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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
二章
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38話

 一年振り二回目の反省室送りを無事乗り越えわたしは大きく伸びをした。

隣には止めずに見届人の役を果たしたことで同じく一年振り二回目の反省室送りとなったセバスティアン王太子。


「貴方が勝つとは思っていなかったよ、正直今でも信じられないくらいだ。【魔弾(フライシュッツ)】――マリアの剣技のことをどこで知って……いや、貴方はフロイライン・リタとも親しかったな」


「あ、それは……」


 本当は【道標】で知ったのだが、彼にそれを教えるわけにはいかない。

リタにも聞かれたらすぐに違うとバレてしまうがここは話を合わせてしまっていいだろうか……と迷っていたところ、明るい声で可憐な美少女が話を遮ってきた。


「お待ちしていました、メロディ先輩!わたしのせいで反省室送りにさせてすみません、そして改めて、わたしと決闘して頂いて本当にありがとうございました!!」


 マリア・フォン・ウェーバーだった。

彼女ももちろん反省室送りとなったはずだがその疲れをまるで感じさせない様子だ。


「セバスティアン王太子もすみませんとありがとうございます!」


「あ、ああ。そうだフロイライン・メロディ、友人づてに噂を聞いていてもまだちゃんとした挨拶はしていないだろう。」


 頬を赤く染めながらセバスティアン王太子はわたし達に互いに自己紹介をするように促す。

それを待っていましたとばかりにマリア・フォン・ウェーバーは語りだす。


「ではわたしから、【クラシック王国】宰相アマデウス・フォン・ウェーバー伯爵が娘マリア・フォン・ウェーバーと申します。メロディ先輩のことはリタ先輩から噂で聞いてずっと会いたいと思っていました。これからぜひともよろしくお願いします」


「ええ、よろしく。マリア・フォン……」


「わたしのことはマリアと呼んでください!」


「え……ええ、よろしくねマリア」


 なんだろうこの感じ、レガートのときを思い出すような……

いや、きっと気のせいだろう。こちらも自己紹介を返さないと。


「わたしは【トライアド帝国】大将軍ビート・ドミナント・テンション侯爵が娘メロディ・ドミナント・テンション。あなたの剣技と闘志、素晴らしかったわ。こちらこそぜひ仲良くさせてちょうだい」


 わたしが右手を差し出すと、マリアもすぐに右手を差し出し固く握手を交わす。

少し不安もあるが第一段階は無事成功したようだ。

そう一安心したところで、ちょうどわたし達を迎える集団がやって来た。

セバスティアン王太子の側近達、マリアの従士二人にリタ、そしてリズムとオクターヴにレガートだ。

あれ、レガートはクレシェンド公と一緒じゃなくていいのだろうか?


「姉上、お疲れ様でした。不調はありませんか?」


「大丈夫よリズム。そうだマリア、あなたに弟を紹介したいの」


「わたしにですか?」


 最終目標はリズムをマリアの恋人にすること。

つまり作戦はここからが本番、いい感じに紹介するからがんばってねリズム!


「この子がわたしの弟のリズム・ドミナント・テンション、文武両道で細やかな心配りも出来る自慢の弟よ。あなたと同学年だから仲良くしてちょうだい」


「メロディって姉バカだったんだね」


「わたしは弟の方も怪しい気がするよ」


 リタとレガート、ちょっと黙ってて。


「はじめまして、マリア・フォン・ウェーバーさん。姉上の紹介は少し荷が重いですが、どうかよろしくお願いします」


 リズムの背景がきらきら輝いて見える微笑みがきまる。

さあ、これにマリアはどう反応する?


「はじめまして……リズムさんも鍛えていらっしゃるんですね、ぜひ仲良くさせてください。それとわたしのことはマリアと呼び捨てでいいですよ」


「ではマリア、俺のこともリズムと呼んでください」


「はい、よろしくリズム」


 マリアは可憐な笑みを浮かべながらリズムと握手を交わした。

これは……いい感じなんじゃないか?



 こうして始まった学校生活二年目。

朝食を取るわたしの周囲には相変わらず取り巻きの女子生徒達とレガートとリタの姿があった。

いや、『取り巻きの女子生徒達』ではなく『親衛隊』と呼ぶように言われたのだった。

彼女達と意気投合したらしいオクターヴが組織化を進め、食事の時同じテーブルに座るシフトを組むなど高い統制が取れ始めたのだ。

素晴らしい統率力、オクターヴの才気の片鱗を見た気がする。


「ところでレガートはクレシェンド公と一緒じゃなくていいの?」


「別に大丈夫だよ、メロディだって婚約者と一緒にいないでしょ」


「それがそうでもないんだよね、メロディ?」


「……どういうこと?」


 リタの発言にレガートが反応する。


「ああ、わたしの婚約者――ブルースが稽古をつけてくれって言い出してね。朝の鍛錬を一緒にやってるの」


 わたしも驚いたのだが、ブルースが剣に本気を出し始めた。

しかし剣に興味を持ち始めたわけではない、マリアに近付くためである。

稽古をつけて欲しい理由を聞いたときにははぐらかされたが――まあ婚約者に他の女子との恋愛相談は流石に出来まい、【道標】にあった情報と時折ぼーっと考え込む様子からそれは明らかだった。

とはいえ騎士が剣の道に本気を出すのは喜ぶべきこと、びしばし鍛えてやっている。


「むぅ、わたしも一緒に鍛錬……でも朝はクレシェンドのお世話……」


「あら、レガートも仲良くやっているのね」


 まあわたしもレガートがいないとなると少し淋しいし、相変わらずでいいのだろう。

そして肝心のリズムとマリアだが、とても上手く行っている。

ムーサ師匠の言葉を借りるなら【マリア・フォン・ウェーバー攻略計画】第二段階、日々の交流積み重ね作戦は順調に進行中なのだ。

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