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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
二章
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52話

「地母神に呼び出し食らったけどどうしよう会議の時間よ!」


 黄金竜の封印後、教官達から剣術トーナメントの中止が言い渡されわたし達生徒は寮で待機するように指示された。

ムーサ師匠が迅速に解決したので死者は出なかったものの、武闘場は吹き飛んだから後処理は大変だろう。

それは置いておいて、寮に戻ったわたしとリズムはお馴染みの修練場に飛ばされた。

なのでわたしは早速ノイズを介した地母神からのメッセージを報告し、対策会議を始めようとしたのだが。


「いや、それは問題ないだろ?」


 ムーサ師匠の反応は素っ気ないものだった。


「なくはないでしょう!?神様に怒られてるんですよ!!」


 わたしは食い下がるが、それでもムーサ師匠は落ち着いたものである。


「呼び出されたってのは怒られてるのとイコールじゃないだろ。そもそも地母神の力はあたしの魔法よりも上位なんだ、気に食わなかったらすぐにかき消せる。でも君は今も【道標】を見ることが出来ている、だろ?」


「それは……そうですけど」


 ムーサ師匠の言う通り、わたしの目の前には相変らず【道標】が浮かんでいる。

呼び出しが即ち地母神の怒りではないというのもわかるが、それでも不安は消えない。


「そもそも神座っていうのは神話にある神座のことでいいんですか?」


 そんな中リズムがムーサ師匠に質問を投げかける。

それに反応して【道標】も『用語辞典』のページを表示する。

うん、こういうときの挙動も普段と変わっていないようだ。


『【神座】

  世界を統べる者が座す場所。かむくら。

  現在は創造主である【地母神ヴィルトゥオーソ】が座している。

  彼女はこの座をいずれ人類に譲り渡すことを望んでいる。』


 最後の一文以外はこの世界の誰もが知っている常識だ。

正直神座で待つなんて言われても行き方なんて誰も知らない場所なのだが。


「その神座のことだろうな。あたし達には辿り着けない場所だから()()()が来たら地母神が招くっていう形になるんだと思うぜ」


()()()?」


「君達が【トゥルーエンド】を迎えたときさ」


 なるほど、【道標】にはそこまでしか記されていないからそのあとに神座に招かれるかもしれないという情報は載っていないということか。


「【トゥルーエンド】で安心した後に姉上が地母神に罰を受けたら、それはなんの意味もないじゃないですか!」


 帝国とドミナント・テンション家の未来を守ることが出来たなら無意味ではないが、ここまでがんばって来たのだからわたし自身の幸せも諦めたくない気持ちはわたしにもある。

なのでリズムの言葉に合せてすがるようにムーサ師匠の方を見つめて助けを求める。

するとムーサ師匠は大きな溜息をついてから答えた。


「落ち着けって。あたしは歴代の【魔法使い】から多くの知識を継承しているが、今みたいな『主人公』が現れる運命の変わり目に【トゥルーエンド】に辿り着いた勝者を地母神はちゃんと祝福し守ってきたことがその中にある。ちゃんと我らの神様を信頼しろよ」


「神様を信頼……そう言われるとそうですね」


 言われてみるとわたし達をいつも見守っている地母神を恐れすぎるのは罰当たりなのかもしれない。

わたしとリズムは顔を見合わせ少し考えたあと、それで納得して頷きあった。


「よし、じゃあ今日君達を呼び出した本題……聖誕祭パーティーのダンスコンテストの話をしよう」


 ムーサ師匠は手を叩いて話題を変えた。

確か聖誕祭パーティーでは『事件』は起きず、普通にマリアと『攻略キャラ』がパートナーとなってダンスコンテストの優勝を目指すはずだ。


「ダンスコンテストなら、もう最初に誘えば組んでもらえるくらいの仲にはなっていると思いますし、優勝出来るように特訓するだけですね」


 リズムが自信満々に答える。うんうん、頼もしいぞ!

問題は今年もレガートとセバスティアン王太子がパートナーとなって出場したらかなりの強敵になるという点だ。

リズムも侯爵家の跡取り息子としてそれなりに仕込まれているしマリアも同じだろうが、あの二人のダンスは正直レベルが違った。


「ああ、そのことだがあたしが裏で手を回しておくからリズムくんとマリア・フォン・ウェーバーで組んで出場さえしてくれればどんなダンスでも優勝させられるぜ」


「ひどい」


 思わず口に出てしまった。

いや、ありがたいんだけれども!



 それからしばらく経ち、ダンスコンテストの参加申込期間が始まった。

わたしは今年も出場するつもりはないし、リズムがちゃんとマリアとパートナーになれたか様子を見に行くか、と思っていた矢先。


「メロディ先輩~~~!!」


 マリアがリズムを引っ張ってものすごい勢いでやって来た。


「えっと、マリア、どうしたのそんなに急いで?」


「聖誕祭パーティーのダンスコンテストのことなんですけど、優勝したらメロディ先輩とデートできるって本当ですか!?」


 あー……そういえば去年そういうことになってたな。


「そうですよ、マリアちゃん」


「わたし達もそのために参加するつもりです!」


「レガートさんは強敵ですけど、今年こそ勝ち取ってみせます!」


 話を聞きつけた親衛隊のみんなが続々とやって来る。

いや、まだ今年もそうするとかわたしは一言も言ってないんだけれど。


「今年もわたしが勝つよ」


 レガートも仁王立ちで会話に参加してきた。

どうやらもう完全にそういうことになってしまっているらしい。

引きつった笑みを浮かべるわたしを見て、マリアが心配そうに話しかけてくる。


「リズムにダンスコンテストに誘われて、申込に行こうとしたらこの話を聞いたからびっくりしちゃって……メロディ先輩、デートなんて本当にいいんですか?」


「デートじゃなくて、ちょっと一緒に過ごすだけだから心配しなくてもいいわ。そんなことより、ダンスコンテストに出場するなら応援するからがんばってね」


「大丈夫ならいいですけど……とりあえず、出場するからには優勝を目指します!」


 まあリズムとマリアがパートナーになるという目的は達せられたし良しとしよう。


「ああ、ところで姉上、デートって俺もしてもらえるんですか?」


 ってリズムも何を言っているのかな?

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