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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
三章
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57話

 【オラトリオ騎士学校】講堂。

三年目の歓迎パーティーが始まろうとしていた。

まずは帝国の新入生、及び編入生であるイロハが在校生に挨拶をする時間である。

今年はやはりイロハに注目が集まるだろうから、わたしが世話係を仰せつかった者として彼女のもとに集う生徒達を上手くさばいてあげなければ。


「はじめまして、あなたが【シラベ国】からいらした方ね?」


「そしてそちらは噂の侯爵令嬢、メロディ様!」


「武勇伝は【トリニティ】でも知れ渡っていますわ、今年はどなたと決闘を?」


 あれ?ちょっと思っていたのと違うな……

というか知れ渡っているってどこまで?女子生徒にモテまくっていることも知れ渡っているの?

うっかりすると卒業後帰宅したらお母様に()()されてしまうんですが。

予想外の事態に顔が少し引きつってしまうが、一旦落ち着いて対応する。


「みなさん落ち着いて、どんな噂を聞いているかは知らないけれど決闘はしません。それに今年の主役はこのイロハ・コトネさんよ、忘れないでね。そしてもう一度言うけれど決闘はしません」


 わたしの言葉に残念そうな声が響いたが、みんな受け入れて新入生とイロハの挨拶に移ってくれた。

イロハはまだ大陸公用語のしゃべり方が少したどたどしいが、気さくな人柄ですぐに馴染めそうだ。

ハミィも愛嬌を振りまいて上級生達に早速気に入られている。

さて、そうするとそろそろ他国の生徒達とも交流を図るタイミングである。


「じゃあそろそろ他国の方にもご挨拶に行きましょう。イロハさん、代表を務めてもらえるかしら?」


「えっ、ぼくでいいんですか?」


「もちろん、あなた達の帰参は大陸中の大ニュースだもの。もちろんわたしが介添え役をするから作法などの心配もいらないわ」


 わたしはちらっとレゾナンスを始めとする【宰相派】の子息達の集団に目を向けながら告げる。

ふふふ、悔しかろう。これが皇帝陛下からの信頼というものよ。

彼らの悔しそうな顔を確認して満足したわたしはイロハを案内し王国の生徒達の方へ向かう。

後ろにはわたしと同じく満足げなリズムとオクターヴ、我関せずのハミィに申し訳なさげなブルースも続く。


「さあイロハさん、彼が【クラシック王国】の王太子、セバスティアン・ヴァン・クラシック殿下よ。まずは彼にご挨拶を」


 そう言って視線を促した先には、あちらも他国の生徒との交流に移ろうとしていたセバスティアン王太子を中心とする一団だった。

マリアやリタとも挨拶をしておきたいが、彼女達は少し離れたところでこちらの様子を見ているようだ。

ともかくイロハはわたしが促した通りセバスティアン王太子の方に向かった。


「ごきげんよう、お初にお目にかかりますセバスティアン王太子。ぼくは【シラベ国】より参りました、イロハ・コトネと申します」


「やあ、ごきげんようフロイライン・イロハ。俺も貴方に声をかけようと思っていたんだ、東海小国家群との交流といえば我が王国であるのに、帝国に出し抜かれてしまったからな」


「へっ!?えーっと……」


「セバスティアン王太子、イロハさんをからかわないであげてください。あなたはもう立派な紳士でしょう?」


 割って入るわたしにセバスティアン王太子は苦笑いで返す。


「失礼、フロイライン・イロハ。親の愚痴を聞かされすぎると影響されてしまうものだな。だがここは聖都、そういったことは謹んで貴方とも親しくやっていきたいと思っている」


「あ、はい!よろしくお願いします」


 イロハは見慣れない仕草をセバスティアン王太子に示す。

あれは確か【シラベ国】風のお辞儀だったか。

去年の論文コンテストのテーマが【シラベ国】だったこともありセバスティアン王太子もそれを知っていたのか、イロハに同じ仕草で返した。


「それと貴方と同じ学年で同性の者も紹介しておこう、マリア、こちらへ」


 そう言ってセバスティアン王太子は少し離れたところにいたマリアを呼び寄せる。

マリアはわたしの方をちらっと見て笑顔を見せてから、駆け寄ってきてイロハに挨拶をする。


「はじめまして、マリア・フォン・ウェーバーと申します」


「彼女は我が王国の宰相、アマデウス・フォン・ウェーバー伯爵の娘で類稀な剣の才能と気立ての良い性格の持ち主だ。ぜひ親しく付き合ってやって欲しい」


 セバスティアン王太子の紹介に合わせて、マリアは恭しくお辞儀をする。

それを見たイロハははっとした表情に変わった。

これは、来るか今年度最初の『事件』!


「マリアくん、きみは……そうか、きみがカグラ様がおっしゃっていた()()()()()()()()()……!」


 『地母神に選ばれた者』、その言葉にマリアも反応する。

その言葉は昨年度に魔導書とアリコーンから告げられていたからだ。

まあ魔導書の言ってることはほぼ無視したんだけれども……


「イロハさん、地母神に選ばれた者っていったいどういう意味なんですか?わたし、何回かそれを聞いたけれどよく意味がわからなくて……」


「ぼくも全てを知っているわけじゃないけれど、選ばれた者とはつまり地母神の後継者候補……新たな地母神になるかもしれない女性のことだよ」


 今明かされる衝撃の真実。

いや、わたしは【道標】を見ているからとっくに知っているし実際に地母神の代替わりが起きたことも今までないことまでわかっているけどね。

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