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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
三章
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66話

 気が重いまま迎えた野外演習の班分けの発表。

今年のわたしが所属する班のメンバーは二人とも親衛隊の子だった。


「メロディ様と同じ班になれるなんて感激です!」


「足手まといにならないよう、全力で仕事に取り組んでみせます!!」


「よろしくね、あんまり気持ちを入れ過ぎずに平常心で行きましょう」


 はーい!と元気な声が返ってくる。

日々の生活でカッコつけることは止められない……というよりむしろいい息抜きになっていた。

わたしは意外と演じる才能があるのかもしれない。

なんて考えていると、レガートとリタも自分の班を確認し終わったようでわたしのところにやって来た。


「おやおや、親衛隊に挟まれて楽しそうな班だね。わたしも情報網でそこそこ付き合いのある子達と同じ班だったよ」


「お互い気安い班に入れたみたいね、レガートは?」


 リタの言葉に返事をしつつレガートの方を見ると、彼女はいつもにも増して無表情だった。


「メロディといっしょじゃないなら誰と一緒でもどうでもいい」


「相変わらずね……」


「ちなみにセバスティアン王太子と同じ班だったよ」


「そこそこ付き合いもある王太子相手でも相変わらずなのね……」


 普段ならひたすら呆れるところだが、今の状況では平常運転のレガートもなんだか癒やしに見えてくる。

しかしいつまでも息抜きや癒やしを求めてもいられない。

二年生の班分けを確認して行動指針を決めておかねば。

えーっと、二年生の班分け表はあそこで……


『第一班 クレシェンド・ピアノ・コンチェルト

     リズム・ドミナント・テンション

     マリア・ヴィルトゥオーサ』


 あっという間にリズムとマリアの班が見つかった。

二年連続同じ班って、これは不正を疑ってしまうな……

しかしわたしの目的のためにも都合がいいのでここはつっこまずにいよう。

そういえばイロハの班はっと。


『第三班 ノイズ・マイナー・セブンスコード

     イロハ・コトネ

     ヨハンナ・シュトラウス』


 ふむ……ノイズは地母神のメッセージを仲介したこともある【識った者(スコアラー)】。

今回も彼を通じて地母神は何か介入して来るのだろうか……と頭の中に不安がよぎった。



 三年生に課せられた野外演習の課題は物資の運搬・管理である。

軍事行動において最も重要な兵站に関わる訓練であり、野外演習当日よりも前、準備の段階から課題は既に始まっている。

自己紹介もそこそこに、教官からの指導をきっちりと書き取りやるべきことを頭に叩き込む。

班員がついてこれるように質問を受け付けるのも忘れずに。

わたしはそんな風に野外演習の準備をこなしていた。



「マリア・フォン・ウェーバー改めマリア・ヴィルトゥオーサ攻略計画の準備の方も頼むぜ君達?」


 そしてムーサ師匠の呼び出しもあるのだ。

ここでうっかり土壇場で裏切るつもりなのを悟られてはいけない、平常心で行こう。


「んー、なんかメロディくん疲れてないか?」


「き、気のせいですよー」


 平常心、平常心だ。


「まあいいや、本題の野外演習で起きる『事件』について話し合おう。今年度はなんと、起きないはずの日食と流星群が発生するぜ」


「縁起が悪い……」


 リズムが嫌そうな顔をしながらつっこむ。

天体観測所が予測できない日食と流星群とか縁起が悪いどころか天変地異な気もするけど。


「細かく言うと、突然の日食で一年生のユニコーン狩りが中止になって総員で陣地の構築と食事の準備に予定を変更、このときイロハ・コトネが行方不明になったのをマリアが探しに行くことになる」


「そこでいっしょに探しに行った【攻略キャラ】の【キャラフラグ】を獲得、途中怪我人が出たら【カルマポイント】が貯まってしまうんですよね」


 わたしが加えた補足にムーサ師匠はコクリと頷く。


「そして見つかったところでちょうど流星群が始まり、拠点に戻ったあとメロディくんを含めた【攻略キャラ】全員の内誰かとこれからの世界について話す流れになるわけだ。ここはメロディくんにぐいぐい行ってもらうことにして、問題はいかに怪我人を出さないかだな」


 そこは【リズムトゥルーエンド】を狙うわたしにとっても問題となる点だ。

理想を言うならマリアとリズムだけで探しに行って、【道標】に載っている最短ルートでイロハを見つけることが出来ればいいのだが……

最短ルートが本当に最短ルートだってどうやって信じてもらうかなんだよね。


「うーん……まずイロハさんと同じ班であるヨハンナさんがマリアに行方不明になったことを報告しに来るわけだから、その場には少なくともノイズ、ヨハンナさん、リズム、マリア、クレシェンド公がいるのよね」


「クレシェンド公は危険だから待機してもらうとして、ノイズとヨハンナにどう言って俺とマリアだけで探しに行くって丸め込むか……」


 わたしとリズムが頭を悩ませていると、ムーサ師匠はふふんと余裕の笑みを浮かべる。

そして手招きでわたし達を近くに呼び寄せ、わざわざ耳打ちして今回の作戦を伝えてくれた。


「えー……こんなのアリなの?」


「なんか前提がおかしくなっているような……」


「大丈夫大丈夫、さあ野外演習もがんばってくれよ!」

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