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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
序章
4/97

4話

【トライアド帝国】の美徳である質実剛健を体現した、壮麗さを排し威容を誇るトリニティ宮殿。

皇帝陛下の居城で現在わたしとお母様が訪れている場所である。

なにしろわたしは侯爵令嬢なので、ここにも幾度となくお招き頂いたことがある。

緊張して固くなることも気を抜いて粗相をすることもなく、完璧な所作で振る舞える。

とはいえ今日招かれている者は全員出来ることなので自慢はできないが。

わたし達親子と同じような皇帝陛下と親しくさせて頂いている上級貴族。

政治と軍事だけではなく芸術・学問にも明るい皇帝陛下が選びぬいた国内、いや【ムジカ大陸】でも有数の芸術家と学者達。

ここにいるのはそういった面々なのだ。

不自然にならないように気をつけながら参加者の名前と装いをチェックする。

流行に常に敏感でいるのも【騎士】の嗜みだ。


そして流行の最先端にいるのはもちろん皇帝陛下。

公の場での皇帝陛下の装いは軍装が基本だが、この場はお茶会なのでアフタヌーンドレスだ。

【トライアド帝国】の皇帝色である青を基調にした淡い色彩の装束に上品な真珠の装飾品、金の長髪は緩く三つ編みにして横に垂らされている。

体のラインを見せないかつ、動きを阻害する余計な布地もない一般的な帝国様式の装いに見えるが足元の非常に高いハイヒールが唯一それに反している。

だがこれは安易に真似してはならないところ、なぜなら()()()()()()()()()()()()()()皇帝陛下の実力を示威するためのものだからだ。

この場にいる者の中でハイヒールを履けるのはお母様を含めてほんの一握り。

わたしも早く履ける側に入りたいものだ。


そう思いながら皇帝陛下を見ていると面倒なことに気がついた。

今皇帝陛下とお話している相手……ストレイン親子だ。

母親のトランス・ストレイン伯爵夫人は早くに夫を亡くしたが優れた手腕で領地を経営しており、実父の遺した貴重な四百冊の蔵書を複製し帝国図書館に寄贈した学術的功績で皇帝陛下の覚えも目出度い。

今日招かねていることになんの不思議もない方なのだが、なぜ面倒なのかというと……

息子のブルース・ストレイン、わたしの婚約者なのだ。


いや、仲が悪いとかでは全く無い。

本当に全く無いので、気不味いだけなのだ。

わたしと彼は純度百パーセント政略結婚なわけだが、そこに文句があるわけではない。

帝室に連なる方に嫁げるとかなら玉の輿だから嬉しいし、親子以上に年が離れた相手に嫁がされるとなると生理的に嫌な気持ちになるが、同世代のそこそこの名門という妥当な相手。

本人の性格も欠点は無いが尖ったところも無い。

婚約者だから絶対にそれなりの関係を築き上げなければならないのに取っ掛かりが見出だせないのだ。


……贅沢な悩みであると自覚はしている。

この悩みもリズムに一度それとなく話したくらいだ。

今日は確実に彼とも会話しなければならないだろう、気を使われて二人っきりにされる可能性もある。

どうしたものかと考えているうちに、ブルースの名前が【浮いている板】にあったことを思い出す。

彼がどのように書かれているのか気になって、【浮いている板】を確認してみる。


『ブルース・ストレイン 攻略キャラ 所属:【トライアド帝国】-

  【トライアド帝国】ストレイン伯爵家の跡取り息子。

  聡明な母により文武両道の好青年として育てられた。主人公と同学年。

  侯爵家令嬢と婚約しており、その弟のリズムからは敵視されている。

  入学式の日に主人公に一目惚れし、何かと世話を焼く。

  自軍ユニットとしての性能は味方をかばうディフェンダータイプ。』


へー、入学式の日に一目惚れするんだ……


「そうだ、今日はドミナント・テンション家の御婦人とご令嬢も招いているんだ。こちらで一緒に話そうじゃないか」


あっ皇帝陛下に呼ばれちゃった。

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