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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
三章
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59話

 さて、歓迎パーティーの場は上手くごまかせたもののそこだけで済むはずもなく。

そして教会が地母神に関わることを放っておくはずもなく、数日後【ムジカの上王】に下された地母神からの啓示によって、という名目で歴代の地母神の後継者候補達が列聖されることとなった。

歴史上の英傑達がきらびやかに並ぶその中には当然マリアの名もあったのである。


「【聖女】の一覧、一族に伝わってる先導者(コンダクター)と完全に一致してたよ。まさかそこまでとんでもない存在だったなんてね~」


 朝食の席でリタがそうこぼす。

ハミィとイロハが加わった勉強会メンバー――マリア一人が欠席している一同は複雑そうな顔でそれを聞いていた。


「この先マリアお嬢様はどうなってしまうんですかね……?」


 いつもは気丈に見えるヨハンナ少女も不安を隠せないようだ。

教会からの発表によればマリアは【聖女】――地母神の後継者候補という立場から王国の籍を外れ、【ムジカの上王】、【魔法使い】と並んで王朝に属することになるらしい。

今欠席しているのもその手続きのためである。


「【ムジカの上王】の配偶者と同じなら、二度と聖都から離れず家族とも会わないって誓約を受け入れることになるけど……」


「そんな……じゃあ俺達とはどうなるんだ!?学校も辞めさせられるのか!?」


「仮にだよ!配偶者と同じ扱いになるとは限らないし、教会の決定に三国が口を挟む可能性だってあるからどうなるかなんて今はまだ……」


「わかんないなら言うなよ!!」


 ブルースの推測にヨハン少年が噛み付いて揉めだしてしまった。

マリアに一目惚れしているブルース、幼馴染であるヨハン少年が不安から気が立ってしまうのは仕方がないが、喧嘩は周りへの迷惑なので止めに入らなくては。


「そこまでよ、二人共。情報がないときはあらゆる事体に備えて冷静になるべきとき、マリアがどうなるにしてもわたし達は友人として彼女を支えるというのは変わらないでしょう?」


「メロディ……すまない、不安を煽るようなことを言ってしまったね。ヨハンもすまない」


「おう……俺も苛ついてて悪かったな」


「さあ、わたし達はわたし達のやるべきことをしてマリアを待ちましょう」


 みんなが頷き、その日は平穏に、マリアが戻ることなく過ぎていった。



 その夜、わたしとリズムはムーサ師匠に呼び出され今年度の作戦会議を開いた。


「とりあえずこれからのマリア・フォン・ウェーバーの扱いについて確認するぜ」


 そう切り出したムーサ師匠によると、やはりマリアは家族と縁を切り聖都を本籍地として生きていくことになるものの、聖都の外に出ること、学校に通うことは制限されないとのことだった。

何日かすれば学校に戻ってきて今まで通りの生活を送れるようにもなるそうだ。


「とはいえ、周囲の目線ってのは変わるし本人も不安になっているだろう。そこを君達がいい感じに支えて【キャラフラグ】を稼ぐっていうのが今年度の行動指針だな」


「【帝国シナリオ】に入ったからライバルも減りましたし、堅実に進めていきましょう」


 リズムが決意を新たにしたようだ。

ここまででリズムの【キャラフラグ】はそれなりに貯まっているはずだし、マリアとリズムがいっしょにいることが当たり前の雰囲気にもなっている。

確かにリズムの言う通りこれからはあまり無茶をしなくてもやっていけそうである。

わたしはそう思ったのだが、ムーサ師匠は違うのかふるふると首を振った。


「これからもがんばらなきゃいけないところはまだまだあるぜ。まずは年度最初の行事、論文コンテストから確認しよう」


 そう言われてわたしは【道標】に視線を移す。

今年もやはり図書館で調べ物をしていると不思議なものが見つかって『事件』が起きるようだ。

ここの図書館、一回よく調べて禁書室とか作ったほうがいいんじゃないだろうか?


「えーっと、今年は学校内の古びた地図が見つかって、そこに言ってみたら【宝剣ストラディバリウス】があってマリアは初めて地母神の声を聞くんですよね」


「ああ、そして一緒に宝探しをした【攻略キャラ】の【キャラフラグ】が大幅に貯まるわけだ」


「やっぱりいつも通り一緒に行動するだけでうまくいくんじゃないですか?」


 リズムが疑問を口にする。

その通り、ムーサ師匠の言う「がんばらなきゃいけないところ」はないように思われる。

いまいちピンときていないわたし達を見て、ムーサ師匠はやれやれと口を開いた。


「よく見ろ、マリア・フォン・ウェーバーからメロディくんに【宝剣ストラディバリウス】を譲ってもらわないと【メロディポイント】がもらえないから【メロディシナリオ】に入れないだろうが」


……?

【メロディシナリオ】?


「何言ってるんですかムーサ師匠、【リズムトゥルーエンド】を目指しているんだからわたしの【個別シナリオ】は関係ないでしょう?」


「えっ」


「えっ」


「えっ」


 その場に居る三人の間に困惑が広がった。

お互いの顔を順番に見合って、最初にその原因に思い当たったらしいムーサ師匠が引きつった笑みをしながら口を開く。


「いや、あたし言ったよな?()()()()()()()()()()が【ムジカの上王】の望む未来だって」


「はい、だから帝国が最小限の犠牲で大陸を統一してわたし自身が不幸になることもない【リズムトゥルーエンド】が()()()()()()()()()ですよね……?」


 わたしの返答にムーサ師匠は目を見開いて愕然とした表情を見せた。

そして初めて見る本気で怒った表情になって大声で叫んだのだった。


「違うよ!!マリア・フォン・ウェーバーが新たな地母神になって、世界を戦乱のない未来に導く【メロディトゥルーエンド】が最上の未来!!!!」

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