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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
三章
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55話

 四月、無事迎えた新年度。

わたしは二人の新入りを迎えるために【オラトリオ騎士学校】正門で待っていた。

一人目はドミナント・テンション家の末っ子、ハミィことハーモニー・ドミナント・テンション。

かわいい妹は我が家の馬車から元気いっぱいに降りてきた。


「お姉様、お兄様!お久し振りです、ハーモニーですよ!」


「ハミィ、いらっしゃい。元気そうで何よりだわ」


「相変らずそうで安心したよ。ほら、荷物持ってやるから出しな」


 リズムも交えて久々のきょうだい全員集合、わたし達はハグを交わして再会を喜び合う。

抱きしめたハミィの体は別れた頃と余り変わらず小さいのでそこはちょっと心配だ。


「ハーモニーちゃん、入学おめでとうございます!」


「わたし達はメロディ様の親衛隊をさせてもらっている者です!」


「何かお手伝いできることがあればなんでも言ってくださいね!!」


 親衛隊のみんなもいつの間にか用意していた横断幕と共にハミィを迎えた。

……一応手紙で彼女達の存在は伝えているがこれにはハミィも驚くんじゃないだろうか。


「わあ、お姉様がいつもお手紙で言っていた親衛隊のみなさんですね!こちらこそよろしくお願いします!」


 ハミィは可憐な笑顔を満面に浮かべてから、彼女達にお辞儀をする。

一気に辺りはかわいい!の大合唱となった。

我が妹ながら中々の対応力である。


「それじゃあハミィ、これから()()()を迎えるから寮に行くのは少し待ってくれるかしら?」


「了解です、お姉様」


 ハミィは敬礼の仕草をしてわたしの指示を受ける。

そう、わたし達きょうだいとオクターヴは()()()――【シラベ国】からの帰参者の子女の面倒を見るという任務をそれぞれの親から仰せつかっているのだ。

二人目の新入りとは彼女のことである。

親衛隊のみんなも交えて談笑しながら少しの間待っていると、オクターヴが手を振りながらやって来た。


「メロディさん、例の子の馬車、到着しました!」


「わかったわ、じゃあみなさん、出迎えにいきましょう」


 リズムとハミィがはーいと声を合せて返事をし、親衛隊のみんなは新しい横断幕を取出して出迎えの準備をする。

かなり頼れるようになってきたな、と思いつつオクターヴの先導についていくと馬車が止まってまさに編入生が降りてくるタイミングだった。

編入生――イロハ・コトネはすらりと背の高い、中性的な少女だった。


『イロハ・コトネ サブキャラ 所属:【勢力シナリオ】によって変化。

  【シラベ国】からやって来た編入生。

  ボーイッシュで陽気な少女。主人公と同学年。

  【シラベ国】の女王からある任務を託されているらしい。

  自軍ユニットとしての性能は器用に様々な役目をこなせるバランスタイプ。』


 今年は彼女をきっかけに『事件』が置きていくことになっている。

面倒を見るように言われていることを活かして彼女とも上手くやっていきたいものだ、と思いつつわたしは代表として彼女に話しかけた。


「【オラトリオ騎士学校】にようこそ。あなたがイロハ・コトネさんね?」


 こちらを振り向いた彼女はわたしが差し出した手を握り返しながら答える。


「はい、いかにもぼくです。えーっと、()()というのはこれでいいですよね?」


「ええ、大丈夫よ。わたしは帝国大将軍ビート・ドミナント・テンション侯爵の娘、メロディよ。あなたも聞いていると思うけれど、この学校でのあなたの世話役を仰せつかっているの」


 イロハ・コトネは少し考えてから、納得したように頷く。

そして辺りを見回して、親衛隊が掲げる横断幕に気がついてすこし驚いた素振りを見せたあとに続けた。


「お話はきいています、ドミナント・テンション家のメロディさん。あとリズムくんにハーモニーちゃん、ダイアトニック・コード家のオクターヴくんに困ったことは聞けば良いと」


「はーい、わたしがハーモニーです!ハミィって呼んでくださいね」


「俺がリズムだ。よろしく、イロハさん」


「それで僕がオクターヴです。慣れない環境で不安だろうけどよろしくね」


 リズム達が次々にやって来て自己紹介をする。

イロハ・コトネは順番に握手をして、よろしくと挨拶を交わした。

そして少し躊躇しながら、わたしに質問をした。


「ところであの盛大にぼくを迎えてくださっている方々は……?」


「彼女達はわたしの親衛隊……慕って下さる人達よ。いい子ばかりだから仲良くしてあげてね」


「メロディ様そんなありがたいお言葉!」


「メロディ様に恥じないようにがんばってきた甲斐がありました……」


「イロハさんもメロディ様の素晴らしさがわかったら是非親衛隊に!」


「へぇ……大陸には楽しそうな集まりもあるんですね」


 別に大陸の風習とかではないんだけどね。

まあこれで挨拶は大体済んだ、そろそろ寮へと移動するとしよう。

わたしはみんなに移動を提案し、みんなはそれに従って移動を始める。

ハミィがイロハ・コトネの手を引っ張って先導し、それをリズムとオクターヴが追いかけ、わたしと親衛隊のみんなはその後ろに続く。


「イロハ先輩、あとでいっしょに構内を探検しましょうね!」


「はい、でもここは広いから案内してくれる人もいてくれた方がいいんじゃないでしょうか?」


「それならこのオクターヴ・ダイアトニック・コードに任せてください」


 うん、ハミィが楽しそうで何よりだ。

これからもこの【オラトリオ騎士学校】で楽しく過ごして欲しいものだ。そのために……

あの子の【秘密】がバレないように、後でちゃんと注意しておくことにしよう。

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