表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
二章
41/97

40話

「それは駄目だ!!」


 リズムがものすごい勢いで反対をした。

あまりの勢いに驚いてリズムの顔をじっと見ていると、慌てたように反対の理由を説明しだす。


「あー、だって、それはつまり……また姉上に喧嘩を売らせるってことでしょう?」


「そうだな、果たし状でも送ってやればほいほい食いつくんじゃないか?」


「そういうの!よくないと思うんです。姉上の印象が血の気が多い感じになり過ぎます!」


 リズムの言う通り、二年連続歓迎パーティーで決闘なんてやらかした直後に後輩を呼び出してシメるとか、かなり外聞がよろしくない。


「そうですよ、ムーサ師匠。もうちょっと穏当なやり方でいきましょう」


「えー、女子生徒ハーレム築いてる時点でよそからの印象もなにもないんじゃないか?」


 ムーサ師匠は作戦が反対されたことに不満気だった。

しかしわたしとリズムの二人がかりの反対なので、渋々といった風に新しい作戦を一緒に考えることになった。


「それじゃあ回りくどくなるが、こういう感じで行こう」


「ええ、これなら穏当ね。そうでしょう、リズム?」


「これじゃ更に敵が増え……いや、なんでもないです。仕方ないですね……」


 なぜかリズムの様子が少しおかしいが、無事新しい作戦は決まった。

その後ムーサ師匠の魔法でそれぞれの部屋に帰してもらったわたし達は抜け出したことがバレることなく翌朝を迎えるのだった。



「さあ、朝の勉強会を始めましょう!」


「あの、メロディ先輩?人数がとてつもなく増えているんですがこれは……?」


 マリアが疑問を呈した通り、自習室は大盛況となっていた。

リズムとマリア、ヨハン&ヨハンナ従士コンビに加えてわたしとオクターヴにブルース、レガートとクレシェンド公にリタ、更には親衛隊の選抜メンバーも集っているのだ。

状況を理解しきれていないマリアと従士コンビにわたしから説明をする。


「昨日あなたがヨハンくんを勉強会に誘ったと聞いて気がついたの、勉強会を必要としている人は他にもいるということにね」


 わたしはレガート(とクレシェンド公)の方を見る。


「めんどくさい……でも朝からメロディといっしょ……」


「くすくす、お手柔らかにお願いします」


「さあ、早速今日提出の課題の確認から始めましょう。マリアにはリズムとオクターヴ、ヨハンくんにはリタとヨハンナさんがついてあげて。レガートとクレシェンド公は……手強そうだからわたしとブルースと親衛隊の皆さんの総力を上げてお手伝いします!」


 わたしの指示にリズムとオクターヴ、親衛隊のみんなは「はーい!」と元気に従い、他のメンバーも戸惑いつつ従う。

よし、計画通り。勉強会に参加する人数を更に増やすことでマリアとヨハン少年のグループをバラけさせるのが新しい作戦なのだ。

朝の鍛錬の時間が取れなくなるのは痛手だが、その分夕方の鍛錬のメニューを増やしてなんとかしよう。

とりあえず今はレガートとクレシェンド公の課題を確認だ。


「ではクレシェンド公、課題を拝見させて頂いても?」


「ええ、どうぞ」


 クレシェンド公がにこやかに差し出した課題の用紙には、大きな字で『わかりません』とだけ書いてあった。

わたしは引きつった笑いでレガートの方を見る。

レガートも課題の用紙を取り出したところで、それは潔く真っ白だった。

正直予想はしていたが、駄目だこの子達……!


「大丈夫かい、メロディ?」


 思考が顔に出ていたようで、ブルースに心配されてしまった。


「大丈夫よ……やると言ったからにはきっちりやりますから。いいですね、クレシェンド公にレガート!」


「うん、よろしくねメロディ」


「頼りにしますね、メロディさん」


 二人に緊張感はまるで無かった。



 メロディがレガートとクレシェンドの有様に顔を引きつらせていたその頃。

リタはメロディの意図について思考を巡らせていた。

一つ、メロディは女子生徒ハーレムを目指している。

一つ、マリアとの決闘のとき、メロディは()()()()()()()()()()()()()()をしていた。

一つ、マリアとヨハンが一緒に過ごすと聞いて即介入してきた。


(これは……メロディってば、マリアを標的に決めたな?)


 最初の前提は間違っているものの、メロディの目的がマリアに関係しているのは正解である。


(リズムくんとオクターヴくんはメロディに対してとても好意を抱いている、彼らはメロディに従う『虫除け』ってところかな)


 考察を続けつつ、リタはヨハンの方に目をやった。

ヨハンはヨハンナに怒られつつ、四苦八苦しながら課題に取り組んでいる。


(ヨハンのやつ、恋愛感情にはまだ無自覚だしヨハンナともいい感じだったりするんだよね……ここはメロディに協力してあげますか)


 リタはにやりと笑ってから、課題に取り組む二人に声をかける。


「二人とも相談なんだけどさ、これからの勉強会の時間は朝じゃなくて夕方にしない?」



 同じ頃、オクターヴもまたメロディの意図について思考を巡らせていた。

一つ、メロディさんの指示でリズムはハーモニーの恋愛テクニック講座を受けていた。

一つ、メロディさんはどうやらリズムとマリアを一緒にいさせたいようだ。

一つ、リズムのメロディさんへの愛は度を越している。


(メロディさんはリズムを姉離れさせたいってことなのかな?)


 メロディがリズムの愛を見誤っていることをオクターヴは知らない。


(気になるのはリズムがそれに大人しく従っていることなんだけど……)


 オクターヴはリズムの様子をうかがう。

マリアに対して優しく、親しげに振る舞っているように見えるが幼馴染であるオクターヴには一目瞭然だった。


(メロディさんと一緒にいるときの()()の目と全然違う……道は険しそうですよメロディさん!)


 誤解やすれ違いが生まれつつも、今のところメロディの思惑通り帝国の【勢力フラグ】とリズムの【キャラフラグ】は着実に貯まっている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ