止めておこうかなって」


 なるほど、確かに気軽に参加できる空気じゃないほど盛り上がっているし、女子生徒がダンスの上手そうな男子生徒を奪い合っている中で編入生のイロハがパートナーを見つけるのは難しそうだ。

しかしわたしはイロハの世話を任されている身、せっかく興味を持っている彼女を意図的ではないにしろ参加する邪魔をしたとあってはちょっと良くない。


「それはもったいないわ、わたしがパートナー探しとダンスの練習手伝うから考え直さない?」


「そうですね、イロハさんには学校生活をいっぱい楽しんで欲しいですし」


 わたしの提案にマリアも賛同する。

それを聞いてイロハの表情は少し明るくなった。


「本当ですか?ならやっぱり参加してみようかな……」


「でもパートナー探しの方、本当になんとかなる?こういう行事に出てくれそうな男子大体つかまっちゃってるよ」


 リタがそう言うということは本当にそうなっているのだろう。

わたしは心当りを思い浮かべる。


「そういえばオクターヴは?」


「すみませんメロディさん……去年組んだ子ともう約束してしまいました。いやでも、メロディさんのためならまだ申込はしてないわけですし謝ってきますよ!」


「別にそこまでしなくてもいいのよ。それなら……そうだ、ブルースは空いてるじゃない」


「へっ!?」


「えっ!?」


 ブルースとイロハの反応が重なる。


「メロディ、流石に鍛錬に加えてダンスの練習は無理というか……」


「それにブルースくんはメロディさんの婚約者じゃないですか!」


「いや普通に気にしないし、ダンスコンテストまでは鍛錬減らせばいいだけじゃない」


 普通の返事をしたつもりだったのだが、二人はきょとんとした顔になってしまった。

首をひねるわたしに、リタが解説を入れてくれる。


「メロディ……学校一モテモテのあなたの婚約者ってことでブルースくんはアンタッチャブルな存在なんだよ……」


 えっ、そうだったの。

ブルースの顔を見るとその通りらしく苦笑いで返された。


「まあメロディさんがいいって言うなら、ブルースくん、ダンスコンテストに一緒に出てくれますか?」


「うん、いいとも。でも鍛錬減らすだけでなくすんじゃないんだね……」


 当然だけど?

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