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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
二章
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45話

「よっしゃ、じゃあ野外演習に向けた作戦会議だぜお子様達~~~」


 寮の自室に戻るともはやお馴染みの修練場に魔法で飛ばされて、妙に機嫌のいいムーサ師匠がいた。


「部屋に戻るといきなり女性がいるのどうしても慣れないんですか……」


「おっとリズムくん、初心だなぁ。あたしで慣れておこうくらい思わないと駄目だぜ?」


「なにかあったんですか、ムーサ師匠?」


 ちょっと気になったので率直に質問をしてみる。

するとムーサ師匠はくっくっくっと笑ってから、やはり上機嫌で答えた。


「んー?いや、本業の方が上手くいってるってだけだぜ。面倒なことばっかりで成果が目に見えるってのが滅多に無いからな、ノリも良くなるさ」


 ムーサ師匠――【魔法使い】の本業といえば【ムジカの上王】の補佐、政治的なお仕事である。

それは確かに常に面倒なことばかりだろう。

具体的に何が上手くいったのかは下手に首を突っ込んだらややこしくなるだろうか聞かないでおこう。


「まあそんなことより作戦会議だ。まずアリコーンって生き物のこと、君達はどれだけ知ってる?」


 ムーサ師匠の問いに、少し考えてからわたしが答える。


「ユニコーンから極めて稀に生まれる有翼の変種で、どういった要因で発生するのか、明らかに筋力が不足しているのにどうして飛行できるのか一切不明。だから『地母神が未来の前兆として作り出している』という説が一番有力になっている希少な生物……ですね」


「うん、そんなところだな。じゃあ具体的になんの前兆であると伝わっているか、次はリズムくんが答えてみろ」


 矛先が急に飛んできても、リズムは落ち着いて問に答える。


「アリコーンは新たな王が立つ前兆と言われていて……即ち現在の王に変事が起こる凶兆とされています」


「その通り!今回は【竜王戦役】の前兆ってことになるな」


 そんな生き物が襲撃してくるという今度の『事件』。

しかもさらに厄介な()()が今度の作戦にはあるのだ。


「それでこのアリコーンをいっしょに対処した【攻略キャラ】に対応した【勢力フラグ】と【キャラフラグ】が貯まるわけだが、普通に打ち倒すだけだと大量の【カルマポイント】も貯まってしまうわけだ」


 そう、【カルマポイント】を最小限に抑えた【トゥルーエンド】を目指すわたし達にとってここはなんとしても打ち倒すのではない()()()()()()()()を取らなければならない。

しかしこれがかなり面倒なのだ。


「【道標】によると、一定時間アリコーンに対して一切攻撃をせず耐え凌ぐとイベントが発生してマリアとアリコーンの心が通じ合い大人しく森に帰っていく、らしいですね」


「心が通じ合うっていうはよくわかりませんが、興奮している野生動物に一切攻撃をせず凌ぐってかなり難しいですよね?」


 リズムの言う通りである。

しかも攻撃をしてはいけないのは『事件』に遭遇した生徒全員が、である。

わたしとアリコーンとの一対一ならある程度の時間防戦で凌ぐくらいできるけど、他の生徒達を気にしながらなんて無理……ってあれ?


「もしかして、今のわたしなら他の生徒に手出ししないようにさせられる?」


「その通り!」


 ムーサ師匠が手を叩いてわたしの考えを肯定する。


「モテモテな剣術トーナメント優勝者の君がここは任せて、と言ってアリコーンを引き受ければほとんどの生徒は言う通り任せるだろうし、一部が飛び出そうとしても君の親衛隊だっけ?取り巻きの子達が引き止めてくれるってわけさ」


「なるほど……さすが姉上!」


 そうでもあるけど一々褒めなくてもいいぞ弟よ。

つまり【道標】にあるアリコーンの出現位置にあらかじめ待機、速攻でアリコーンと戦闘に入ってわたしに任せろ!と周囲の介入を拒めばいいわけだ。


「じゃあこれからやることは……姉上はカメーナエ卿と対アリコーンの戦闘訓練、俺は心が通じ合う方のイベントの流れを頭に叩き込んでおくこと、ですね」


 うん、飲み込みが早いぞ弟よ。

しかしもう一点覚えてほしいことがあるので追加しておこう。


「そうね、でもリズムは一年生の課題――ユニコーンの狩猟もこなすわけだからそっちの予習もね?」


「あ、そうでした。俺の班にはユニコーン狩りの経験があるやつはいなかったから、姉上がやったときのことを教えてくれますか?」


「もちろん!」


 わたしは去年の野外演習でのユニコーン狩りの流れを詳しくリズムに教えた。

それを聞いたリズムは少し考えてからぽつりと感想をこぼす。


「なんか……気持ち悪い生き物ですね?」


「やっぱりそう思うわよね!」


 考えることは大体みんな同じだった。


「ユニコーンってのは観賞用に作られた【幻想生物】で、古代超帝国時代に伝わってたおとぎ話の生態をそのまま再現した結果がアレらしいぜ」


 ムーサ師匠による解説で明かされるユニコーンの真実。

じゃあ自分達で望んであんな気持ち悪い生態になったわけじゃないのか、ちょっと可哀想。



 その後わたしは演習の授業ではアニマと交友を深めつつ陣地構築の練習、ムーサ師匠との修行では魔法で作られたアリコーンの幻影相手に一切攻撃をしない防戦の練習、といった風に野外演習に備えた。

今回の事件も上手く乗り越えて、目指せ【トゥルーエンド】だ!

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