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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
二章
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47話

 剣を構えつつ、状況を確認する。

目の前に殺気立ったアリコーン、後ろにはオクターヴと親衛隊のみんな、他の生徒達はずっと後方にいる。

先程押し寄せた強風はアリコーンが翼を用いて巻き起こしたもので、これを使った後しばらくアリコーンは飛行することが出来なくなる。

飛行している敵と戦うのはこちらが圧倒的に不利なので、これは好都合だ。

わたしは冷静に、予定通りの指示をオクターヴに伝える。


「オクターヴ、無事ね!?」


「はい、他のみんなもかすり傷だけです!」


「だったらこいつはわたしがなんとかするから、みんなを連れて逃げて、それから余計な手出しをしないように見張ってちょうだい!」


「……!一人でやるつもりですか!?僕も……」


「わたしの言うことが聞けないの!?」


「……聞きます!」


 少し手間取ったがオクターヴはわたしの指示に従い親衛隊のみんなと後退していく。

最後の返事がなんだか興奮してそうに聞えたのは多分気のせいだから気にしなくていいだろう。

なにしろアリコーンがこちらに突進してきているところなのだから!


「はあぁっ!!」


 がきんっとアリコーンの角とわたしの剣がぶつかる音が鳴り響く。

よし、最初の攻撃は上手く受けられた。

そして角はユニコーン、及びアリコーンにとって特別な部位。そこに触れられたとあっては向こうの敵意はわたしに集中するはず……


 アリコーンは雄叫びを上げた。

計算通り、激昂し標的をわたし一人に絞ったようだ。

あとはムーサ師匠との練習通りアリコーンの攻撃をひたすら凌ぎ、マリアとアリコーンが心を通じ合わせるイベントが起こるのを待つだけだ。

だがここでわたしはここで聞こえるはずのない声を聞いた。


「やだ……誰か助けて……」


 それはアニマート・ラメントの声だった。

なんでアニマがここに!?

アリコーンの攻撃を凌ぎつつなんとか隙を見て声のする方を確認すると、わたしがアリコーンを待ち構えていた場所から少し離れたところにへたり込んでしまっているアニマがいた。

もしかしてわたしの様子が変だったからついて来ていた?

そしてオクターヴ達と合流したから話しかけるタイミングを失って、少し離れたところで様子を伺っていたときにアリコーンの起こした強風に巻き込まれたのか?


「アニマ、立ち上がって!早くここから離れなさい!!」


 あの様子だとアリコーンに攻撃しようとはしないだろうが、彼女を気にしながらだと戦いにくい。


「ふえ……メロディ様……」


 しかしアニマは完全に混乱していしまっているようでへたり込んだままだ。

それでも騎士かしっかりしろ!……と言いたいところだがアリコーンの攻撃が激しくなりそれどころではない。

どうする、こちらから攻撃できない上に彼女を守りながら戦う程の余裕はないぞ。

ついでに迷っている暇もない!!



 その頃、リズムとマリア、そしてノイズは騒ぎを聞きつけアリコーンの襲撃地点に到着したところだった。

そこではオクターヴと親衛隊達が他の生徒が手出しをしないように呼びかけつつ、メロディの戦いを見守っている。


「リズム!今メロディさんが一人でなんとかするからってアリコーンと……」


「だいたいわかった!」


「速いな!?」


 リズムとオクターヴの会話の横で、戦いを観察するマリアが真っ先に気づく。


「逃げ遅れている人がいます!」


「えっ、親衛隊はみんな揃って……いや、本当に誰かいる!」


「メロディ先輩の動きが少し鈍い……多分彼女に気づいて巻き込まないようにしながら戦っているから」


 このままメロディ一人に任せて本当に大丈夫なのか?という不安がその場にいる者達の頭によぎる。

そこにちょうど、一人の少年の大声が響いた。


「何を呑気にしているんだ貴様らは!!」


 それはロック・モードのものだった。

後ろにはヨハンナ・シュトラウスもいた。

彼らも騒ぎを聞きつけてこの場に駆けつけてきたのだ。


「希少種とはいえ獣一匹に怖気づいて見ているだけか?どけ、俺があれを片付けてやる」


「やめろ!!」


 リズムの叫びに、ロックは訝しげに問う。


「貴様……あそこでもたついているメロディ・ドミナント・テンションの弟だろう。姉一人に戦わせてどういうつもりなんだ?」


「それは……姉上には姉上の考えがあるから……」


 【道標】のことを話せないため、どうしてもリズムの反論は歯切れが悪くなる。

そんな答えにロックが納得するはずもなく、彼は剣を抜いてアリコーンの元へ向かうのをやめない。

だがそこで、意外な助け舟がリズムに入った。


「ロック、今回は大人しく見ていよう。僕からの頼みだ」


 ノイズがロックを静止したのである。

ノイズの言葉だけあって、ロックは立ち止まり振り返る。


「ノイズ、それは君が俺に()()()()()()絡みなのか?」


「……うん」


 やや間を置いて、ロックは剣を収めた。

そして彼らは再びメロディとアリコーンの戦いに目を向ける。

攻撃を禁じられているメロディは、傍目には苦戦しているように見えている。


「メロディ先輩……!」


 マリアが不安からメロディの名を呼んだそのとき、不思議なことが起こった。

アリコーンが仄かに光り輝き出したのである。


「あれは……!」


 リズムは気づく、それは一定時間アリコーンに対して一切攻撃をせず耐え凌ぐという条件を満たした証。


「この声は……誰なの……?」


 そしてマリアは、アリコーンの声を聞く。

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