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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
二章
54/97

53話

 迎えた十二月、聖誕祭パーティー。

親衛隊のほとんどがデート目当てにダンスコンテストに出場しているので今年もわたしは身軽な時間を楽しんでいた。

リズムはマリアと、オクターヴは親衛隊の確かカリプソという帝国出身の女子と、レガートは去年同様セバスティアン王太子とパートナーを組んでダンスコンテストに出場している。


「そういえばクレシェンド公、レガートが他の男性とパートナー組んでいるのはいいんでしょうか?」


 わたしは呑気に取皿に山盛りにした料理をつまんでいるクレシェンド公に尋ねる。


「んー?別にいいよ。私がダンスなんてしたら足を踏んだり転んだりでみっともないからね」


「はあ……」


 構わないらしい。

まあ一応技術を競い合う名目のコンテストだし、本人がいいと言っているならいいのだろう。

わたしとしてもさっきから出場者の集団の中からマリアを探してきょろきょろしているブルースがわたし以外の女子とパートナーを組んでいても別に構わないわけだしな。


「やっほー、メロディ。今年は誰とデートできるか楽しみ、ってところかな?」


「ごきげんよう、リタ。だからわたしはそういうこと狙ってやっているわけじゃないからね?」


 そんなことを考えているとリタが話しかけてきた。

最近彼女はヨハン少年&ヨハンナ少女とよくいっしょにいるので今日もそうだと思っていたが、予想は外れて一人のようだった。


「あら、マリアの従士の二人はいっしょじゃないのかしら?」


「うん、あの二人はダンスコンテストに出場しているからね。ほらあの辺りにいるよ」


 リタが指差す方を見ると、たしかに彼らは出場者の列に並んでいた。


「あの二人最近いい感じなんだよ。ヨハンの方が子供過ぎるからちょっとじれったいけどね」


 なんと、それはわたし達にとって都合のいい展開だ。

彼をマリアと引き離しリズムといっしょにいるように仕向けた甲斐があったというもの。


「だからメロディ、ヨハンナにはちょっかいかけないように頼むよ?」


「いやだからそういうこと狙ってないって言ってるでしょう……」


 ちょっとげんなりしたところで、社交マナー担当の教官がダンスコンテスト開始を告げる声が聞こえる。

楽隊が奏でる楽曲もダンスコンテストの課題曲に変わったので、視線を参加者達に移す。

参加者達は順番に歩み出て踊り始めた。

一番目立つのはやはりレガートとセバスティアン王太子、その技術は明らかに飛び抜けている。

ついつい惹かれてしまう目線を移して、リズムとマリアを見れば二人もがんばっているがわたしの目からもレガート達に比べて物足りなさを感じてしまう。

ムーサ師匠は裏で手を回すと言っていたが、怪しまれるな絶対……などと考えていたそのとき。


「きゃっ!!」


 ある一組がバランスを崩してしまったのが見えた。

よく見ればヨハン少年とヨハンナ少女のペアである。

体勢を整えたあともなにやらぐちぐちと言い合っていている様子で、正直技術は足りていないのだが見ていて微笑ましかった。

彼らを見ていると、なんだかわたしの気持ちも軽くなっていくようだ。


 まあ八百長についてはやっちゃったものは仕方ない。

気を取り直して参加者達のダンスを見て楽しむとしよう。

オクターヴが親衛隊を組織してくれたおかげで彼女達全員の個性を把握でき、結果参加者のほとんどが知人という状況だからどこを見ても応援できる。

もちろんレガートとセバスティアン王太子のダンスは格別に素晴らしい。

そんな風に楽しんでいる内に、課題曲が終わる。

わたしは参加者全員に向けて惜しみない拍手を送った。


「優勝はリズム・ドミナント・テンションとマリア・フォン・ウェーバーのペアです!」


 優勝者の発表にやはり不審そうなどよめきが起きたもののダンスコンテストは終了した。



 優勝者へのご褒美のデートの時間。

今年はどうなるのかと思いきや、わたし、リズム、マリアの三人でパーティーを抜け出し庭園で打ち上げという形になった。

とはいえマリアは浮かない顔である。


「わたし、どうしても実力で勝った気がしなくて……」


 うん、八百長だからね……

彼女になんと言うべきかわからずわたしが口ごもっていると、リズムが代わりに口を開く。


「こうなったら、俺達が結果に相応しい実力を得るしかないんじゃないかな」


「実力を得る?」


「ああ、実力を身に着けて、来年は正々堂々とレガート先輩たちに勝つんだ」


「そっか……うん、そうするしかないよね」


 リズムの表情が、少しだか柔らかくなる。

やるじゃないかリズム!これは、かなり二人の仲が深まっていくシチュエーションでは?

よし、ここはさり気なく姿を消して二人っきりのいい雰囲気にしてあげよう。

そう思ってこっそり抜け出そうとしたわたしを呼び止める声がする。


「姉上?なにしてるんですか、まだご褒美の最中ですよ」


 いや、リズム何言っているの!?

マリアとはやくこう、いい雰囲気になっちゃいなさいよ!!


「そうだ、メロディ先輩!わたし達が踊っているところを見て指導してくれませんか?」


 ほらマリアも乗っかっちゃったじゃん!

ああもう、しょうがない。やるからにはびしばし指導しちゃうからね!


 というわけで打ち上げ改めリズムとマリアの特訓でその夜は更けていった。

賑やかで絆は深まったと思うけれど、やっぱりここは二人っきりになるべきところじゃないのかな?

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