表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
二章
45/97

44話

 今年の野外演習が近づいてきた。

ということは野外演習の班分けが発表されるということである。

朝の勉強会を終えて掲示されている班分け表を見に行くと、そこには既にリタがいた。


「おはよう、リタ」


「あっ、おはようみんな。レガートには残念だけど今年は違う班だったよ」


「そんな」


 レガートはさっと動き出し人混みをかきわけて班分け表を確認しに行ってしまった。

わたしは急がずにちゃんと並んで班分け表を見る。


『第一班 アニマート・ラメント

     メロディ・ドミナント・テンション

     セバスティアン・ヴァン・クラシック』


 おっ、今年はセバスティアン王太子と同じ班なのか。

公国の生徒は名前に聞き覚えがないな、親衛隊に入っている子なら覚えているのだけれど。

まあ【道標】も反応しないし、あまり気にせずそこそこに仲良くやれたらいいな。


「本当にいっしょじゃなかった……」


 レガートの嘆きが聞えてくる。

残念だけどそんなに毎年上手くいくはずもないし、諦めなさいという思いを込めて頭を撫でてやる。

すごい勢いでこっちを向いて少し輝いている、ように見えなくもない瞳でわたしを見つめるレガート。

期待してもこれ以上はないぞ、ということで視線をそらして一年生の班分けを確認する。

えーっと、マリアの名前はっと……


『第三班 ノイズ・マイナー・セブンスコード

     リズム・ドミナント・テンション

     マリア・フォン・ウェーバー』


 なんということでしょう、めちゃくちゃ上手くいっている。

これなら野外演習で起きる『事件』にも上手く対応できそうだ。

気分がいいのでオクターヴ達がどういう班分けになったかもついでに見ちゃおう。


『第四班 ロック・モード

     オクターヴ・ダイアトニック・コード

     ヨハンナ・シュトラウス』


 オクターヴはロック・モードのやつといっしょか、上手くやれるといいけど……

ブルースの方はどうかな?


『第一班 クレシェンド・ピアノ・コンチェルト

     ブルース・ストレイン

     エリーゼ・シューマン』


 こっちはクレシェンド公と、親衛隊に入っている王国の子といっしょのようだ。

クレシェンド公の世話は大変そうだがそれ以外は上手くやれそうかな。

大体確認できて満足したわたしは掲示の前から離れてみんなと合流する。


「お待たせ、みんなも確認できた?」


「はい、姉上。マリアといっしょで少し安心しました」


「仲のいい人といっしょだとうれしいですよね。ヨハンは知らない人達といっしょで大丈夫?」


「そんな子供にするみたいな心配しないで下さいよ!」


 そして雑談をしながら朝食を取りに食堂へと向かうのだった。



 演習の授業の時間になり、班ごとに集まるわたし達。

既に知った仲のセバスティアン王太子に軽く挨拶をしてから、初めて会話するアニマート・ラメントの方を見る。

彼女はなんだか緊張している様子だ。まあ一国の王太子と色々目立っているわたしと同じ班だものな。

ならばここはわたしから会話を始めるとしよう。


「わたしから自己紹介させていただくわね。メロディ・ドミナント・テンション、メロディと呼んで下さい」


「俺は【クラシック王国】王太子、セバスティアン・ヴァン・クラシックだ。堅苦しくするな、というのは無理だろうがよろしく頼む、お嬢さん(フロイライン)達」


 わたしの自己紹介にセバスティアン王太子も続き、アニマート・ラメントの番になる。

彼女は少しきょろきょろとしてから、意を決したように口を開く。


「えっと、わたしはアニマート・ラメント、アニマと呼んで下さい。あの、実はずっとメロディ様に憧れてて、でもわたしなんかが近づいていいのかって思って、話しかける勇気もなくて……同じ班になれてとても光栄です!」


 顔を真っ赤にしながらそんなことを言われた。

なるほど、そういうタイプのファンもわたしにはいたのか……

せっかくの機会だ、存分にファンサービスしてあげよう。


「こちらこそそう思ってもらえて光栄だわ。野外演習はよろしくね、アニマ。あとメロディって呼び捨てにしてくれないかしら?」


「そんな、恐れ多いです!!やっぱり愛称ではなくアニマートと……」


「いいじゃない、ほら握手」


「あ、あ、握手!メロディ様のお手に!?」


 なんか少し面白くなってきたな。


「あー、フロイライン・メロディ?フロイライン・アニマで遊ぶのはその辺にして、今年度の課題の確認に入りたいのだが」


 セバスティアン王太子にたしなめられてしまった。


「ごめんなさい、つい可愛くって。アニマもからかっちゃってごめんなさいね?」


「ひゃい……かわいい……」


 二年生の課題は陣地構築であり、覚えておかなければならないことが去年よりもずっと多い。

そこから先はちゃんと真面目に野外演習のしおりを見てやるべきことを確認した。

わたし達が準備した陣地で先輩と後輩が一夜を明かすのだから責任は重大である。


 それに野外演習で起きる『事件』に上手く対処するために陣地内の位置関係もしっかり頭に叩き込んでおかなければならない。

夕食中の【幻想生物】の襲撃――ユニコーンの希少種である有翼のユニコーン(アリコーン)に対処するために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ